環境と体にやさしい生き方

環境の悪化は生物系全体に大きな影響を与えています。環境と体にやさしい健康的な生活を考えるための新鮮な情報を紹介します。

ようやく動き出す子どもの化学物質曝露調査

2009年11月23日 | 食品添加物・化学物質
化学物質や食品添加物等が人間に与える影響については、下記のように過去ブログで10回にわたって取り上げています。

その食品添加物は安全?(2007.02.10)
化学物質と経皮吸収(2007.02.09)
合成化学物質の恐怖と人類の未来(2007.09.14)
合成化学物質の健康への影響(2007.09.15)
内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の恐怖 1(2007.09.19)
・内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の恐怖 2(2007.09.23)
内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の恐怖 3(2007.09.25)
内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)の恐怖 4(2007.09.28)
環境の悪化が小児の健康を阻害(2007.12.25)
ビスフェノールAの胎児、新生児への影響が明らかに?(2008.05.26)

上記ブログをまとめて見る。 カテゴリ『食品添加物・化学物質』

これらのブログでも紹介しているように、1950年代以降、合成化学物質の影響と考えられる事象が次々に起こっています。
近年特に、化学物質に脆弱である胎児や乳幼児の健康について世界的な関心が高まっており、国際的に次のような動きがあります。

【国際的な動き】
1997年5月 G8環境大臣会合(米国マイアミ)
子どもの環境保健に関する8カ国の環境リーダーの宣言(マイアミ宣言)
(有害物質による子どもの健康への脅威を認識して、子どもの健康を守るために取り組むことを宣言)

「マイアミ宣言」以後、デンマーク、ノルウェー、米国では大規模な疫学調査を実施中。

2009年4月 G8環境大臣会合(イタリア シラクサ)
(斉藤環境大臣(当時)が、「子どもの健康と環境」に関して各国が協力して大規模な疫学調査を行うことを提案。)
 斉藤大臣講演資料(子どもの健康と環境)[PDF 552KB]

なお、シラクサでの斉藤大臣(当時)の講演資料では、日本の子どもの健康の現状を次のように紹介しています。
免疫系疾患(小児ぜん息)が増加(20年間で児童のぜん息率が3倍)
生殖異常(男児の出生率の低下)の増加
先天異常ダウン症水頭症二分脊椎症、尿道下裂)の増加(25年間で2倍)
 (各項目のリンク先はフリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)

【子どもの健康と環境に関する日本の取り組み】
日本では、ここへきてようやく
胎児期から小児期にかけての化学物質曝露が、こどもの健康に大きな影響を与えているのではないか
という中心仮説のもと、大掛かりな全国調査が進められようとしています。

現在までの経緯は次の通りです。
2007年10月
「小児環境保健疫学調査に関する検討会」の実施

2008年 3月
「小児環境保健疫学調査に関する検討会報告書」の公表
環境中の化学物質の影響を検出することができる大規模な新規出生コーホート調査の立ち上げが提言される。

2008年 4月
「小児環境保健疫学調査に関するワーキンググループ」設置
新たな疫学調査の立ち上げについて検討を開始

2009年 9月29日
「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)検討会」の実施

【エコチル調査の概要】
環境省では、来年(2010年)秋を目処に「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」を実施する方向で検討中です。その概要は次の通りです。
(平成21年度第1回子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)検討会資料「基本計画(案)」より)

調査目的
胎児期から小児期にかけての化学物質曝露が、子どもの健康にどのような影響を与えているのかを明らかにする。

調査方法
環境省が実施する国家プロジェクトとしての出生コーホート研究

調査規模
全国で10万人

調査期間
21年間(リクルート3年、追跡13年、解析5年)

期待される成果
 ①子どもの健康に影響を与える環境要因の解明
 ②子どもの脆弱性を考慮したリスク管理体制の構築
 ③次世代の子どもが健やかに育つ環境の実現
 ④国際競争と国益


このように、エコチル調査は大規模な全国調査となるようですが、9月29日の「平成21年度 第1回 子どもの健康と環境に関する全国調査検討会議事録」を読むと、調査開始前や調査中の問題点がいろいろと指摘されています。
また、調査結果によっては、企業の経営に影響を与える内容のものも多く出てくることが予想されます。

しかしながら、化学物質が多用される社会となってわずか60年ほどしか経過していない現在でさえ多くの問題が指摘されていることを考えると、調査を速やかにスタートして、調査途中でも明らかになった事項や疑わしい事象については、国民への速やかな公表や適切な対策の実施が必要だと思います。


【主な参考文献】
・2009年4月 G8環境大臣会合 斉藤大臣講演資料(子どもの健康と環境)[PDF 552KB]
・平成21年度第1回子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)検討会資料
 「基本計画(案)」、「検討会議事録



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温暖化対策に日本の独自性を!!

2009年11月04日 | 環境問題
地球温暖化問題については、これまで多くの識者がさまざまな角度から意見を述べています。
特に、鳩山首相が本年(2009年)9月22日に国連気候変動首脳会議で、「2020年までに温暖化ガスの排出を1990年比で25%削減する」と表明したことに対して、経済的にマイナス効果が大きすぎるとの意見が続出しています。

現在の世界の温暖化対策は政治問題が大きく絡んでおり、一筋縄でいかないのが実情です。中でも、次のふたつの問題があるために、先進国と途上国の足並みが揃わず、逆にその溝が深くなっています。

・新興国の中国(2006年の温暖化ガス排出世界2位)やインド(同4位)は、途上国であることを理由に、拘束力のある排出ガス削減義務を負わない主張している。
・温暖化ガス最大排出国の米国は、未だに京都議定書を批准していないために温暖化ガス削減の義務を負っていない。


このような状況の中では、「日本だけ温暖化ガス削減に努力しても、経済競争に負ける。」、「25%減はオウンゴールと言わざるを得ない」(日本経済団体連合会 21世紀政策研究所 澤昭裕研究主幹、2009.11日経エコロジー)との意見があるのも当然かと思います。

さらに日本の場合、1970年代のオイルショック以来省エネ化が進んで、技術的にも「25%削減」は容易ではありません。
このように、否定的な理由をあげるとキリがありません。

また、国内的には、現状の民主党を中心とした政権の温暖化ガス削減対策はちぐはぐで、一貫性が無いようにも思えます。その槍玉にあげられているのが高速道路の無料化の公約で、無料になって利益を受ける消費者の中にも支持しない人が増えて、アンケートでは過半数が支持しないという結果がでているものもあります。
また、政府は22年度にガソリンの暫定税率廃止も計画しています。(廃止分が炭素税と名目を変えるのであれば問題ありませんが。)

日本の「温暖化ガス25%削減」の方法は、今のところ、国内における削減(いわゆる真水部分)とそれ以外の部分(排出枠の購入や森林吸収分など)の比率をどのようにするかなど、具体的なことは決まっておらず、今後の計画が待たれるところです。


いずれにしても、温暖化ガスの削減を推し進めるためには、排出権取引によって増えた電力会社等の負担分が消費者の購入価格に反映されるとか、炭素税を徴収されるなど、国民の負担が増えるのは当然のことと言えます。

実際、11月1日から太陽光発電による電力の余剰分を電力会社が買い取る価格が、家庭用の場合1キロワット時48円と従来の2倍にアップし、その分、税金による負担が大きくなります。


一方、海外に目を転じると、ドイツ企業12社(ドイツ銀行、ミュンヘン再保険、エーオン、ショットソーラー、シーメンスなど)は、本年7月に「DESERTEC(デザーテック)」プロジェクトに調印して、北アフリカのサハラ砂漠で、太陽光発電事業を行う壮大な計画を立てています。

DESERTEC INDUSTRIAL INITIATIVEプレリリース 2009年7月13日
「DESERTEC(デザーテック)」プロジェクト概要

これによって、2050年までに北アフリカ・中東地域のエネルギー需要の3分の2とEUの電力需要の15%をまかない、COの大幅な削減を達成する見通しです。
現段階ではまだ実現の可能性は不透明ですが、太陽熱を最大限利用できる地域(サハラ砂漠)と欧州の地の利を生かしたアイデアだと思います。

日本の場合も、近い将来の化石燃料の枯渇に対する新たなエネルギー確保と地球温暖化を効果的に結びつけた、日本独自の取り組みが必要だと思います。
荒廃した森林資源の有効活用やワールドウオッチ研究所クリストファー・フレイヴィン所長の提案する洋上風力(日経エコロジー2009.11号)など、日本に賦存する資源はいろいろあると思います。

温暖化ガス削減は世界的な取り組みで進めていく必要がありますが、国が存続し成長していくためのエネルギーの確保は日本自身が長期的な視点で進めていかなければなりません。そのための「25%削減」は日本の将来にとって非常に重要な目標だと思います。


【主な参考文献】
・日経エコロジー2009.11号
DESERTEC INDUSTRIAL INITIATIVEプレリリース 2009年7月13日
「DESERTEC(デザーテック)」プロジェクト概要
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