環境と体にやさしい生き方

環境の悪化は生物系全体に大きな影響を与えています。環境と体にやさしい健康的な生活を考えるための新鮮な情報を紹介します。

肉食の増加と環境・健康の問題2

2006年12月18日 | 環境問題

前回に引き続いて『肉食の増加と環境・健康の問題』がテーマです。
前回は、世界的な肉食の増加が森林破壊などを引き起こしている現状を紹介しました。
年末から新年にかけては、1年のうちでも特に忘年会やクリスマス、新年会などで、肉料理の消費がふえる季節でもあり、今回は、肉食の増加が水質や大気の汚染につながっている問題についてふれてみたいと思います。

牛や馬、豚、鶏などの家畜は、人間の食生活のために飼育・売買されるものであり、経済動物ともよばれています。経済性を追求して生産性を上げるために、畜産農家は大規模化し、限られた面積で多頭飼育されているのが実状です。 このような農場からは、毎日大量の糞や尿が排泄されています。

たとえば、母豚500頭に子豚を産ませて、110kgぐらいまで飼養したのちに出荷している一貫経営の農場では、洗浄水を含めて毎日50トンから100トンほどの糞尿が排せつされています。 仮に、1日の排せつ量が50トンの場合でも、年間では18,000トン余りの量になり、これだけの糞尿を毎日確実に処理していく必要があります。ちなみに、母豚1頭が1年間に産む子豚の数は約20頭ですので、母豚500頭の一貫経営農場では、毎年約10,000頭の豚が出荷される計算になります。

家畜の糞尿の一般的な処理は、固形物(糞)は堆肥化し、汚水(尿と洗浄水)は浄化して河川に放流するという方法です。その他に、臭気などの低減処理をした後で、液体の肥料として利用する方法や、炭化、焼却・発電などの方法で処理しているところもあります。

これらの大量の排せつ物は、すでに地球の分解吸収能力を超えています。
肥料として耕作地で利用される堆肥は、地域によっては過剰に生産され、だぶついて、これが新たな廃棄物問題を引き起こしています。これは、『畜産農家が大規模化し、地域的に集中している』ことや『堆肥がその重量に比べて安価なために広域流通が難しい』こと、『耕作農家が堆肥よりも使いやすくて即効性のある化学肥料を重宝している』ことも原因です。



堆肥が耕作地に過剰施用されることで、地下水の汚染が広がっている地域もあります。
堆肥には、肥料の3大成分である窒素、リン酸、カリが含まれていますが、これらが作物が必要としている以上に施用されることで、土壌に浸透して地下水を汚染しているのです。地域によっては、飲み水用の井戸を掘ったところが、人体に有害な硝酸態窒素が多くて使用できなかった事例も報告されています。硝酸態窒素は結果として、体内でメトヘモグロビン血症をおこして、乳幼児の場合、血液の酸素運搬能力が損なわれて死に至る場合もあります。また、水に限らず、野菜についても硝酸塩濃度が高くなり、人体に有害な食べ物となってしまいます。

汚水は、浄化して河川や海に放流する際の水質が法律や条例で規制値が決められていますが、量が多いために汚染の原因になっている地域も少なくありません。海水の富栄養化で沿岸域で藻類が異常発生して、「赤潮」発生の原因にもなっています。

特に最近では、家畜の疫病を防止するという目的で畜産施設への部外者の立ち入りが厳しく制限されているために、糞尿がどこまで適正に処理されているかを確認することが困難です。このため、水量の多い河川に放流される場合、仮に規制値を超えた水が放流されてもその判断が難しい状況にあります。

畜産施設から排出されるアンモニアガスを主体とした臭気は、単に悪臭被害だけにとどまりません。大気中に拡散したアンモニアガスは、数十kmの範囲で地上に沈積するために、土壌や水質を汚染することとなります。
また、窒素排出量の多い畜産施設周辺では、窒素に強い植物のみが生き残り、植物の多様性が失われていきます。

地球温暖化の原因のひとつであるメタンガスも家畜の増加と深い関係があります。2004年度に国内で排出されたメタンのうち、家畜のゲップによるものは713万トン(CO2換算)で、メタン総排出量の3割を占めており、その大半が牛によるものです。

参考:日本国温室効果ガスインベントリ報告書
     http://www-gio.nies.go.jp/

このように、肉食の増加は、水質や大気を汚染することで、私たちの健康に影響を及ぼしているのです。

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肉食の増加と環境・健康の問題

2006年12月12日 | 環境問題

今回から数回にわたって、「肉食の増加が環境問題や健康の悪化を引き起こしている。」現状を紹介していきたいと思います。  

今や、世界の食肉の消費量は50年前の5倍以上に増えて、さらに増加の傾向にあります。これは、一人当たりの消費量の増加と人口の増加によるものです。
ちなみに、世界の人口は本年2月現在で65億人を突破しました。そして今も1年で約8000万人が増えており、2025年には79億人、2050年には、現在の1.4倍以上の93億人に達すると見込まれています。

世界の現在の人口はこちらから http://www.arkot.com/jinkou/

今後わずか50年足らずで、28億人もの人口が増加するのです。これを見ると、21世紀は、食料と水とエネルギーが世界的に深刻な問題となるのは明らかです。



肉食の増加に伴う環境被害としては、森林や草原の破壊、土地の侵食、淡水の不足、地球温暖化、大気や水質の汚染、生物多様性の低下などがあげられます。また、肉食がもたらすさまざまな健康被害も明らかになってきています。

家畜の飼料のほとんどは穀物であり、牛肉1㎏を生産するにはその10倍の穀物が使われ、豚肉1kgにはその7倍もの穀物が必要です。肉食の増加には、穀物栽培や家畜飼養のための土地の開発が必要であり、大規模な森林伐採や野生生物の生息する草原の減少を引き起こしているのです。

失われた森林のほとんどは、東南アジア、アフリカ及び南アメリカの赤道周辺に群生している熱帯林です。2000~2005年の5年間では、それ以前よりも減少の度合いは鈍化しているものの、日本の国土(約3770万ha)に相当する森林が消失しているのです。

それでは、日本の飼料の自給率はどうなっているのでしょう?
なんと、平成16年度の概算値として報告されている農水省の資料を見ると、わずか25%となっています。その内訳は、乾牧草やサイレージなどの素飼料の自給率が75%、とうもろこしや大麦、こうりゃんなどの穀物を中心とした濃厚飼料は、わずか11%しか自給していないのです。

飼料自給率についての参考資料:
   自給飼料政策について(平成18年3月 農林水産省)

農水省では、平成27年を目標に、素飼料の自給率100%、濃厚飼料の自給率を14%とすることで、飼料自給率を35%まで引き上げようとしていますが、効率性と経済性を求める畜産農家の現状では、なかなか厳しい数値でしょう。また、仮に飼料自給率が10%上昇しても、食料自給率は、わずか1%しか上昇しないことにも注目すべきでしょう。

さて、肉食の増加は、前述したように大規模な森林伐採を引き起こしていますが、これは、温室効果ガスである二酸化炭素の吸収能力の低下につながり、地球温暖化に拍車をかけています。また、森林の消失は、土壌の侵食や保水機能の低下も招いています。

家畜の増加は、淡水の不足とも大きな関係があります。人間が生活していくうえで利用している水は、地球上で利用可能な淡水(海水を含まない水)の約半分を占め、残りの半分を他の100万種以上の生物が分け合っているといわれています。なかでも最も多くの水を使っているのが、家畜用なのです。肉食の急増は、今後、深刻な水問題へも発展していく可能性があります。(参考:日経エコロジー 2004年10月号)
これまで書いてきたように、肉食の増加は環境におおきな影響を与えています。この他にも、水質や大気汚染、私たちの健康にも影響を与えていますが、これについては次回以降で紹介したいと思います。

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温暖化は既に引き返せる地点を越えてしまった。

2006年12月05日 | 環境問題

はじめてのブログでいきなり深刻な話題です。

タイトルの「温暖化は既に引き返せる地点を越えてしまった。」は、ジェームズ・ラブロック氏が今年1月に英国のインディペンデント紙に発表した論文によるものです。

同氏は「地球そのものが大きな生命体のようなものであり、気温や大気ガス組成などを自己調節・維持している。」というガイア理論の創始者として有名ですが、同論文のなかで「今世紀が終わるまでに温暖化が原因で10億人以上が死ぬだろう。」とも書いています。そして、現在、このような悲観的な見方は気候学者の主流派になっているようです。

国連のIPCC気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovermental Panel on Climate Change)が2001年に作成した第三次評価報告書によると、20世紀の地球の平均気温は0.6±0.2℃上昇し、平均海面水位が0.1~0.2m上昇したとされています。また、将来的には2100年までに、平均気温は1.4~5.8℃上昇し、海面水位は0.09~0.88m上昇すると予測されています。

しかしながら、これらは平均的なもので複数の科学者の研究から、気候の揺らぎの中では2040年ごろには自然災害の頻発や砂漠化の進行による食糧問題が起こる可能性が高いことがわかってきました。

エネルギー問題について、ラブロック氏は、日本や英国、ドイツのような人口密度の高い大都市を抱える国では、今の文明水準を維持しようとすれば、自然エネルギーに頼るのは無理であり、原子力が唯一の選択肢であると主張しています。
近年、化石燃料の使用量を減らすために、サトウキビやトウモロコシなどの植物資源からバイオエタノールを作るなど、エネルギー用作物の栽培が脚光を浴びてきていますが、同氏は燃料を得るために新たな農地を増やすことは地球の負担を増加させ悪影響を及ぼすとして反対の立場をとっています。
また、京都議定書は環境政策が票につながる欧州各国の政治家が、票を目当てに単なるジェスチャーとしてまとめ上げた面が大きく、温暖化を防ぐ効果はほとんどないと評価しています。
 (以上、「日経エコロジー 2006.12号」参考)

風力や太陽光、バイオマスなどのエネルギー利用には限界があり、これらの有効利用だけでは抜本的な解決にはなり得ないのは明らかです。安全性を確保した原子力利用によるエネルギーの安定供給を基盤としたうえで、社会全体で資源の有効利用を図った自然エネルギーの利用や廃棄物の循環利用(メタン発酵や焼却による発電など)を推進していくべきだと思います。

国際協調の努力はしながらも、各国の思惑や利害が複雑に絡み合うなかで、温暖化問題を解決していくことには限界があることを肝に銘ずるべきでしょう。

11月6日からケニアのナイロビで開かれた気候変動枠組み条約の締約国会合で、スターン報告書が発表され、大きな関心を集めました。この報告書は、英政府の委託研究で、ニコラス・スターン元世界銀行チーフエコノミストが作成したものです。
これによると、気候変動について「早期に断固とした対応策をとることのメリットは、対応しなかった場合の経済的費用をはるかに上回る。」「ここ10~20年間における投資が、21世紀後半と22世紀の気候を大きく左右することになる。」としています。

また、「直ちに確固たる対応策をとれば、気候変動の悪影響を回避する時間は残されている。」としながらも、「この先20~30年間に起こる気候変動を食い止めることはもはや不可能だが、気候変動から我々の社会や経済を守ることはある程度は可能である。」と、気候変動を食い止めることの難しさを指摘しています。

この報告書の要約は、英語版日本語版で入手できます。特に日本語版は4ページ程度ですので参考にしてください。

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