麻疹、おたふくかぜ、風疹を予防する新三種混合(MMR)ワクチンの接種後に熱性けいれんを起こす子どもが少数存在する理由を説明する遺伝子的な手掛かりを発見したとの研究論文が、Nature Geneticsに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。MMRワクチンの接種を受けた子ども約1000人に1人の割合で熱性けいれんが発生するそうです。MMRワクチン接種後2週目に熱性けいれんリスクの上昇を示す2個の遺伝子変異の存在が、今回の研究で確認され、これら2個の変異は、ウイルス侵入時の免疫系の反応で重要な役割を担う遺伝子に存在するそうです。研究ではさらに、一般的な熱性けいれんに関連し、MMRワクチンとは関係のない変異も4個を確認。これらの変異は、神経細胞間の重要な情報伝達経路である「イオンチャネル」の制御に関与する遺伝子に存在し、4個すべてを持っている子どもは、変異数が最も少ない同条件の子どもに比べて、熱性けいれんを起こす確率はほぼ4倍高かったとも。これら6個の変異によって説明されるのは、発作の遺伝子的原因のごく一部以上のものである可能性は低く、MMRワクチンを廃止する必要はないとも。MMRワクチンは公衆衛生における成功例の一つで、年間100万人以上の子どもの命を救っていると推定されるそうです。今回のような研究で得られる知識は最終的に、ワクチンのさらなる安全性向上につながる可能性があるそうです。
妊娠4~6か月の期間に自動車の排ガスに高濃度でさらされると、生まれてくる子どもの肺に問題が生じるリスクが高まるとした研究論文が発表されたそうです(AFPBB NEWS)。スペインのある地方の産科医院に通院中の妊婦1295人を対象に、長期にわたる調査を実施。妊婦らの居住地域で、排ガスに含まれる汚染物質のベンゼンと二酸化窒素の濃度を妊娠期間中複数回にわたって測定して、妊婦および生後1歳の子どもの汚染物質への曝露の度合いをまとめたモデルを作成。また4歳半に達した時点で子どもらの肺活量を測定して620人分のサンプルを収集したそうです。収集したサンプルと曝露のモデルとを照らし合わせた結果、妊娠4~6か月の時に高濃度のベンゼンにさらされた女性たちの子どもには、汚染が少ない地域の子どもに比べて肺機能に問題がある可能性が22%高いことが分かったそうです。二酸化窒素では、同30%高かったとも。アレルギー体質の子どもや低所得者層の子どもでは、この傾向がより強かったそうですが、一方で生後1年間にさらされた大気汚染の「濃度」による肺への影響に違いは確認されなかったそうです。出生前に排ガスによる大気汚染にさらされることで、子どもの肺の発育に悪影響が出る可能性があることが示されたということですが、そのメカニズムは・・・・。どこまでわかっているのでしょう。
老化に伴って起こる病気に共通した発症の原因が、長寿遺伝子サーチュイン(SIRT1)のS-ニトロソ化による活性低下であるという論文がScience Signalingに掲載されたそうです(財経新聞)。高齢に伴い、糖尿病・アルツハイマー秒・サルコペニア(加齢性筋肉減弱症)などが増加することが知られています。また、老化過程には慢性炎症が関わっていることが示唆されています。しかし、今もなお、その詳細なメカニズムは明らかではありません。今回の研究では、全身性炎症反応・パーキンソン病・サルコペニアのモデル動物と培養細胞を用いて、炎症が起きた際の長寿遺伝子SIRT1のS-ニトロソ化(炎症により生成される一酸化窒素がアミノ酸システインに結合すること)について詳しく調べたところ、炎症によってSIRT1のはたらきが弱くなり、炎症や細胞死を起こしやすくなること、SIRT1のS-ニトロソ化を薬剤や遺伝子操作によって減らすと、SIRT1のはたらきが戻り、炎症反応が部分的に抑えられることが分かったというもの。したがって、SIRT1のS-ニトロソ化を阻害したり抑制したりすることで、老化に伴う病気の治療や老化速度の制御できるようになることが期待されているということです。興味深い結果です。
口腔内の傷が皮膚の傷よりも治りが早く傷跡も少ないのは、温度感受性イオンチャネルTRPV3の働きによることであることが、FASEB Journalに掲載されたそうです(財経新聞)。口腔内の粘膜は、飲食などの際に傷が付くことがよくありますが、皮膚と比べて治癒が早く、傷跡も残りにくいですね。ですが、なぜそうなるのか、詳細なメカニズムは明らかではありませんでした。研究では、皮膚の培養角化細胞よりも口腔の培養上皮細胞の方が温度感受性イオンチャネルTRPV3の発現が強いことを発見し、実際にマウス実験でTRPV3遺伝子欠損マウスは野生型マウスよりも治癒が遅れていることを確認。また、その原因としてRPV3欠損により上皮細胞の増殖が劣っていることを突き止めたというものです。
老化した細胞ががん化を促進する仕組みが、ハエを使った実験で明らかになったとNature Communicationsに論文が発表されたそうです(財経新聞)。これまで、組織中で老化した細胞ががん化を促進させる可能性が示唆されていたそうですが、その仕組みや詳細については明らかになっていなかったそうです。今回の研究では、まず、哺乳類の細胞で観察される細胞老化の様々な指標をショウジョウバエで解析し、無脊椎動物において初めて細胞老化現象を発見することに成功。さらに、老化した細胞はがん抑制たんぱく質p53の活性化と細胞分裂に関わるたんぱく質サイクリンEを不活化させることで細胞分裂を停止させ、この細胞分裂停止によってJNKと呼ばれるリン酸化酵素の活性化が引き起こされることが明らかに。これら一連の流れによって細胞老化関連分泌因子(SASP因子)の産生が誘導されて周辺組織のがん化が促進されることが明らかになったそうです。今後は、哺乳類の実験系で確認することで、老化した細胞を標的とした新しいがん治療法が開発されると期待されているそうです。
既に報道されてご存知の方も多いと思いますが、アルツハイマー病の発症前に原因たんぱく質の状態が分かる血液中のマーカーが発見されたそうです(YOMIURI ONLINE)。アルツハイマー病は、原因たんぱく質「アミロイドβ」が脳内に蓄積し、脳が萎縮して起こると考えられています。アミロイドβが蓄積し始めてから発症までに15~20年要すると考えられている。脳内のアミロイドβの蓄積を調べるには従来、脊髄に針を刺して脳脊髄液を採取するなど患者の負担が大きかったり、大がかりな画像診断機器が必要だったりするのが課題だったそうです。今回の研究では、血液中の微量のアミロイドβ関連物質の増減を調べることで、脳内のアミロイドβの蓄積を確認できることが判明したそうです。アルツハイマー病やそうでない人を含む65~85歳の62人を対象に解析した結果、事前に行った脳内の画像診断の結果と92%以上の精度で一致したそうです。
細胞内にある体内時計は細胞の分化と密接に関連することが明らかになったそうです(Science Portal)。哺乳類の発生、分化と体内時計というふたつの普遍的な細胞機能を関連づけ、体内時計の活用法に道を開く発見として注目されます。哺乳類で体内時計は、司令塔である脳内の視交叉上核とは別に、受精卵からの発生を通して全身の各細胞で形成されると考えられていましたたが、その仕組みは明らかではありませんでした。これまで、マウスのES細胞に体内時計のリズムが見られず、培養して分化を誘導すると、約24時間周期の体内リズムが形成されることが明らかになっていました。研究では、時計遺伝子の発現をホタル由来の発光で可視化し、発光の強弱の変化を測定して、生きたまま培養細胞の体内時計を計測できるようにして、遺伝子を改変したマウスES細胞の分化に伴う体内時計形成を調べたそうです。細胞分化に関連するDNAメチル化を制御するDNAメチル基転移酵素1の欠損ES細胞や、がん遺伝子のc-Myc発現誘導ES細胞では、培養しても体内時計が形成されず、正常な細胞分化もしなかったそうです。次に、未分化のES細胞も含めて、これら体内時計リズムがない細胞に共通する現象を解析したところ、周期的に細胞の核の中に蓄積されるはずの「ピリオド」(PERタンパク質)が細胞質内にとどまり、核内蓄積が起きなかったそうです。このPERタンパク質は体内時計のリズム発振に欠かせない物質だそうです。ES細胞でまったくリズムが刻めない理由のひとつは、ピリオドの核内蓄積の欠如だったことが明らかになったそうです。さらに、この現象を制御する因子を、次世代シーケンサーによる網羅的遺伝子発現解析で調べ、鍵となる遺伝子も見出したそうです。この遺伝子は細胞分化の制御に必須の役割を果たしていることから、体内時計の発生と細胞分化の切っても切れない深い関係の根拠となるそうです。
圧縮空気で伸縮するゴムチューブを使い、人や荷物を中腰で持ち上げる作業を補助する「マッスルスーツ」の本格的な販売やレンタルが始まったそうです(時事通信)。当面は法人向けで、販売価格は1台60万円。レンタルが中心になるとも。このマッスルスーツは電動モーターではなく、網で包んだゴムチューブの「人工筋肉」を使用したものだそうです。5気圧の圧縮空気を注入すると太く短く変形する力を利用する。標準モデルはリュックサックのように背負うハの字形金属フレームに人工筋肉を左右2本ずつ配置。スイッチを入れると、ももに力が伝わって作業を補助するそうです。圧縮空気は小型ボンベを背負うか、コンプレッサーからホースをつないで供給するそうです。標準モデルはボンベを除く重さが5.5キロで、最大30キロを持ち上げるのに相当する力を発揮。ストローのような装置を口にくわえる「呼気スイッチ」を使えば、息を吸うと力が出て、吐くと力が抜けるとも。
国立社会保障・人口問題研究所は先日、年金や医療、介護など社会保障給付費が2012年度は108兆5568億円になったと発表したそうです(日本経済新聞)。前年度から1%増えて、過去最高を更新したそうです。国民1人当たりだと、前年度より1万100円(1・2%)増えて85万1300円。特に高齢者の増加で給付が11%と増加しているそうです。高齢化が進む中で早急な対策が望まれます。
ココアに含まれる生物活性物質フラバノールが、年齢による記憶力低下を劇的に改善させることが確認されたとの研究論文が、Nature Neuroscienceに掲載されたそうです(AFPBB NEWS)。実験ではフラバノールを含有するココア飲料を被験者らに摂取してもらい、それぞれの脳の状態を測定。被験者は50歳~69歳の健康37人。900mgあるいは10mgのフラバノールを含有するココアを、3か月にわたり毎日飲ませ、海馬の歯状回の血液容量を脳撮像で測定。歯状回は記憶の形成に関わる部位で、その処理能力は通常、年齢とともに低下するそうです。さらに、被験者がココア飲料を飲み始める前と後で記憶力テストを実施。テストでは歯状回によって制御される種類の記憶を評価するために考案された20分間のパターン認識課題が出題。その結果、高用量のフラバノールを摂取したグループは、記憶力の大幅な改善を達成した上、歯状回への血流量の増加もみられたというものです。この結果は、実験開始時に被験者が典型的な60歳代の記憶力を持っていたとすると、3か月後の被験者の記憶力は平均して典型的な30代か40代のものになっていたというものだそうです。ただ、これらの研究成果を検証するためには、グループの規模を拡大して実験を重ねる必要があるとも。フラバノールは大きな関心を集めている化合物で、世界規模で急増する高齢者人口の加齢による記憶力低下の問題に薬を使わずに対処できる可能性があるとされているそうです。フラバノールは、ブドウ、ブルーベリーなどの果物や、一部の野菜や茶などに含まれているそうですが、その種類や含有量はそれぞれに大きく異なるとも。ココアに含まれる種類のフラバノールについては、歯状回の処理能力を向上させることがマウス実験によるこれまでの研究で判明していたそうです。今回、フラバノールが人間の歯状回の機能を、特に高齢の人間で向上させることを実際に示した初めての研究だそうです。