働き方改革、経営責任に 電通社長辞任へ
2016/12/29 日本経済新聞 電子版
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/4e/f900682040174ef0073b71e5ba0d45a3.jpg)
過重労働問題が大手企業の経営トップ辞任に及んだ。電通の石井直社長
が2017年1月、女性新入社員が過労自殺した問題の責任をとり辞任する。
「働き方改革」は現在の産業界全体が直面する課題で、経営者の責任で
あることが改めて浮き彫りになった。従来の考えやしがらみにとらわれ
ずに自社を見直す覚悟、多様な人材を生かす環境整備を推進する姿勢が
求められている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/12/2d8388de993fa71d9d51405b19b3c540.jpg)
謝罪する石井社長(中)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/e6/40742af03356f80c56daed87648709e0.jpg)
電通の石井直社長(中)、中本祥一副社長(右)、越智信喜人事局長
石井社長は25日に自殺した社員の遺族と面会できたうえ、28日に書類
送検されたことで辞任を決めたという。28日の記者会見で電通の企業
風土について「120%の成果を求めようとし、仕事を断らない矜持も
あったが、そのすべてが過剰だった」と分析。さらに「悪い点に歯止め
をかけられず経営が手を打てなかったことに責任がある」と語った。
電通は今回の問題を受けて、午後10時以降の全館消灯などいくつかの策
を講じてきた。しかしトップの責任は極めて重く、体制一新による出直
しが不可避と判断した。
電通だけでなく、長時間労働の是正といった働き方改革は全ての企業の
重要テーマだ。自社への貢献という名の下で「自分を多少犠牲にしてで
も」との社風は改めなければならない。勤務時間が過度に長くならぬよ
う細心の注意を払いつつ、在宅勤務や「脱時間給」制度(ホワイトカラー
・エグゼンプション)といった新しい取り組みの議論を深めることが肝
要だ。
改革は国際的に低い日本企業の生産性向上にもつながる。日本生産性本部
によると経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で日本の労働生産
性は20位にとどまる。
労働人口の減少もあり、日本企業が生産性向上に取り組むのは避けられ
ない。日本生産性本部の木内康裕上席研究員は「これまでのビジネス
プロセスを抜本的に見直す必要がある」と指摘する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/24/577a8ed4188a1c9fc399c2daffef305b.jpg)
「あれから電通はまったく変わってない」 突然の社長辞任、現役社員は
どう受け止めた?
BuzzFeed Japan 12/29(木)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/8e/3a7a4405c57b66923708784deb88deec.jpg)
新入社員の高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺問題で揺れた国内最大手
の広告代理店・電通。12月28日、緊急の記者会見を開き、石井直社長が、
一連の過労自殺など長時間労働問題の責任を取るとして、辞任する意向を示した。
現役社員は、この会見をどう受け止めたのか?
【BuzzFeed Japan / 石戸諭、播磨谷拓巳】
社員に送られたメール
BuzzFeed Newsは、石井社長から社員にあてられたメール全文を入手した。
そこにはこんな言葉が並ぶ。
当社が、過去に当局から複数回にわたる指導・勧告を受けていたにもか
かわらず、当社における過重労働、長時間労働問題を根本的に解決でき
なかった責任は、改めて申し上げるまでもなく、経営にあります。そして、
必要な変革を十分に達成できなかった全ての責任は、社の経営において
最も重い責任を担っている私にあると考えています。
そのため、私は、その全ての責任を取り、2017 年1 月に開催される取締
役会をもって、社長執行役員を辞任することを決意致しました。株主への
説明責任を果たすため、社長執行役員辞任後も、取締役としては留まりま
すが、来年3 月に予定している定時株主総会の終了をもって、取締役も
退任します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/32/28db107a540d115e67c5e1606a9c73e5.jpg)
現役社員は何を思うのか?
現役の男性社員がBuzzFeed Newsの取材に応じた。
この日は、例年と違う仕事納めの1日だった。報道が先行し、電通の対応
やコメントはすべてニュースを通じて入ってきた。いつもなら、午後3時
には仕事を切り上げ、残った社員でケータリングで食べ物や酒をいれて、
社内で乾杯をする。
今年は前と同じように、とはいかなかった。辞任の一報はすぐに社内を
駆け巡った。
「驚いている社員が多かったけど、自分はむしろ、どうでもいいと思い
ました。それは、仕事の内容が変わらないからです。電通はまったく変わっ
ていません。仕事内容は変わらずに残ったままなのです」
「だから、私も、他の社員も会社にはいないけど、持ち帰って残業して
います。仕事は変わらずにありますからね」
「時間を減らせ」と会社から指示があっても、現場に人は増えていない。
記録には残らないだけで、むしろサービス残業は増えているのではないか
という。
電通社内ではこんな囁きも聞こえてくる。法令違反をしていたら、国の仕事
がとれなくなる。だから、なんとしても法律は守らないといけないのだ、と。
「結局、リリースをみても、会見を聞いても、経営は手を打っているのに、
社員が方針を守ってくれなかったという風に聞こえます。社員のために法律
を守れというなら、人を増やすべきです。仕事は変わらないけど、時間は減
らせ、人は増やさないでは掛け声で終わります。本当に必要なのは、根本的
な改革ですよ」
根本的な改革とはなにか?
「(会見で)『未熟な新入社員』という言葉を連呼していましたよね。でも、
新入社員が未熟なのは、当たり前じゃないですか?どう教育するかが本質
なのに……」
「適切な教育がなかったら、先輩の背中をみて学べというスタイルから、
いつまでも脱却できない。新人教育については、いまでも社内では議論され
ていません。社員が財産というなら、そこを語ってほしいです」
そして、こう付け加える。
「私は、いまでも電通の提供する仕事には価値があると思っています。
だからこそ社員自身も法令違反当たり前、時間際限なく使って当たり前、
を改めながら改革したいと考えていますし、実際に動いている。少しでも
よくしたいと思うのです」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/77/6b0e3af9781584a59fcb6d84ccf7f186.jpg)
「120%の成果を求める、仕事を断らない矜持……そのすべてが過剰だった」
電通はプレスリリースのなかで、長時間労働の原因をこう総括した。
原因としては、「過剰なクオリティ志向」「過剰な現場主義」「強すぎる
上下関係」など、当社独自の企業風土が大きな影響を与えていると考えて
おります。
石井社長は記者会見の中で、日本社会の働き方と企業風土をどうみているか
問われ、こう答えた。
「日本人の勤勉さは高く評価しているし、大事なことだと思います。しかし、
心身あわせた健康を考えることが大事だと思っています」
「(電通は)プロフェッショナリズムを社員が強く意識している。120%の
成果を求めようという傾向がある。仕事を断らないという矜持があった。
そのすべてが過剰だった。過ぎていたということ。そのこに対して根本的な
ところで歯止めをかけられなかった、経営の責任がある」
電通が2016年の「ブラック企業大賞」に選ばれた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/5c/b394ceb614b9dce328de19f29f0874fc.jpg)
「うちは電通のこと書けないね」長時間労働に悩む女性記者たち
マスコミの抱える課題
「電通の長時間労働を批判する記事を書いているのは、自己矛盾じゃ
ないかなと感じました」
全国紙の新聞記者として働いてきた20代女性は、BuzzFeed Newsにこう語る
彼女自身も、長時間労働に苦しんできた一人だ
不夜城の電通本社ビル、22時消灯で反省アピール
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/19/1a65c7bc4157eccee2935a0ffaf05005.jpg)
2016/12/29 日本経済新聞 電子版
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5b/4e/f900682040174ef0073b71e5ba0d45a3.jpg)
過重労働問題が大手企業の経営トップ辞任に及んだ。電通の石井直社長
が2017年1月、女性新入社員が過労自殺した問題の責任をとり辞任する。
「働き方改革」は現在の産業界全体が直面する課題で、経営者の責任で
あることが改めて浮き彫りになった。従来の考えやしがらみにとらわれ
ずに自社を見直す覚悟、多様な人材を生かす環境整備を推進する姿勢が
求められている。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0a/12/2d8388de993fa71d9d51405b19b3c540.jpg)
謝罪する石井社長(中)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/50/e6/40742af03356f80c56daed87648709e0.jpg)
電通の石井直社長(中)、中本祥一副社長(右)、越智信喜人事局長
石井社長は25日に自殺した社員の遺族と面会できたうえ、28日に書類
送検されたことで辞任を決めたという。28日の記者会見で電通の企業
風土について「120%の成果を求めようとし、仕事を断らない矜持も
あったが、そのすべてが過剰だった」と分析。さらに「悪い点に歯止め
をかけられず経営が手を打てなかったことに責任がある」と語った。
電通は今回の問題を受けて、午後10時以降の全館消灯などいくつかの策
を講じてきた。しかしトップの責任は極めて重く、体制一新による出直
しが不可避と判断した。
電通だけでなく、長時間労働の是正といった働き方改革は全ての企業の
重要テーマだ。自社への貢献という名の下で「自分を多少犠牲にしてで
も」との社風は改めなければならない。勤務時間が過度に長くならぬよ
う細心の注意を払いつつ、在宅勤務や「脱時間給」制度(ホワイトカラー
・エグゼンプション)といった新しい取り組みの議論を深めることが肝
要だ。
改革は国際的に低い日本企業の生産性向上にもつながる。日本生産性本部
によると経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国の中で日本の労働生産
性は20位にとどまる。
労働人口の減少もあり、日本企業が生産性向上に取り組むのは避けられ
ない。日本生産性本部の木内康裕上席研究員は「これまでのビジネス
プロセスを抜本的に見直す必要がある」と指摘する。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/24/577a8ed4188a1c9fc399c2daffef305b.jpg)
「あれから電通はまったく変わってない」 突然の社長辞任、現役社員は
どう受け止めた?
BuzzFeed Japan 12/29(木)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/8e/3a7a4405c57b66923708784deb88deec.jpg)
新入社員の高橋まつりさん(当時24歳)の過労自殺問題で揺れた国内最大手
の広告代理店・電通。12月28日、緊急の記者会見を開き、石井直社長が、
一連の過労自殺など長時間労働問題の責任を取るとして、辞任する意向を示した。
現役社員は、この会見をどう受け止めたのか?
【BuzzFeed Japan / 石戸諭、播磨谷拓巳】
社員に送られたメール
BuzzFeed Newsは、石井社長から社員にあてられたメール全文を入手した。
そこにはこんな言葉が並ぶ。
当社が、過去に当局から複数回にわたる指導・勧告を受けていたにもか
かわらず、当社における過重労働、長時間労働問題を根本的に解決でき
なかった責任は、改めて申し上げるまでもなく、経営にあります。そして、
必要な変革を十分に達成できなかった全ての責任は、社の経営において
最も重い責任を担っている私にあると考えています。
そのため、私は、その全ての責任を取り、2017 年1 月に開催される取締
役会をもって、社長執行役員を辞任することを決意致しました。株主への
説明責任を果たすため、社長執行役員辞任後も、取締役としては留まりま
すが、来年3 月に予定している定時株主総会の終了をもって、取締役も
退任します。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/37/32/28db107a540d115e67c5e1606a9c73e5.jpg)
現役社員は何を思うのか?
現役の男性社員がBuzzFeed Newsの取材に応じた。
この日は、例年と違う仕事納めの1日だった。報道が先行し、電通の対応
やコメントはすべてニュースを通じて入ってきた。いつもなら、午後3時
には仕事を切り上げ、残った社員でケータリングで食べ物や酒をいれて、
社内で乾杯をする。
今年は前と同じように、とはいかなかった。辞任の一報はすぐに社内を
駆け巡った。
「驚いている社員が多かったけど、自分はむしろ、どうでもいいと思い
ました。それは、仕事の内容が変わらないからです。電通はまったく変わっ
ていません。仕事内容は変わらずに残ったままなのです」
「だから、私も、他の社員も会社にはいないけど、持ち帰って残業して
います。仕事は変わらずにありますからね」
「時間を減らせ」と会社から指示があっても、現場に人は増えていない。
記録には残らないだけで、むしろサービス残業は増えているのではないか
という。
電通社内ではこんな囁きも聞こえてくる。法令違反をしていたら、国の仕事
がとれなくなる。だから、なんとしても法律は守らないといけないのだ、と。
「結局、リリースをみても、会見を聞いても、経営は手を打っているのに、
社員が方針を守ってくれなかったという風に聞こえます。社員のために法律
を守れというなら、人を増やすべきです。仕事は変わらないけど、時間は減
らせ、人は増やさないでは掛け声で終わります。本当に必要なのは、根本的
な改革ですよ」
根本的な改革とはなにか?
「(会見で)『未熟な新入社員』という言葉を連呼していましたよね。でも、
新入社員が未熟なのは、当たり前じゃないですか?どう教育するかが本質
なのに……」
「適切な教育がなかったら、先輩の背中をみて学べというスタイルから、
いつまでも脱却できない。新人教育については、いまでも社内では議論され
ていません。社員が財産というなら、そこを語ってほしいです」
そして、こう付け加える。
「私は、いまでも電通の提供する仕事には価値があると思っています。
だからこそ社員自身も法令違反当たり前、時間際限なく使って当たり前、
を改めながら改革したいと考えていますし、実際に動いている。少しでも
よくしたいと思うのです」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/77/6b0e3af9781584a59fcb6d84ccf7f186.jpg)
「120%の成果を求める、仕事を断らない矜持……そのすべてが過剰だった」
電通はプレスリリースのなかで、長時間労働の原因をこう総括した。
原因としては、「過剰なクオリティ志向」「過剰な現場主義」「強すぎる
上下関係」など、当社独自の企業風土が大きな影響を与えていると考えて
おります。
石井社長は記者会見の中で、日本社会の働き方と企業風土をどうみているか
問われ、こう答えた。
「日本人の勤勉さは高く評価しているし、大事なことだと思います。しかし、
心身あわせた健康を考えることが大事だと思っています」
「(電通は)プロフェッショナリズムを社員が強く意識している。120%の
成果を求めようという傾向がある。仕事を断らないという矜持があった。
そのすべてが過剰だった。過ぎていたということ。そのこに対して根本的な
ところで歯止めをかけられなかった、経営の責任がある」
電通が2016年の「ブラック企業大賞」に選ばれた。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/5c/b394ceb614b9dce328de19f29f0874fc.jpg)
「うちは電通のこと書けないね」長時間労働に悩む女性記者たち
マスコミの抱える課題
「電通の長時間労働を批判する記事を書いているのは、自己矛盾じゃ
ないかなと感じました」
全国紙の新聞記者として働いてきた20代女性は、BuzzFeed Newsにこう語る
彼女自身も、長時間労働に苦しんできた一人だ
不夜城の電通本社ビル、22時消灯で反省アピール
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/48/19/1a65c7bc4157eccee2935a0ffaf05005.jpg)