ボクが『まーさかり、かーついだ、きーんたろぉー♪』と歌うと
お婆さんは『くーまに、まーたがーり、おーうまのけいこ。はいしどうどう、はいどうどう、はいしどうどう、はいどうどう♪』と歌ってくれました。
昨日は夜勤でした。
ホーム長になると3フロアの夜勤を万遍なくやらなくてはいけません。
不慣れなフロアの夜勤は本当に緊張します。
入居者さんもきっと見慣れないボクを見て緊張しているのでしょう。
今日は夜勤明け。
昼に大宮で前ホーム長(現SV)と待ち合わせ。
2ヶ月前に入院したお婆さんの実態調査に向かいました。
例のお婆さんです。
ホールを裸で徘徊し、布団や電気のスイッチまで破壊していたお婆さん。
来週で入院から丁度2ヶ月になります。
ボクの勤めるホームは60日以上、部屋を明けると原則的に退去となります。
(退院の見込みがある場合は延長可。)
病院に向かうバスの中でお婆さんの娘さんたちと合流しました。
その病院は精神科専門。
待合室では様々な光景を目にしました。
顔半分が紫色に腫れ上がったお婆さん。
どうやったらこんな腫れ方をするのだろう…。
不登校の中学生でしょうか。まるで表情のない顔の少年。一緒に来ていた両親は泣きそうな顔で息子に語りかけるも、息子は無表情。
両親は何度も診察室に駆け込み(このせいで待ち時間は30分以上増えた・恕!)、医師に何かを懇願している。
最後は息子が看護士に抱えられ、エレベーターへと消えて行った。入院だろう。
顔面蒼白の10代後半くらいの女の子が担ぎ込まれて来た。
ろれつの回らない口調で『昨日の夜…全部飲んじゃったの…』と言っている。
きっと何かの薬をまとめ飲みしたのだろう。
左腕には無数のリストカットの痕が…。
ここで働いている職員は毎日こんな光景を見ているのだろうか?
かなり刺激の強い待ち時間だった。
2時間近く待って診察室へ。
患者がいないのに診察時間を待って、診察を受けるというのはなかなか新鮮だった。
医師は『身体拘束もなく、落ち着いて過ごされていますよ。別に問題行動もないので、このまま施設に戻れると思いますけどどうですか?』と言った。
本人の様子を見ないと“ホームで生活出来るレベル”かは判断出来ないので、本人の様子を見てから返答することになった。
病院について2時間半。やっとお婆さんとの対面である。
精神科の老人病等(認知症病棟)に行くと、車椅子に乗った老人がテーブルを囲み、険しい顔で徘徊する老人がその周りをグルグルと徘徊していた。
ボクは目が悪いのでなかなかお婆さんを見つけることが出来なかった。
SVに教えてもらい、やっと見つけることが出来た。
車椅子にベルトで固定されている。
あれ?身体拘束はしてないって言ってなかったっけ?
病院ではベルトや4点柵(ベッドの周りを柵で囲うこと)は拘束に入らないってことよね。
病院で言う拘束ってのは“縛り付ける”ってことなんだろうなぁ。
家族はボクに懇願していた。
『もう一度、ホームで生活させて頂けないでしょうか…』
そう言われてもボクには即答出来なかった。
ホームの職員から『お願いだから、ここに戻さないでね!』と言われてここに来ているから。
病院のスタッフに現在の様子を聞くと…
『ベルトや柵をしないと、立ち上がってしまうので危険です。』
『食事は一人だけ違うテーブルでして貰っています。他の人のものに手を出すので。』
『オムツ外しは普通にします。排泄物をいじることはよくあります。』
『介護拒否は強いです。オムツ交換や風呂は大変です。』
『気を付けないとツネられます。興奮すると攻撃的になります。』
『意思疎通は殆ど出来ません。自分から言葉は発しません。』
『身体は元気ですが、今は歩くことは出来ません。』
…この状態でホームの生活は無理だろう!?…
これでホームに戻したら他のスタッフに大ブーイングを浴びること必至!
家族にも『すみませんが、今の現状では少し無理があると思います…』と言葉を濁すしかなかった。
SVも気の毒に思ったのだろう。娘さんたちに他の選択肢もあることを説明していた。
SVと娘さんたちが話し込んでしまいボクは浮いてしまったので、お婆さんのところへ。
『○○さん!』と声をかけると笑顔が返ってきた。
もしかしてボクのことを覚えているのか…?
『○○さん。ご飯はちゃんと食べてる?美味しいですか?』と声をかけると…
『…○×△□…』と訳の分からない返答が。
『○○さん。まーさかり、かーついだ、きーんたろぉー♪』と歌いかけると…
『…』お婆さんは続きを歌うことが出来なかった。しかし涙を1滴流していた。
それからお婆さんの表情は一転した。
何だか良く分からないながらも色々と話してくれた。
少し汚れた手でずっとボクの手を握っていた。
ずっと笑顔だった。
これには参った。
ホームに居るときは散々バトルした仲だが、久しぶりに会ってみると何とも言えない情が湧いてしまった。
面会も終り、SVと家族に結論を求められた。
ボクは『うちのホームでは見られません。』とは言えなかった。
情がどうこうではない。
ホームで生活が出来るように入院治療をしてもらったのに、それをあっさり断るなんて出来なかった。
家族もSVも喜んでいた。ボクもこれで良かったと思う。
しかし他職員の反応が怖い。
でもね。確かな介護理念と優しい気持ちがあれば乗り切れるような気がします。
コムスンへの厚生労働省の対応には正直驚きました。
勿論、不正が裁かれるのは当然なこと。
しかし、国内最大手の企業にこのような厳しい措置が取られたのはやっぱり衝撃的です。
ボクの勤める会社も、今年度よりコンプライアンス部を立ち上げております。
これからはどんどん厳しくなるのでしょうね。
お婆さんは『くーまに、まーたがーり、おーうまのけいこ。はいしどうどう、はいどうどう、はいしどうどう、はいどうどう♪』と歌ってくれました。
昨日は夜勤でした。
ホーム長になると3フロアの夜勤を万遍なくやらなくてはいけません。
不慣れなフロアの夜勤は本当に緊張します。
入居者さんもきっと見慣れないボクを見て緊張しているのでしょう。
今日は夜勤明け。
昼に大宮で前ホーム長(現SV)と待ち合わせ。
2ヶ月前に入院したお婆さんの実態調査に向かいました。
例のお婆さんです。
ホールを裸で徘徊し、布団や電気のスイッチまで破壊していたお婆さん。
来週で入院から丁度2ヶ月になります。
ボクの勤めるホームは60日以上、部屋を明けると原則的に退去となります。
(退院の見込みがある場合は延長可。)
病院に向かうバスの中でお婆さんの娘さんたちと合流しました。
その病院は精神科専門。
待合室では様々な光景を目にしました。
顔半分が紫色に腫れ上がったお婆さん。
どうやったらこんな腫れ方をするのだろう…。
不登校の中学生でしょうか。まるで表情のない顔の少年。一緒に来ていた両親は泣きそうな顔で息子に語りかけるも、息子は無表情。
両親は何度も診察室に駆け込み(このせいで待ち時間は30分以上増えた・恕!)、医師に何かを懇願している。
最後は息子が看護士に抱えられ、エレベーターへと消えて行った。入院だろう。
顔面蒼白の10代後半くらいの女の子が担ぎ込まれて来た。
ろれつの回らない口調で『昨日の夜…全部飲んじゃったの…』と言っている。
きっと何かの薬をまとめ飲みしたのだろう。
左腕には無数のリストカットの痕が…。
ここで働いている職員は毎日こんな光景を見ているのだろうか?
かなり刺激の強い待ち時間だった。
2時間近く待って診察室へ。
患者がいないのに診察時間を待って、診察を受けるというのはなかなか新鮮だった。
医師は『身体拘束もなく、落ち着いて過ごされていますよ。別に問題行動もないので、このまま施設に戻れると思いますけどどうですか?』と言った。
本人の様子を見ないと“ホームで生活出来るレベル”かは判断出来ないので、本人の様子を見てから返答することになった。
病院について2時間半。やっとお婆さんとの対面である。
精神科の老人病等(認知症病棟)に行くと、車椅子に乗った老人がテーブルを囲み、険しい顔で徘徊する老人がその周りをグルグルと徘徊していた。
ボクは目が悪いのでなかなかお婆さんを見つけることが出来なかった。
SVに教えてもらい、やっと見つけることが出来た。
車椅子にベルトで固定されている。
あれ?身体拘束はしてないって言ってなかったっけ?
病院ではベルトや4点柵(ベッドの周りを柵で囲うこと)は拘束に入らないってことよね。
病院で言う拘束ってのは“縛り付ける”ってことなんだろうなぁ。
家族はボクに懇願していた。
『もう一度、ホームで生活させて頂けないでしょうか…』
そう言われてもボクには即答出来なかった。
ホームの職員から『お願いだから、ここに戻さないでね!』と言われてここに来ているから。
病院のスタッフに現在の様子を聞くと…
『ベルトや柵をしないと、立ち上がってしまうので危険です。』
『食事は一人だけ違うテーブルでして貰っています。他の人のものに手を出すので。』
『オムツ外しは普通にします。排泄物をいじることはよくあります。』
『介護拒否は強いです。オムツ交換や風呂は大変です。』
『気を付けないとツネられます。興奮すると攻撃的になります。』
『意思疎通は殆ど出来ません。自分から言葉は発しません。』
『身体は元気ですが、今は歩くことは出来ません。』
…この状態でホームの生活は無理だろう!?…
これでホームに戻したら他のスタッフに大ブーイングを浴びること必至!
家族にも『すみませんが、今の現状では少し無理があると思います…』と言葉を濁すしかなかった。
SVも気の毒に思ったのだろう。娘さんたちに他の選択肢もあることを説明していた。
SVと娘さんたちが話し込んでしまいボクは浮いてしまったので、お婆さんのところへ。
『○○さん!』と声をかけると笑顔が返ってきた。
もしかしてボクのことを覚えているのか…?
『○○さん。ご飯はちゃんと食べてる?美味しいですか?』と声をかけると…
『…○×△□…』と訳の分からない返答が。
『○○さん。まーさかり、かーついだ、きーんたろぉー♪』と歌いかけると…
『…』お婆さんは続きを歌うことが出来なかった。しかし涙を1滴流していた。
それからお婆さんの表情は一転した。
何だか良く分からないながらも色々と話してくれた。
少し汚れた手でずっとボクの手を握っていた。
ずっと笑顔だった。
これには参った。
ホームに居るときは散々バトルした仲だが、久しぶりに会ってみると何とも言えない情が湧いてしまった。
面会も終り、SVと家族に結論を求められた。
ボクは『うちのホームでは見られません。』とは言えなかった。
情がどうこうではない。
ホームで生活が出来るように入院治療をしてもらったのに、それをあっさり断るなんて出来なかった。
家族もSVも喜んでいた。ボクもこれで良かったと思う。
しかし他職員の反応が怖い。
でもね。確かな介護理念と優しい気持ちがあれば乗り切れるような気がします。
コムスンへの厚生労働省の対応には正直驚きました。
勿論、不正が裁かれるのは当然なこと。
しかし、国内最大手の企業にこのような厳しい措置が取られたのはやっぱり衝撃的です。
ボクの勤める会社も、今年度よりコンプライアンス部を立ち上げております。
これからはどんどん厳しくなるのでしょうね。