健康を科学する!

豊橋創造大学大学院健康科学研究科生体機能学のつぶやき

アストロサイトの活性化と慢性的かゆみ

2015-07-31 08:30:36 | 研究
アトピー性皮膚炎のモデルマウスを用いた研究で、慢性的なかゆみに神経細胞同士をつなぐ「アストロサイト」という細胞の活性化が関係していることNature Medicineに発表されたそうです(YOMIURI ONLINE)。アトピー性皮膚炎のように、かゆみが慢性化する仕組みはこれまで分かっていないそうです。研究では、アトピー性皮膚炎のモデルマウスを調べたところ、脊髄後角という部位にあるアストロサイトの活性化が皮膚のかゆみを感じる場所と一致していたそうです。かゆみのために皮膚をかくことで皮膚炎が悪化し、アストロサイトの活性化で産出されたたんぱく質がさらに強いかゆみを引き起こすという悪循環が、慢性化の原因と考えられるというもの。神経系に着目した新たな治療薬の開発につながると考えられるようです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

学習によって脳の情報処理が変化する仕組み

2015-07-30 08:30:43 | 研究
大脳視覚野の活動が、学習前は外部世界からの情報に強く影響されるのに対し、学習後は予測、期待または注意といった脳内部からの信号に大きく影響されるようになることが明らかになったという研究成果が、Nature Neuroscienceに発表されたそうです(財経新聞)。学習は、日常の経験を通じて、過去の経験に基づいて脳が構築する「内部モデル」を脳内に構築していく過程だと考えられているそうですが、学習によって脳内の信号伝達の仕組みがどのように変わるのかは分かっていなかったそうです。今回の研究では、興奮性神経細胞や抑制性神経細胞を個別に観測できる遺伝子改変マウスを利用し、神経細胞の活動を大脳視覚野で観測。その結果、脳内部モデルからの予測、期待または注意といった情報を伝えるとされるトップダウン入力を可視化できるようになり、学習を通じて大脳視覚野に対するトップダウン入力の影響が強まることが示されたというもの。また外部世界からの情報処理に関わるとされるボトムアップ入力は学習が進むにつれて次第に減少すること、トップダウン入力を制御していると考えられる特定の抑制性神経細胞群の活動が下がることが明らかになったとも。今後は、本研究成果が、統合失調症などの精神疾患における幻覚や妄想などの発症機序を解明することに繋がると期待されているそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アルツハイマー病と飢餓状態

2015-07-29 08:30:07 | 研究
アルツハイマー病態に飢餓状態が重なると、症状が悪化する可能性があるという研究結果がScientific Reportsに発表されたそうです(財経新聞)。アルツハイマー病を初めとする神経変性疾患は、細胞の内外に異常タンパク質が蓄積することが病理学的な特徴で、異常タンパク質を除去する細胞機構として、ユビキチン・プロテアソーム系とオートファジー系の2つの分解系があることが知られています。今回の研究では、マクロオートファジーを特徴付けるオートファゴゾームのマーカー分子である LC3から作製した融合蛍光タンパク質(LC3-EGFP)を脳内に発現させ、生きたマウスの脳内部でダイナミックに変化するオートファゴゾームを2光子顕微鏡で観察する方法を開発。そして、この方法を用いて、脳における飢餓誘導性オートファジーが神経細胞において実際に存在すること、脳内のオートファゴゾーム形成に概日リズムがあることを発見。さらに、アルツハイマー病態では飢餓による誘導性オートファジーが亢進しているものの、エンドサイトーシス亢進によって細胞外から取り込んだベータアミロイドを十分に分解処理出来ず、細胞内にベータアミロイドを溜め込むことや、この細胞内アミロイドの増加はアルツハイマー病で侵されやすい脳内の重要部位で起こることも明らかにしたそうです。また、細胞内にベータアミロイドが増加した神経細胞を詳細に観察すると、一部は細胞が膨張して破裂し、ベータアミロイドを周辺にまき散らす像も得られたとも。これらの結果は、アルツハイマー病態に飢餓状態が重なることで細胞内のベータアミロイドが増加して細胞死につながり、病態の悪化が加速する可能性を示しているそうです。過度なカロリー摂取などの生活習慣がアルツハイマー病進行を早める要素であることが広く認められているそうですが、脳内で細胞外のベータアミロイド濃度がある程度高まった後では、むしろ、カロリー制限によってアルツハイマー病態を悪化させるリスクとなることが想定されるそうです。今後、アルツハイマー病の病態理解と治療法開発につながると期待されるそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ユーグレナが胃潰瘍を緩和

2015-07-28 08:30:50 | 研究
微細藻類ユーグレナ(ミドリムシ)の継続摂取が胃潰瘍症状を緩和することが発表されたそうです(財経新聞)。胃潰瘍は胃酸によって胃の粘膜が傷つけられることで「びらん」を形成し、痛みや出血を起こす現代病の一つ。今回の研究では、通常の食事、ユーグレナ粉末を混ぜた食事、パラミロン(ユーグレナの特有成分)粉末を混ぜた食事、アモルファスパラミロン(パラミロンの結晶構造を壊したもの)粉末を混ぜた食事を2週間経口摂取させたラットを、呼吸ができる状態にして18時間水に浸すことでストレスによる胃潰瘍の形成を誘導。その結果、ユーグレナ粉末、パラミロン粉末、アモルファスパラミロン粉末を混ぜた食事を摂取したラットは、胃潰瘍の形成範囲が抑制される傾向にあることが分かったというもの。今後は、ユーグレナや特有成分であるパラミロンの機能性に関する研究をさらに進め、医療分野等への利活用や食材としての付加価値向上を目指すことが期待されているそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ミトコンドリア病の幹細胞治療

2015-07-27 08:30:22 | 研究
ミトコンドリア異常によるまれな疾患である「ミトコンドリア病」への幹細胞治療に向けた重要な一歩を踏み出したとする研究報告がNatureに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。この病気は、母系遺伝として子に受け継がれるとされているもの。米国Oregon Health & Science Universityなどの研究チームの報告によると、正常な多能性幹細胞を作製するために、患者から採取した皮膚細胞内の有害なミトコンドリアの「修正」に成功したというもの。先天性のミトコンドリア疾患のある新生児は、米国だけで毎年約1000~4000人。現在のところ、有効な治療法は存在しないそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

薬物依存とギャンブル

2015-07-26 08:30:28 | 研究
覚せい剤に依存すると、ハイリスク・ハイリターンの選択肢を選ぶ割合が高くなることが明らかになったそうです(財経新聞)。私たちが生活する社会は予期せぬ出来事の繰り返しで、良い結果が得られるように、複数の選択肢の中から最良と思われる選択肢を選び日々生活しているそうです。一方、ヒトは前頭葉皮質に損傷を受けると、意思決定が近視眼的となり、長期的な利得の予測や評価が健常者とは異なるようになるようです。薬物依存やギャンブル障害、統合失調症の患者も意思決定の障害がみられるが、その神経基盤はほとんど解っていないそうです。今回の研究では、ラット用ギャンブルテストを行った結果、薬物依存ラットは予期せぬ報酬の評価に異常があることでハイリスク・ハイリターンの選択肢を選ぶ割合高いことが明らかになったというもの。さらに、この意思決定の変化には島皮質神経の異常な興奮が関与していること、特に島皮質のGABA神経の機能不全が関与する可能性を突き止めたそうです。さらに、計算理論に基づくシミュレーションによって、覚せい剤依存ラットでは、ハイリターンに対する主観的な報酬価値が大きくなっていることが分かったとも。こうした結果から、GABA神経が主観的な報酬価値を決めるのに重要な役割を果たしていると考えられるそうです。また、薬物依存症ラットと同じように、ヒトの薬物依存者も予期せぬ出来事(報酬やストレス)に対して近視眼的な行動選択をする可能性が考えられるそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

チョコレートと認知症

2015-07-25 08:30:29 | 研究
チョコレートで認知症予防の効果が期待できるという研究成果が、発表されたそうです(YOMIURI ONLINE)。発表によると、チョコレートに含まれるカカオポリフェノールに、脳の重要な栄養分となるたんぱく質の一種「脳由来神経栄養因子(BDNF)」を増やす働きがあることが分かったというもの。BDNFは記憶や学習などの認知機能にかかわる栄養分で、65歳以上では年々減るとされるているそうです。昨年6月中旬から4週間かけて行われた実証実験には、蒲郡市民ら347人が参加し、カカオポリフェノールを多く含むチョコレートを毎日25グラム食べ、摂取前と摂取後の血中のBDNF濃度などを調べたそうです。実験の結果、摂取前には1ミリ・リットルあたり6・07 ngだったBDNF濃度の平均値が、4週間後には7・39 ngに上昇。今回は摂取時の条件を指定せず、性別や年齢別の分析も行っていないそうですが、一緒に摂取するものとの組み合わせなどで結果が変わる可能性もあるとも。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

HIV新規感染

2015-07-24 08:30:07 | 研究
国連合同エイズ計画(UNAIDS)は、AIDS(エイズ、後天性免疫不全症候群)の原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の2014年の新規感染者数が2000年比で35%減少したとの報告書を発表したそうです(AFPBB NEWS)。一方で、AIDSをさらに後退させるために世界は投資を大幅に増やし、治療を受けられる機会を拡大する必要があると呼び掛けているそうです。UNAIDSによると、HIVを抑制する抗レトロウイルス薬が1996年に登場したことにより、HIV/AIDS対策には大きな進歩がみられたそうです。抗レトロウイルス薬にはHIVの治癒効果はないが、体内のHIV量を抑えることで他人への感染力を弱める効果があるそうで、2000年と2014年を比較すると、HIVへの新規感染者は世界で310万人から200万人へと減っており、うち83か国では大幅に減少しているか、変化が少ないそうです。ですが、AIDS対策関連の支出は横ばいであることから、UNAIDSでは2020年までに年間320億ドル(約3兆9500億円)をAIDS対策に支出することや、抗レトロウイルス薬の効率的な分配を通じ、2030年までのHIV根絶を目指すことを呼び掛けているそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

食物アレルギーの症状を抑える物質

2015-07-23 08:30:16 | 研究
アレルギー反応の原因となるマスト細胞の増加を抑える分子「プロスタグランジンD2」が発見されたとの論文がNature Communicationsに発表されたそうです(財経新聞)。マスト細胞は、食物アレルギー反応の主役となる免疫細胞で、食物アレルギーの発症や進行に伴って消化管などの組織で増加するそうです。また、マスト細胞は、生理活性物質「プロスタグランジンD2(PGD2)」を大量に産生していることが分かっているそうです。研究では、卵白に含まれるアルブミンを使って食物アレルギーを引き起こしたマウスを調べたところ、消化管に浸潤しているマスト細胞の数が増加していること、そしてこれらのマスト細胞は造血器型のPGD2合成酵素(H-PGDS)を強く発現していることを確認。そこで、H-PGDSの遺伝子を欠損させたマウスを作製し、卵白アルブミンを食べさせたところ、正常なマウス比較して食物アレルギーの症状が劇的に悪化し、消化管に浸潤してくるマスト細胞の数が増加していることが分かったそうです。さらに、食物アレルギーを起こしたH-PGDS欠損マウスを解析したところ、PGD2が産生できない消化管やマスト細胞では、マスト細胞の浸潤や増加を促進するStromal Derived Factor-1とMatrix metalloprotease-9の発現や活性が上昇していること、さらにStromal Derived Factor-1の受容体阻害剤や遺伝子欠損、Matrix metalloprotease-9の活性阻害剤は、マスト細胞増加と食物アレルギー症状を改善することが明らかになったというものです。今後は、PGD2を標的とした食物アレルギーの根本治療への応用が期待されるそうです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

人工血液

2015-07-22 08:30:02 | 研究
イギリスの国民保険サービスが、人工血液の実用化に向けた臨床試験を2017年までに開始するそうです(財経新聞)。人工血液の研究自体は以前からあったそうですが、今年になって人間に輸血できる品質や安全基準がクリアされたということで、本格的な臨床試験に踏み出すことを決めたそうです。ただし、仮に人工血液が実用化されたとしても献血が不要になるわけではなく、血小板や血漿の供給が同時にできなければ、需要をすべてカバーすることはできないとも。また、コスト面の課題や、すべての輸血需要に応えられるような大量生産はまだ難しいということです。
Comment
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする