一生

人生観と死生観

貧困大国とは?

2008-07-26 22:37:23 | 哲学
7月26日 雨のち曇り
 著書が重版となるー著者には気分の良いことには違いない。私の場合も何回か経験したことである。しかし話題性のある、あるいは問題の多いテーマを扱うことはかなり難しい。身を切るような体験から傑作が生まれるということもある。
 日本エッセイスト大賞を貰った堤未果著『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波書店
2008)は見かけの繁栄の陰に進む恐ろしい社会問題をアメリカに問うている。いずれは日本の問題になるかもしれない、いやなりつつある。死と隣り合わせの貧困が人間から思考を奪う。それを巧妙に利用する悪辣な人間がいる。それが社会の浮き袋になり乗っかっている人間はそ知らぬ顔して太平楽を決めこむ。アメリカは本来清教徒の作った国で、あるいは少なくとも清教徒を建国の理想とする国であったはずだが、なんたる現実!しかし待て、この国に起こっている理想と現実との戦いは根が深い。現象だけを見ているのみではペシミズム(悲観主義)におちいるだけである。この国の中から、新しい救いの芽は、いかに困難があっても立ち上がることだろうと期待してやまない。もしそれが出来なければ、究極のオプチミズムは次のように言うだろう。歴史の彼方にアメリカに代わって人類救済の役割を果す何かが現れる日が来るであろう。人びとよ、簡単に悲観しない方がよい。