前回に引き続いて『肉食の増加と環境・健康の問題』がテーマです。
前回は、世界的な肉食の増加が森林破壊などを引き起こしている現状を紹介しました。
年末から新年にかけては、1年のうちでも特に忘年会やクリスマス、新年会などで、肉料理の消費がふえる季節でもあり、今回は、肉食の増加が水質や大気の汚染につながっている問題についてふれてみたいと思います。
牛や馬、豚、鶏などの家畜は、人間の食生活のために飼育・売買されるものであり、経済動物ともよばれています。経済性を追求して生産性を上げるために、畜産農家は大規模化し、限られた面積で多頭飼育されているのが実状です。 このような農場からは、毎日大量の糞や尿が排泄されています。
たとえば、母豚500頭に子豚を産ませて、110kgぐらいまで飼養したのちに出荷している一貫経営の農場では、洗浄水を含めて毎日50トンから100トンほどの糞尿が排せつされています。 仮に、1日の排せつ量が50トンの場合でも、年間では18,000トン余りの量になり、これだけの糞尿を毎日確実に処理していく必要があります。ちなみに、母豚1頭が1年間に産む子豚の数は約20頭ですので、母豚500頭の一貫経営農場では、毎年約10,000頭の豚が出荷される計算になります。
家畜の糞尿の一般的な処理は、固形物(糞)は堆肥化し、汚水(尿と洗浄水)は浄化して河川に放流するという方法です。その他に、臭気などの低減処理をした後で、液体の肥料として利用する方法や、炭化、焼却・発電などの方法で処理しているところもあります。
これらの大量の排せつ物は、すでに地球の分解吸収能力を超えています。
肥料として耕作地で利用される堆肥は、地域によっては過剰に生産され、だぶついて、これが新たな廃棄物問題を引き起こしています。これは、『畜産農家が大規模化し、地域的に集中している』ことや『堆肥がその重量に比べて安価なために広域流通が難しい』こと、『耕作農家が堆肥よりも使いやすくて即効性のある化学肥料を重宝している』ことも原因です。
堆肥が耕作地に過剰施用されることで、地下水の汚染が広がっている地域もあります。堆肥には、肥料の3大成分である窒素、リン酸、カリが含まれていますが、これらが作物が必要としている以上に施用されることで、土壌に浸透して地下水を汚染しているのです。地域によっては、飲み水用の井戸を掘ったところが、人体に有害な硝酸態窒素が多くて使用できなかった事例も報告されています。硝酸態窒素は結果として、体内でメトヘモグロビン血症をおこして、乳幼児の場合、血液の酸素運搬能力が損なわれて死に至る場合もあります。また、水に限らず、野菜についても硝酸塩濃度が高くなり、人体に有害な食べ物となってしまいます。
汚水は、浄化して河川や海に放流する際の水質が法律や条例で規制値が決められていますが、量が多いために汚染の原因になっている地域も少なくありません。海水の富栄養化で沿岸域で藻類が異常発生して、「赤潮」発生の原因にもなっています。
特に最近では、家畜の疫病を防止するという目的で畜産施設への部外者の立ち入りが厳しく制限されているために、糞尿がどこまで適正に処理されているかを確認することが困難です。このため、水量の多い河川に放流される場合、仮に規制値を超えた水が放流されてもその判断が難しい状況にあります。
畜産施設から排出されるアンモニアガスを主体とした臭気は、単に悪臭被害だけにとどまりません。大気中に拡散したアンモニアガスは、数十kmの範囲で地上に沈積するために、土壌や水質を汚染することとなります。
また、窒素排出量の多い畜産施設周辺では、窒素に強い植物のみが生き残り、植物の多様性が失われていきます。
地球温暖化の原因のひとつであるメタンガスも家畜の増加と深い関係があります。2004年度に国内で排出されたメタンのうち、家畜のゲップによるものは713万トン(CO2換算)で、メタン総排出量の3割を占めており、その大半が牛によるものです。
参考:日本国温室効果ガスインベントリ報告書
http://www-gio.nies.go.jp/
このように、肉食の増加は、水質や大気を汚染することで、私たちの健康に影響を及ぼしているのです。
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