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「通貨経済学入門 第2版」という本は、経済学博士でエコノミストの宿輪純一氏が著者で、著者は東京大学大学院や早稲田大学、中国の清華大学大学院(北京)、慶應義塾大学、帝京大学の講師を務め、また委員としてはアジア開発銀行、財務省、経済産業省、外務省、全国銀行協会と日本だけではなく世界的にも活躍している方です。
また月に2回公開講義として「宿輪ゼミ」を開催し、その「宿輪ゼミ」では最新の金融情勢や経済に関するトピック、最新公開映画のシネマ経済学についても初心者でも分かるように優しく楽しく丁寧な説明があり、個人的にも大変お世話になっております。(講義としては約1時間15分で1000円のカンパのみなので、とてもオススメです!講義は予約不要で、主に第一・第三水曜の19時開始です。開催場所はほぼ東京の文京区民センター(都営三田線春日駅すぐ)となります。)
その宿輪純一氏には「アジア金融システムの経済学」「実学入門 社長になる人のための経済学」「ローマの休日とユーロの謎」「通貨経済学入門」など著書もたくさんありますが、本書はその「通貨経済学入門」の第2版となります。
その初版発行後の約4年の間に実は金融や経済は大きく変貌し、たとえば以下のようなことが起こっていますが、本書ではその最新の情報が盛り込まれているのはとても良いと思います。
・日本ではアベノミクスによる量的金融緩和
・米国では量的金融緩和により米ドルの量は5倍となり、その正常化へ向けた動きによる影響
・シェール革命などによる原油価格急落によりロシア通貨ルーブルが暴落し変動相場制へ移行
・ユーロ内のギリシャ危機
・ビットコインの拡大など
また、以下について分かりやすく説明があるのは素晴らしいと思いましたね。
・日本史の中のシニョレッジ(インフレを起こし問題だった。歴史は繰り返す・・・)
・基軸通貨の歴史
・外貨準備の性質
・変動相場制と固定相場制のメリット・デメリット
・世界各国毎の通貨制度の表
・通貨制度の歴史
・通貨危機の歴史
・米ドル、ユーロ、人民元の特徴
・人民元の通貨制度の歴史
・アジアの通貨金融改革
・電子マネー
・ビットコイン
「通貨経済学入門 第2版」という本は、通貨や経済のことが体系的に歴史も踏まえて説明されていて、とてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・各国で通貨を担当する通貨当局とは、一般的に政府の中でも財務省と、そして独立性を持つ中央銀行を指す。通貨にかかわる管理業務が中央銀行の担当になることが多い。日本の紙幣には「日本銀行券」と表示されていることからもわかるように、日本では、中央銀行だけが通貨の発行をはじめとした管理を認められている。一方為替レートのコントロールに関しては財務省の所管である。その担当は財務省の財務官で為替介入を実施する。日本銀行は財務省の指示の下、為替介入の事務を行っているだけで判断はしていない。よく市場で売買をするのが日銀なので、新聞等で日銀介入といわれるが、これは誤解を生む。正確には財務省介入である。
・金融政策とは、基本的には、中央銀行が、主として短期金融市場で資金の供給や吸収を行って通貨量を調整し、金利水準を一定の目標に沿うように誘導することである。この場合、金融政策によって、通貨量を調整することは、通貨価値にダイレクトに影響を与える。この点で金融政策と通貨政策の本質は一緒なのである。通貨量を増加させると、当然のことながら、外国為替市場における通貨価値(為替レート)は下がっていき、資金貸借市場の金利も下がっていく。さらに金利がゼロになるまで通貨量を増加させる政策をゼロ金利政策という。さらに、ゼロ金利になってもさらに通貨量を増やすことを量的金融緩和政策という。量が増え金利が下がっていくことは、健全な経済であれば、景気に対してもプラスの影響があり、物価も上昇する。しかし、先進国の経済は成熟し、潜在成長率が落ちてきて長期停滞となっており、構造的に経済本体の機能が落ちてくると、物価の反応もにぶくなってくる。(マクロ)経済政策には一般的には、金融政策と財政政策があるといわれている。主としてインフラを構築する財政政策は、景気対策として、インフラが整っていない新興国では効果があるが、先進国では効果が弱くなる。一時的には景気がよくなるが、無駄な使われないインフラを作っても経済(景気)によい影響はなく、借金ばかりが残るという悪循環になる。金融政策はもともと景気刺激としての効き目は薄い。輸血した血液が体中に行き渡るように経済全体を底上げし、一時的に刺激をするが、短期的で、経済の悪いところを直さず放置するので、余計に経済本体をじわじわと悪化させる。そのため、第三の経済政策として構造改革(成長戦略)が必要となるが、痛みを伴うため日本ではなかなか政治的に導入が困難となっており、現状維持が長期化す。日本は1990年代初頭のバブル経済崩壊後、経済が低迷し、景気回復や財政再建に向けた政策を実施できていない。このゆな経済状態のときに、さらに量的金融緩和として通貨量を増やしていくと、実体経済では資金を必要としていないため流れず、金融をはじめとした資産に流れ込んでいき、資産価格を上昇させる。資産価格の上昇には、資産が増加すると、投資を促進するなど経済成長(景気)に対してプラスとなる資産効果がある。しかし、その資産価格の上昇も、限度を超えるとバブルとなるリスクが高く注意が必要である。いつの世もバブルの崩壊が経済危機の主因の一つだからである。
・日本銀行は2013年以降、年間50兆円のペースで、国債発行額の約7割を購入しており、国債保有割合(2014年3月末)は約2割を超え、保険会社全体を抜き、日本国内で最大の保有者となっている。国債の購入と資金の供給は表裏一体であり、事実上、量的金融緩和を継続することによって、国債の暴落防止し、低金利安定させているという本来、財政法第5条で禁止されている中央銀行が財政赤字を穴埋めする財政ファイナンスに踏み込んでいる。
・平成25年度の日本銀行の国債利息は8057億円あり、収入項目ではもっとも大きく、人件費などの経費1908億円を引いても経常利益は3665億円となっている。当期剰余金は3671億円となり、法定準備金積立金や配当金を除いた残りが国庫納付金となる。結局平成21年度は日本銀行は決算で3486億円を国庫に納めた。海外の主要中央銀行も同様の制度がある。逆に、財政的に政府に依存しなければならなくなったとき、独立性が阻害される可能性もある。
・国債の引き受けと代価としての通貨の供給によるシニョレッジは、インフレをもたらし経済を困窮化させることからインフレ税ともいわれている。逆に増税をすると市中から資金を吸い上げるために資金が不足する状態になりデフレになる。ロシアの指導者レーニンは「インフレは経済を破壊する最も良い方法である」と述べている。
・基本的には、マクロ経済政策は、経済成長を前提とした上での、適度なインフレ率の目標の設定が基本である。いままでの先進国の政策担当者が持っていた共通目標は経済成長率が3%で、インフレ率が2%のセットで、すなわち概念的にいうと1%が実質的な収益(儲け)ということになる。
・シニョレッジとハイパーインフレの関係では、ドイツのワイマール共和国の悲劇が有名である。ワイマール共和国は第一次世界大戦による膨大な賠償金を税金からではなく紙幣を印刷して支払い、さらに大きなストライキも実施され生産量が大きく落ちたため、モノとおカネのバランスが大きく崩れ、1兆倍ともいわれたハイパーインフレを招いた。日本も第二次世界大戦に紙幣を大量発行し、さらに戦地または占領地では軍の代用通貨であった軍票(軍用手票)までも大量発行したため、経済は大きく混乱した。現代では、過去の歴史を反省し、シニョレッジによって直接的に歳入を賄おうとするのは、ほとんどの先進国では禁止されている。ユーロではマーストリヒト条約と、修正の条約のリスボン条約でそれを禁止している。日本でも、政府の発行した国債の直接引き受けを禁じた財政法第5条がある。中央銀行が赤字国債の直接引受を始めると、通貨の乱発(シニョレッジ)と財政拡大に歯止めが利かなくなるということであった。現在の量的緩和もこれに当たる懸念がある。現在の状況での国債直接引受はインフレ率を上げる効果も、景気を刺激する効果も薄い。通貨としての円と国債に対する内外の信用も失っていうことになる。歴史的に見ても、戦中戦後のインフレと国債の暴落を生んだのは日銀の国債直接引受である。
・実は、基軸通貨の定義は「中心的な国際通貨」というもので、明確な定義・基準はない。一般的にいわれている基軸通貨の歴史は、金、オランダ・ギルダー、英ポンド、米ドルという流れである。そして、将来、ユーロが基軸通貨となる可能性もある。
・金の有史以来の生産量は約17万トンあまりで、総量はオリンピックプール3.5杯分にすぎない。用途は地金(延べ板)、コインといった投資向けや宝飾品のほか、歯科材料や電子部品などの工業用にも使う。黄金色に光り輝き、決してさびない。持つとずっしりと重い。そのリアルな感触にも、投資家は価値を見出す。実際、金に投資するなら現物で、しかも、身近に置きたいと考える投資家も多い。金は、通貨と商品と二つの顔を持つ。金価格は金融政策やマネーの動きによって変動するし、商品としては生産高や景気動向など実需によっても変動する。リーマン・ショック以降は、金の通貨としての存在感が強まっている。金には利子も配当金もない。しかも、一般的には預けるための保管手数料もかかる。そのため、景気が戻り、米国などの主要国が政策金利を引き上げれば、速いスピードで売られる可能性もある。もっとも、金は通貨の世界では金融的価値の「最後の拠りどころ」となっている。過去には基軸通貨の一つとされ、現在でも通貨としての性質を持っており、実際に外貨準備の通貨の一つとして保有されている。金融商品別では、日本の外貨準備のうち、金は外貨証券に次ぐ資産となっている。
・地金や宝飾品の消費はインドが世界一だたが、2013年に中国がトップに立った。新興国では金を好む文化に加え、自国通貨の代わりに保有する人も多い。中央銀行も外貨準備として金を保有するが、最近は中国やロシアが保有量を増やしている。一方、生産量ではかつては南アフリカがトップであったが、現在は中国となっている。金市場でも消費と生産で中国の存在が増している。
・近世において世界の銀の大産地は、大きくいってボヘミア、ドイツ、メキシコ、そして石見(いわみ)銀山だったのである。中国の銀の算出量は少なく、石見銀山の銀が中国やアジアの通貨を支えたといわれている。それほど、石見銀山は通貨の世界では有名なのである。世界の博物館に展示してある戦国時代から江戸時代の古地図にはIwamiの名前がほとんどあった。世界的に金の産出量は通貨にするには十分ではなく、日常の通貨は産出量の多い銀であったといわれている。その名残は結構いろいろなところにある。たとえば「銀行」という言葉の「銀」は通貨(おカネ)であり「行」は中国語で企業のこと(内田洋行などという社名も残っている)で、おカネを扱う企業というわけである。また、現在では「賃金」と表記されるが、歴史の中では「賃銀」と表記される時代もある。さらに、ドルの通貨記号の$のSはシルバー(Silver)のSといわれている。ちなみにドル(ダラー)という名前は、ボヘミアの銀の産地ヨアヒムス・ターレル(ヤコブの谷)のターレルからきているといわれている。ターレル→ダーレル→ダレラ→ダラーと変わったようだ。つまり、ダラーはそれだけだと、ドイツ語の「谷」の意味なのである。ちなみにドル$をはじめとした「通貨記号の二本線」は「天秤(計り)」を表しており、モノサシとしての機能を象徴している。
・IMFで現在、外貨準備の計量をしているのは米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、スイス・フラン、豪ドル、カナダ・ドル、そしてその他通貨である。その他通貨の内訳は公開されていない。伸びているのはカナダ・ドル、豪ドルなどの資源国通貨である。外貨準備に採用されると、通貨の信任が高まり売買が増える。外国為替相場にも影響を与える可能性がある。日本では、米ドル、ユーロ、英ポンドの3種類しか外貨準備通貨を保持していない。
・アジア通貨危機対応のため、IMFが融資の条件として行った増税や歳出削減をはじめとした急進的な構造改革は通貨を安定させられず、各国でさらに深刻な不況を招いた。その後、各国は自衛のため、また投機家につけ込む隙を与えないよう、国際収支の安定を優先する経済運営に努め、外貨準備を積み上げた。域内に2000年にチェンマイ・イニシアティグ(規模2400億ドル)という外貨融通のネットワークをつくり上げた。こうした備えが2008年のリーマン・ショックから東南アジアを守った。そのような経緯もあり、米国主導の世界銀行とIMFを軸とする国際金融秩序を揺さぶる動きもある。BRICSがBRICS開発銀行(新開発銀行)の創設を決めた。本部所在地は中国の上海。さらに中国はアジアインフラ投資銀行の設立も主導している。BRICS開発銀行は外貨準備の共同積立基金を1000億ドルで設立。世界銀行、そしてIMFの役割と重なる。アジアでは二段構えとして、さらにAIIBを20カ国で設立する。これは日本抜きのアジア開発銀行に当たる。このような動きに対し、ADB(アジア開発銀行)は貸出となる自己資本を3倍に増額する方針で。新興国のインフラ整備事業に充てる。それに加え日本とASEAN加盟国10カ国が新たな金融協力の枠組みを準備している。日本が外貨準備で新興国の国債を購入、各国の財政資金の調達の安定を通じて成長を促し、通貨交換協定も結ぶ。
・国際経済政策の目標は、景気(経済成長)、物価安定、そして為替レートの管理(国際収支均衡と為替レート安定)であるが、それぞれの目標は関連がありながらも別個の目標であるので、同時に実現することは、金融政策および財政政策という経済政策手段の数に限りがあるので困難であるという根本的な問題、国際金融のトリレンマがある。しかし、変動相場制の自動安定化メカニズムが働くのであれば、為替レートの管理(国際収支均衡と為替レート安定)という経済政策目標は顧慮せずに、景気と物価安定の目標に専念すればよいことになり、同時実現が図りやすくなる。本来、完全な変動相場制であえば、もはや為替レートを安定させるために外国為替市場に介入する義務もなく、金利を上げる必要もなく、政府は国内経済のための経済政策に集中できるわけである。
・固定相場制で通貨危機(通貨の暴落)の処方箋としては、まず外貨準備を使って自国通貨買い(ドル売り)の為替介入を行うが、次には金利を引き上げることになる。この場合、金利の引き上げ(引き締め)は副作用として国内経済に悪影響を与えることになる。それでも(国内経済が悪化したとしても)為替レートを支えられなくなってくると、資本移動に関する規制の強化を行うことになる。さらには、海外(非居住者)が保有する通貨の価値はないものとする(マレーシアやシンガポールが実施)。この政策は一言でいうと、海外金融市場との遮断である。すなわち通貨の海外保有そのもの、そして海外からの投資も制限することになる。海外からの投資を遮断すれば、引き揚げるマネーも入ってこないわけで、処方箋としては、ある意味、合理的ではある。ここで問題となるのは、為替レートの固定を守る、あるいは変動を制限する「意義」である。主たるマクロ経済政策いは、金融政策と財政政策の二つがある。そして、主たる国の経済目標は景気(経済成長)と物価管理である。そのため、通常、財政政策と金融政策は景気と物価にそれぞれ使用され、為替レートの管理に使用できる経済政策はない。ほかの政策(手段)として外貨準備を使った介入という対応が必要となる。金利の引き上げはそもそも金融政策であり、間違いなく国内経済に引き締め作用がある。固定相場制を守るための金利の引き上げは国内経済をさらに危機的なものにするメカニズムが働く。つまり、為替レートの固定という政策目標を破棄して初めて、国内景気の回復がスタートするともいえる。この例は多く、以前のアジア通貨危機のときの韓国(第1次通貨危機)もまさにそのケースで。IMFが旧型の通貨危機の処方箋を適用したミスが指摘されているが、マネーサプライの削減=金利の引き上げを実施し(経済構造改革も実施したが)、国内景気をさらにいっそう冷やした。その後、変動相場制にすることによって、経済政策をそもそもの国内経済に集中させることができるようになり、国内経済の発展につながった。
・最近まで主流だったものに、経常収支(貿易収支)をベースとするフロー(収支)アプローチがある。経常黒字国の為替レートが上昇し、為替レートの上昇が経常黒字を減らしていくというもので、わかりやすい。しかし、実際は長年の円高局面でも、日本の経常黒字は減らなかった。現在では、アセット(資産)アプローチが主流になっている。「フローアプローチ」のベースは貿易であったのに対して、「アセットアプローチ」のベースは投資となっている。投資においては、資産価格の上昇率(資産の収益率)が重要である。①利子率、②株価上昇率、そして③不動産などのその他の資産の上昇率の順番で影響がある。実際、現在の為替レートは国債、それも2年物国債(金利差)と関係が深い。財政政策つまり国債の状況は、それまでの利子率などの利回りとは別の信用面が加わる。国債と通貨はともに国の負債であり、国の信用の上に成り立っているため、影響がある。さらに、最近の市場は先物が先導していることからもわかるように、それらの市場における相場の予想が最終的な決定要因となる。
・現在BIS(2013年)によると世界の外国為替取引量は1日(片道)当たりで約5.4兆ドルある。世界銀行(2012年)によると貿易取引は1日当たり約0.15兆ドルである。外国為替取引における貿易取引というのは約3%にすぎないのである。つまり、為替取引の主たる要因ではなくなっている。
・投資については、世界の金融市場を見ると、債券関係商品(金利物)と株式関係商品の割合は大体半分である。すなわち金利と株価の二つの動向が重要な役割を果たす。
・特に米国の雇用統計などの経済指標の発表のときなどは、その「経済指標の予想値と実際に発表された数値との差」が為替レートを動かすことになる。これは、たとえ経済指標そのものがよかったとしても、予想値よりも実際の数値が悪かった場合には、売られて下落することになる。
・ドイツの金融政策を司る中央銀行であるブンデスバンクは歴史的にインフレファイターとして有名である。ドイツは何回も戦争で悲惨な目にあってきただけに、もう戦争は起こしてはいけないという思いが非常に強くある。ドイツでは第一次世界大戦後のハイパー・インフレーションが第二次世界大戦を引き起こした経済面の原因であると、国民に印象づけられているため、ドイツ人はインフレに非常に敏感で、まさにトラウマになっている。また、1970年代の2回の石油危機によるインフレーションを打ち破り回復したこと、80年代には日独米の三国によって世界経済を牽引するという拡張的な国際財政政策(いわゆる機関車政策)が採られたが、結局うまくいかなかったことも、この傾向を加速させた。このような歴史がドイツをインフレーションに対して非常に敏感な国に変貌させたのである。中央銀行はインフレーション抑制、つまり物価の安定をその基本的役割としている。ブンデスバンクを手本として発足したECBも、物価の安定のみを最終目標としている。物価の安定の実現のために、中間目標としえマネーサプライを管理することにしている。
・金本位制の下では、各国は自国通貨を金に対して結びつけるので、公的外貨準備は当然、金であった。国際金本位固定相場制下の国際通貨制度は、すべての先進国が自国通貨を金にリンクさせ、また外貨準備として金を保有している限り、各国通貨は平等であり、対象性を持っていた。この国際金本位制では基軸通貨による非対象性の問題は発生しない。一方、金は鉱物であり、大規模な金鉱が発見され、金の生産量が増大すると世界的にインフレが発生し、また金産出国が有利であるといった鉱物的性質に基づく問題もあった。例外ルールはあったものの、第一次世界大戦中に各国政府は金本位制を放棄し、どの国でも軍事支出のかなりの部分をシニョレッジ(政府紙幣による場合が多かった)で賄った。その結果、1918年に戦争が終わったとき、いずれの国においても物価水準は上昇していた。さらにいくつかの国では、復興・賠償の予算も、戦時中と同じようにシニョレッジによって賄おうとした。紙幣の大量発行の結果、起きたのは、今となっては必然的とも思えるが、爆発的なインフレ(ハイパーインフレーション)だった。たとえばドイツ(ワイマール共和国)では、第一次世界大戦終結後のヴェルサイユ条約で莫大な賠償金を課せられた。そのときドイツは増税ではなく、紙幣を大量に印刷し、それを原資にした。結果として1923年にはドイツの物価水準は約4億5000万倍(1兆倍ともいわれている)に跳ね上がり、紙幣はすでに通貨とはいえないレベルになっていた。現在の通貨危機とは比較にならないほどのショックと混乱となった。その後、1929年からの世界大恐慌が長引くにつれ、多くの国が再び設置した金本位制を放棄するようになった。経済の不確実性が増したため、為替レートは急激に変化した。各国はその動きを制限するために資本移動に制限を設けたり、関税政策を進めることになった。一方、平価(公定レート)の切り下げ競争(通貨安政策)も始まるなど、近隣国窮乏化政策が本格的に採用された。それが報復合戦に進展し、以前よりいっそう悪い状態となってブロック経済がベースとなった通貨同盟もつくえ、第二次世界大戦に突入していくことになる。
・投機筋が固定相場制の当該国の通貨を売り浴びせていく。通貨当局が屈服した場合、為替レート諮詢を切り下げることになる。それも一般的な場合、大幅に切り下げることになる。投機筋は売っていた当該国通貨を大幅に切り下がった水準で買い戻す。その結果として、莫大な利益を得ることになるのである。逆にその国の通貨当局が潤沢な外貨準備を保有している場合などには、投機の波を乗り切ることも可能である。しかしその場合でも、為替レートは固定されており、その国の通貨を売っていた投機筋は”同レベル”で買い戻すことができる。つまり、投機筋は”負けない”のである。この固定相場制の対決は、投機筋にとって勝ちか引き分けの負けない勝負といえる。これを固定相場制の投機標的論と筆者は呼ぶ。これは、変動相場制の通貨を先を読んでディーリングするリスクと比べれば、格段にリスクが少ないことは明らかである。
・リスク回避の動きは「質への逃避」と同義語で、国債や金のように信用度と流動性が高い商品に向かうこととなる。比較すると、商品の中では金に向かう傾向にある。債券で、社債と国債では国債に向かい、証券で株と国債では同じく国債に向かうことになる。通貨では、新興国通貨と先進国通貨では、先進国通貨に向かうことになる。先進国通貨の中では、日本円やスイス・フランに資金が向かう傾向が強い。
・株価指数のニューヨーク・ダウ平均(ダウ工業株30種平均)は米国の株価指数であるが、米国経済、そして世界経済を代表している景気指数でもある。ダウ平均が世界経済の状況を端的に表す。
・インフレから第二次世界大戦となった歴史を踏まえ、ドイツには以下のような特徴がある。インフレ対策を重視し、通貨価値を維持、ケインズ的景気刺激政策は採用しない、産業政策は民間主導、ということで、日本の経済指標と異なり、要は「その場しのぎをしない長期的展望」を持っている。ドイツが2015年に財政均衡を実現し、赤字国債の発行を46年ぶりに停止する見通しとなる。過去の債務残高の削減も進め、直近GDP対比80%であるが、この見込みだと2017年には70%を割り込む。
・スイス国立銀行は対ユーロのスイス・フラン相場の上限を1ユーロ=1.20スイス・フランに設定している。この水準を上回るスイス・フラン高については、異例ではあるが、無制限のスイス・フラン売り介入を実施する。そもそも経済は堅調で、永世中立国であるスイスの通貨であるスイス・フランは安全資産と認識されている。実際、欧州債務危機が発生し、スイス・フランが買い進められた2011年には、実際に当局が無制限介入に踏み切ってスイス・フラン高を止めた。しかし、2015年1月に、ECBのさらなる金融緩和予測により、無制限介入を終了した。スイスの外貨準備は、介入によりGDPの7割を超えている。対ユーロの介入であり、ユーロ下降のリスクも許容できなくなったようである。
・人民元の通貨制度の歴史
①固定相場制(1949~71年)
②通貨バスケット固定相場制(1972~80年)
③二重相場制(固定相場制)(1981~93年)
④管理変動相場制(1994~97年)
⑤固定相場制(1997~2005年)
⑥通貨バスケット管理変動相場制(2005~07年)
⑦変動幅拡大(2007~08年)
⑧固定相場制(2008年7月~10年6月)
⑨通貨バスケット管理変動相場制(2010年6月~)
⑩変動幅拡大(2012年4月に変動幅を1%以内に拡大し、2014年3月には変動幅を2%に拡大した)
・英国では、ユーロの導入に関してまだ結論が出ていない。欧州と米国との経済的そして政治的関係もその理由の一つである。日本も東アジア共通通貨を推進しているが、実際は、日本の場合も英国と同じ立場で、アジアと米国との経済的そして政治的関係があり、東アジア共通通貨に参加できる可能性は低く、英国と同様にアジアと米国との経済的そして政治的関係を共に重視していくのではないか。そうなってきたときに、日本円、そして日本経済のアイデンティティーの再構成が必要になるのではないか。
・アジアの通貨を考えるときに、人民元の動きに注目しなければならない。現在は、まだ国際化しておらず、固定的な通貨制度を採用している。しかし、人民元建ての貿易決済もスタートし、人民元建て債券の発行もスタートした。政府間では通貨スワップ協定が多数結ばれている。また、近隣諸国との間では人民元の紙幣の流通がスタートしてきており、徐々に広がりつつある。このような進め方は、通貨経済学からすると、きわめて合理的かつ戦略的である。しかし、いくら経済規模が大きいからといっても、国際通貨になっていない人民元がすぐに基軸通貨になることには無理がある。しかし中国当局は、人民元の基軸通貨化に向けて、着実に布石を打っている。
・通貨統合には地域経済協力がベースとなる。アジアの経済統合はASEANが中心に進んでいる。ASEANをコアにして、さまざまな地域協力が進展している。チェンマイ・イニシアティブなどの金融協定は、ASEAN+3をベースにしている。東アジア首脳会議(サミット)は地域の政治・経済問題を協議する会合であり、ASEAN+3にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えたASEAN+6の16カ国で構成している。この延長線上に東アジア共同体構想もあった。あらにASEANは、東アジアサミットに米国とロシアを加え18カ国の枠組み構築を目指す。この場合、構成国の8割がAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のメンバーと重複する。こうなると、東アジアの地域協力から経済統合、そしてその先にあると仮定される共通通貨の可能性も薄まることとなる。
・電子マネーは、日本独自の決済手段といえる。欧州では銀行口座から引き落とされるデビットカードが主流で、かつて流通していた小切手の代替と考えられる。米国ではクレジットカードが多い。日本で電子マネーが使われるのは現金志向が根強いためと考えられる。
・中国の銀聯カード(Union Pay card)が日本で普及し始めている。2002年設立の上海に本部がある中国銀聯(China Union Pay)が手掛ける人民元カード。中国では銀行預金カードにあたり銀行に口座をつくると発行され、40億枚以上発行されている。クレジットカードもあるが、主としてデビットカードで、世界140カ国・地域で利用できる。日本でも百貨店各社が中国人旅行者のために対応している。ネットワークはクレジットカードのネットワークを使う。
・ビットコインは2009年に登場した仮想通貨である。仮想通貨とは、いわゆある種の「国のない通貨」で発行量はすでに円換算で1兆円を超えたといわれる。中央銀行や金融当局の規制に縛られず、インターネットを通じて世界中に瞬時に送金できる。経済活動がグローバル化する中で、新たな需要を取り込んだが、違法取引の防止や利用者の保護では多くの課題を抱える。ビットコインは各種の通貨をデジタルに扱っているのではなく、それ自体が資産としての価値を持つ。各地にある専門取引所でドルや円と引き替えに、ビットコインを購入する。取引価格はその時どきの需要によって変わる変動価格であり、投機的性質も備える。ビットコインはネット上を転々とする一種の「数式」であり、通貨と呼ばれるだけに、高度な暗号技術を使って複製が防止されている。ビットコインはプログラムで流通量の上限が決まっているだけなので、購入する人が増えるだけ価値が高まる。その意味では、通貨というよりは金に似ている。また、非常に複雑な数式を解けば自分でビットコインをつくり出すこともできる。これを「マイニング(発掘)」という。ネット上を自由に行き交うことができるため、世界中に送ることが可能である。銀行を介さないため、手数料はほとんどかからない。端末同士が直接通信し合うピア・ツー・ピア(P2P)方式で行う。匿名性を持ち、その特徴ゆえに違法取引やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になりやすい。金融機関のネットワークを経由しないため、補足が難しい。
良かった本まとめ(2014年下半期)
<今日の独り言>
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・日本ではアベノミクスによる量的金融緩和
・米国では量的金融緩和により米ドルの量は5倍となり、その正常化へ向けた動きによる影響
・シェール革命などによる原油価格急落によりロシア通貨ルーブルが暴落し変動相場制へ移行
・ユーロ内のギリシャ危機
・ビットコインの拡大など
また、以下について分かりやすく説明があるのは素晴らしいと思いましたね。
・日本史の中のシニョレッジ(インフレを起こし問題だった。歴史は繰り返す・・・)
・基軸通貨の歴史
・外貨準備の性質
・変動相場制と固定相場制のメリット・デメリット
・世界各国毎の通貨制度の表
・通貨制度の歴史
・通貨危機の歴史
・米ドル、ユーロ、人民元の特徴
・人民元の通貨制度の歴史
・アジアの通貨金融改革
・電子マネー
・ビットコイン
「通貨経済学入門 第2版」という本は、通貨や経済のことが体系的に歴史も踏まえて説明されていて、とてもオススメです!
以下はこの本のポイント等です。
・各国で通貨を担当する通貨当局とは、一般的に政府の中でも財務省と、そして独立性を持つ中央銀行を指す。通貨にかかわる管理業務が中央銀行の担当になることが多い。日本の紙幣には「日本銀行券」と表示されていることからもわかるように、日本では、中央銀行だけが通貨の発行をはじめとした管理を認められている。一方為替レートのコントロールに関しては財務省の所管である。その担当は財務省の財務官で為替介入を実施する。日本銀行は財務省の指示の下、為替介入の事務を行っているだけで判断はしていない。よく市場で売買をするのが日銀なので、新聞等で日銀介入といわれるが、これは誤解を生む。正確には財務省介入である。
・金融政策とは、基本的には、中央銀行が、主として短期金融市場で資金の供給や吸収を行って通貨量を調整し、金利水準を一定の目標に沿うように誘導することである。この場合、金融政策によって、通貨量を調整することは、通貨価値にダイレクトに影響を与える。この点で金融政策と通貨政策の本質は一緒なのである。通貨量を増加させると、当然のことながら、外国為替市場における通貨価値(為替レート)は下がっていき、資金貸借市場の金利も下がっていく。さらに金利がゼロになるまで通貨量を増加させる政策をゼロ金利政策という。さらに、ゼロ金利になってもさらに通貨量を増やすことを量的金融緩和政策という。量が増え金利が下がっていくことは、健全な経済であれば、景気に対してもプラスの影響があり、物価も上昇する。しかし、先進国の経済は成熟し、潜在成長率が落ちてきて長期停滞となっており、構造的に経済本体の機能が落ちてくると、物価の反応もにぶくなってくる。(マクロ)経済政策には一般的には、金融政策と財政政策があるといわれている。主としてインフラを構築する財政政策は、景気対策として、インフラが整っていない新興国では効果があるが、先進国では効果が弱くなる。一時的には景気がよくなるが、無駄な使われないインフラを作っても経済(景気)によい影響はなく、借金ばかりが残るという悪循環になる。金融政策はもともと景気刺激としての効き目は薄い。輸血した血液が体中に行き渡るように経済全体を底上げし、一時的に刺激をするが、短期的で、経済の悪いところを直さず放置するので、余計に経済本体をじわじわと悪化させる。そのため、第三の経済政策として構造改革(成長戦略)が必要となるが、痛みを伴うため日本ではなかなか政治的に導入が困難となっており、現状維持が長期化す。日本は1990年代初頭のバブル経済崩壊後、経済が低迷し、景気回復や財政再建に向けた政策を実施できていない。このゆな経済状態のときに、さらに量的金融緩和として通貨量を増やしていくと、実体経済では資金を必要としていないため流れず、金融をはじめとした資産に流れ込んでいき、資産価格を上昇させる。資産価格の上昇には、資産が増加すると、投資を促進するなど経済成長(景気)に対してプラスとなる資産効果がある。しかし、その資産価格の上昇も、限度を超えるとバブルとなるリスクが高く注意が必要である。いつの世もバブルの崩壊が経済危機の主因の一つだからである。
・日本銀行は2013年以降、年間50兆円のペースで、国債発行額の約7割を購入しており、国債保有割合(2014年3月末)は約2割を超え、保険会社全体を抜き、日本国内で最大の保有者となっている。国債の購入と資金の供給は表裏一体であり、事実上、量的金融緩和を継続することによって、国債の暴落防止し、低金利安定させているという本来、財政法第5条で禁止されている中央銀行が財政赤字を穴埋めする財政ファイナンスに踏み込んでいる。
・平成25年度の日本銀行の国債利息は8057億円あり、収入項目ではもっとも大きく、人件費などの経費1908億円を引いても経常利益は3665億円となっている。当期剰余金は3671億円となり、法定準備金積立金や配当金を除いた残りが国庫納付金となる。結局平成21年度は日本銀行は決算で3486億円を国庫に納めた。海外の主要中央銀行も同様の制度がある。逆に、財政的に政府に依存しなければならなくなったとき、独立性が阻害される可能性もある。
・国債の引き受けと代価としての通貨の供給によるシニョレッジは、インフレをもたらし経済を困窮化させることからインフレ税ともいわれている。逆に増税をすると市中から資金を吸い上げるために資金が不足する状態になりデフレになる。ロシアの指導者レーニンは「インフレは経済を破壊する最も良い方法である」と述べている。
・基本的には、マクロ経済政策は、経済成長を前提とした上での、適度なインフレ率の目標の設定が基本である。いままでの先進国の政策担当者が持っていた共通目標は経済成長率が3%で、インフレ率が2%のセットで、すなわち概念的にいうと1%が実質的な収益(儲け)ということになる。
・シニョレッジとハイパーインフレの関係では、ドイツのワイマール共和国の悲劇が有名である。ワイマール共和国は第一次世界大戦による膨大な賠償金を税金からではなく紙幣を印刷して支払い、さらに大きなストライキも実施され生産量が大きく落ちたため、モノとおカネのバランスが大きく崩れ、1兆倍ともいわれたハイパーインフレを招いた。日本も第二次世界大戦に紙幣を大量発行し、さらに戦地または占領地では軍の代用通貨であった軍票(軍用手票)までも大量発行したため、経済は大きく混乱した。現代では、過去の歴史を反省し、シニョレッジによって直接的に歳入を賄おうとするのは、ほとんどの先進国では禁止されている。ユーロではマーストリヒト条約と、修正の条約のリスボン条約でそれを禁止している。日本でも、政府の発行した国債の直接引き受けを禁じた財政法第5条がある。中央銀行が赤字国債の直接引受を始めると、通貨の乱発(シニョレッジ)と財政拡大に歯止めが利かなくなるということであった。現在の量的緩和もこれに当たる懸念がある。現在の状況での国債直接引受はインフレ率を上げる効果も、景気を刺激する効果も薄い。通貨としての円と国債に対する内外の信用も失っていうことになる。歴史的に見ても、戦中戦後のインフレと国債の暴落を生んだのは日銀の国債直接引受である。
・実は、基軸通貨の定義は「中心的な国際通貨」というもので、明確な定義・基準はない。一般的にいわれている基軸通貨の歴史は、金、オランダ・ギルダー、英ポンド、米ドルという流れである。そして、将来、ユーロが基軸通貨となる可能性もある。
・金の有史以来の生産量は約17万トンあまりで、総量はオリンピックプール3.5杯分にすぎない。用途は地金(延べ板)、コインといった投資向けや宝飾品のほか、歯科材料や電子部品などの工業用にも使う。黄金色に光り輝き、決してさびない。持つとずっしりと重い。そのリアルな感触にも、投資家は価値を見出す。実際、金に投資するなら現物で、しかも、身近に置きたいと考える投資家も多い。金は、通貨と商品と二つの顔を持つ。金価格は金融政策やマネーの動きによって変動するし、商品としては生産高や景気動向など実需によっても変動する。リーマン・ショック以降は、金の通貨としての存在感が強まっている。金には利子も配当金もない。しかも、一般的には預けるための保管手数料もかかる。そのため、景気が戻り、米国などの主要国が政策金利を引き上げれば、速いスピードで売られる可能性もある。もっとも、金は通貨の世界では金融的価値の「最後の拠りどころ」となっている。過去には基軸通貨の一つとされ、現在でも通貨としての性質を持っており、実際に外貨準備の通貨の一つとして保有されている。金融商品別では、日本の外貨準備のうち、金は外貨証券に次ぐ資産となっている。
・地金や宝飾品の消費はインドが世界一だたが、2013年に中国がトップに立った。新興国では金を好む文化に加え、自国通貨の代わりに保有する人も多い。中央銀行も外貨準備として金を保有するが、最近は中国やロシアが保有量を増やしている。一方、生産量ではかつては南アフリカがトップであったが、現在は中国となっている。金市場でも消費と生産で中国の存在が増している。
・近世において世界の銀の大産地は、大きくいってボヘミア、ドイツ、メキシコ、そして石見(いわみ)銀山だったのである。中国の銀の算出量は少なく、石見銀山の銀が中国やアジアの通貨を支えたといわれている。それほど、石見銀山は通貨の世界では有名なのである。世界の博物館に展示してある戦国時代から江戸時代の古地図にはIwamiの名前がほとんどあった。世界的に金の産出量は通貨にするには十分ではなく、日常の通貨は産出量の多い銀であったといわれている。その名残は結構いろいろなところにある。たとえば「銀行」という言葉の「銀」は通貨(おカネ)であり「行」は中国語で企業のこと(内田洋行などという社名も残っている)で、おカネを扱う企業というわけである。また、現在では「賃金」と表記されるが、歴史の中では「賃銀」と表記される時代もある。さらに、ドルの通貨記号の$のSはシルバー(Silver)のSといわれている。ちなみにドル(ダラー)という名前は、ボヘミアの銀の産地ヨアヒムス・ターレル(ヤコブの谷)のターレルからきているといわれている。ターレル→ダーレル→ダレラ→ダラーと変わったようだ。つまり、ダラーはそれだけだと、ドイツ語の「谷」の意味なのである。ちなみにドル$をはじめとした「通貨記号の二本線」は「天秤(計り)」を表しており、モノサシとしての機能を象徴している。
・IMFで現在、外貨準備の計量をしているのは米ドル、ユーロ、英ポンド、日本円、スイス・フラン、豪ドル、カナダ・ドル、そしてその他通貨である。その他通貨の内訳は公開されていない。伸びているのはカナダ・ドル、豪ドルなどの資源国通貨である。外貨準備に採用されると、通貨の信任が高まり売買が増える。外国為替相場にも影響を与える可能性がある。日本では、米ドル、ユーロ、英ポンドの3種類しか外貨準備通貨を保持していない。
・アジア通貨危機対応のため、IMFが融資の条件として行った増税や歳出削減をはじめとした急進的な構造改革は通貨を安定させられず、各国でさらに深刻な不況を招いた。その後、各国は自衛のため、また投機家につけ込む隙を与えないよう、国際収支の安定を優先する経済運営に努め、外貨準備を積み上げた。域内に2000年にチェンマイ・イニシアティグ(規模2400億ドル)という外貨融通のネットワークをつくり上げた。こうした備えが2008年のリーマン・ショックから東南アジアを守った。そのような経緯もあり、米国主導の世界銀行とIMFを軸とする国際金融秩序を揺さぶる動きもある。BRICSがBRICS開発銀行(新開発銀行)の創設を決めた。本部所在地は中国の上海。さらに中国はアジアインフラ投資銀行の設立も主導している。BRICS開発銀行は外貨準備の共同積立基金を1000億ドルで設立。世界銀行、そしてIMFの役割と重なる。アジアでは二段構えとして、さらにAIIBを20カ国で設立する。これは日本抜きのアジア開発銀行に当たる。このような動きに対し、ADB(アジア開発銀行)は貸出となる自己資本を3倍に増額する方針で。新興国のインフラ整備事業に充てる。それに加え日本とASEAN加盟国10カ国が新たな金融協力の枠組みを準備している。日本が外貨準備で新興国の国債を購入、各国の財政資金の調達の安定を通じて成長を促し、通貨交換協定も結ぶ。
・国際経済政策の目標は、景気(経済成長)、物価安定、そして為替レートの管理(国際収支均衡と為替レート安定)であるが、それぞれの目標は関連がありながらも別個の目標であるので、同時に実現することは、金融政策および財政政策という経済政策手段の数に限りがあるので困難であるという根本的な問題、国際金融のトリレンマがある。しかし、変動相場制の自動安定化メカニズムが働くのであれば、為替レートの管理(国際収支均衡と為替レート安定)という経済政策目標は顧慮せずに、景気と物価安定の目標に専念すればよいことになり、同時実現が図りやすくなる。本来、完全な変動相場制であえば、もはや為替レートを安定させるために外国為替市場に介入する義務もなく、金利を上げる必要もなく、政府は国内経済のための経済政策に集中できるわけである。
・固定相場制で通貨危機(通貨の暴落)の処方箋としては、まず外貨準備を使って自国通貨買い(ドル売り)の為替介入を行うが、次には金利を引き上げることになる。この場合、金利の引き上げ(引き締め)は副作用として国内経済に悪影響を与えることになる。それでも(国内経済が悪化したとしても)為替レートを支えられなくなってくると、資本移動に関する規制の強化を行うことになる。さらには、海外(非居住者)が保有する通貨の価値はないものとする(マレーシアやシンガポールが実施)。この政策は一言でいうと、海外金融市場との遮断である。すなわち通貨の海外保有そのもの、そして海外からの投資も制限することになる。海外からの投資を遮断すれば、引き揚げるマネーも入ってこないわけで、処方箋としては、ある意味、合理的ではある。ここで問題となるのは、為替レートの固定を守る、あるいは変動を制限する「意義」である。主たるマクロ経済政策いは、金融政策と財政政策の二つがある。そして、主たる国の経済目標は景気(経済成長)と物価管理である。そのため、通常、財政政策と金融政策は景気と物価にそれぞれ使用され、為替レートの管理に使用できる経済政策はない。ほかの政策(手段)として外貨準備を使った介入という対応が必要となる。金利の引き上げはそもそも金融政策であり、間違いなく国内経済に引き締め作用がある。固定相場制を守るための金利の引き上げは国内経済をさらに危機的なものにするメカニズムが働く。つまり、為替レートの固定という政策目標を破棄して初めて、国内景気の回復がスタートするともいえる。この例は多く、以前のアジア通貨危機のときの韓国(第1次通貨危機)もまさにそのケースで。IMFが旧型の通貨危機の処方箋を適用したミスが指摘されているが、マネーサプライの削減=金利の引き上げを実施し(経済構造改革も実施したが)、国内景気をさらにいっそう冷やした。その後、変動相場制にすることによって、経済政策をそもそもの国内経済に集中させることができるようになり、国内経済の発展につながった。
・最近まで主流だったものに、経常収支(貿易収支)をベースとするフロー(収支)アプローチがある。経常黒字国の為替レートが上昇し、為替レートの上昇が経常黒字を減らしていくというもので、わかりやすい。しかし、実際は長年の円高局面でも、日本の経常黒字は減らなかった。現在では、アセット(資産)アプローチが主流になっている。「フローアプローチ」のベースは貿易であったのに対して、「アセットアプローチ」のベースは投資となっている。投資においては、資産価格の上昇率(資産の収益率)が重要である。①利子率、②株価上昇率、そして③不動産などのその他の資産の上昇率の順番で影響がある。実際、現在の為替レートは国債、それも2年物国債(金利差)と関係が深い。財政政策つまり国債の状況は、それまでの利子率などの利回りとは別の信用面が加わる。国債と通貨はともに国の負債であり、国の信用の上に成り立っているため、影響がある。さらに、最近の市場は先物が先導していることからもわかるように、それらの市場における相場の予想が最終的な決定要因となる。
・現在BIS(2013年)によると世界の外国為替取引量は1日(片道)当たりで約5.4兆ドルある。世界銀行(2012年)によると貿易取引は1日当たり約0.15兆ドルである。外国為替取引における貿易取引というのは約3%にすぎないのである。つまり、為替取引の主たる要因ではなくなっている。
・投資については、世界の金融市場を見ると、債券関係商品(金利物)と株式関係商品の割合は大体半分である。すなわち金利と株価の二つの動向が重要な役割を果たす。
・特に米国の雇用統計などの経済指標の発表のときなどは、その「経済指標の予想値と実際に発表された数値との差」が為替レートを動かすことになる。これは、たとえ経済指標そのものがよかったとしても、予想値よりも実際の数値が悪かった場合には、売られて下落することになる。
・ドイツの金融政策を司る中央銀行であるブンデスバンクは歴史的にインフレファイターとして有名である。ドイツは何回も戦争で悲惨な目にあってきただけに、もう戦争は起こしてはいけないという思いが非常に強くある。ドイツでは第一次世界大戦後のハイパー・インフレーションが第二次世界大戦を引き起こした経済面の原因であると、国民に印象づけられているため、ドイツ人はインフレに非常に敏感で、まさにトラウマになっている。また、1970年代の2回の石油危機によるインフレーションを打ち破り回復したこと、80年代には日独米の三国によって世界経済を牽引するという拡張的な国際財政政策(いわゆる機関車政策)が採られたが、結局うまくいかなかったことも、この傾向を加速させた。このような歴史がドイツをインフレーションに対して非常に敏感な国に変貌させたのである。中央銀行はインフレーション抑制、つまり物価の安定をその基本的役割としている。ブンデスバンクを手本として発足したECBも、物価の安定のみを最終目標としている。物価の安定の実現のために、中間目標としえマネーサプライを管理することにしている。
・金本位制の下では、各国は自国通貨を金に対して結びつけるので、公的外貨準備は当然、金であった。国際金本位固定相場制下の国際通貨制度は、すべての先進国が自国通貨を金にリンクさせ、また外貨準備として金を保有している限り、各国通貨は平等であり、対象性を持っていた。この国際金本位制では基軸通貨による非対象性の問題は発生しない。一方、金は鉱物であり、大規模な金鉱が発見され、金の生産量が増大すると世界的にインフレが発生し、また金産出国が有利であるといった鉱物的性質に基づく問題もあった。例外ルールはあったものの、第一次世界大戦中に各国政府は金本位制を放棄し、どの国でも軍事支出のかなりの部分をシニョレッジ(政府紙幣による場合が多かった)で賄った。その結果、1918年に戦争が終わったとき、いずれの国においても物価水準は上昇していた。さらにいくつかの国では、復興・賠償の予算も、戦時中と同じようにシニョレッジによって賄おうとした。紙幣の大量発行の結果、起きたのは、今となっては必然的とも思えるが、爆発的なインフレ(ハイパーインフレーション)だった。たとえばドイツ(ワイマール共和国)では、第一次世界大戦終結後のヴェルサイユ条約で莫大な賠償金を課せられた。そのときドイツは増税ではなく、紙幣を大量に印刷し、それを原資にした。結果として1923年にはドイツの物価水準は約4億5000万倍(1兆倍ともいわれている)に跳ね上がり、紙幣はすでに通貨とはいえないレベルになっていた。現在の通貨危機とは比較にならないほどのショックと混乱となった。その後、1929年からの世界大恐慌が長引くにつれ、多くの国が再び設置した金本位制を放棄するようになった。経済の不確実性が増したため、為替レートは急激に変化した。各国はその動きを制限するために資本移動に制限を設けたり、関税政策を進めることになった。一方、平価(公定レート)の切り下げ競争(通貨安政策)も始まるなど、近隣国窮乏化政策が本格的に採用された。それが報復合戦に進展し、以前よりいっそう悪い状態となってブロック経済がベースとなった通貨同盟もつくえ、第二次世界大戦に突入していくことになる。
・投機筋が固定相場制の当該国の通貨を売り浴びせていく。通貨当局が屈服した場合、為替レート諮詢を切り下げることになる。それも一般的な場合、大幅に切り下げることになる。投機筋は売っていた当該国通貨を大幅に切り下がった水準で買い戻す。その結果として、莫大な利益を得ることになるのである。逆にその国の通貨当局が潤沢な外貨準備を保有している場合などには、投機の波を乗り切ることも可能である。しかしその場合でも、為替レートは固定されており、その国の通貨を売っていた投機筋は”同レベル”で買い戻すことができる。つまり、投機筋は”負けない”のである。この固定相場制の対決は、投機筋にとって勝ちか引き分けの負けない勝負といえる。これを固定相場制の投機標的論と筆者は呼ぶ。これは、変動相場制の通貨を先を読んでディーリングするリスクと比べれば、格段にリスクが少ないことは明らかである。
・リスク回避の動きは「質への逃避」と同義語で、国債や金のように信用度と流動性が高い商品に向かうこととなる。比較すると、商品の中では金に向かう傾向にある。債券で、社債と国債では国債に向かい、証券で株と国債では同じく国債に向かうことになる。通貨では、新興国通貨と先進国通貨では、先進国通貨に向かうことになる。先進国通貨の中では、日本円やスイス・フランに資金が向かう傾向が強い。
・株価指数のニューヨーク・ダウ平均(ダウ工業株30種平均)は米国の株価指数であるが、米国経済、そして世界経済を代表している景気指数でもある。ダウ平均が世界経済の状況を端的に表す。
・インフレから第二次世界大戦となった歴史を踏まえ、ドイツには以下のような特徴がある。インフレ対策を重視し、通貨価値を維持、ケインズ的景気刺激政策は採用しない、産業政策は民間主導、ということで、日本の経済指標と異なり、要は「その場しのぎをしない長期的展望」を持っている。ドイツが2015年に財政均衡を実現し、赤字国債の発行を46年ぶりに停止する見通しとなる。過去の債務残高の削減も進め、直近GDP対比80%であるが、この見込みだと2017年には70%を割り込む。
・スイス国立銀行は対ユーロのスイス・フラン相場の上限を1ユーロ=1.20スイス・フランに設定している。この水準を上回るスイス・フラン高については、異例ではあるが、無制限のスイス・フラン売り介入を実施する。そもそも経済は堅調で、永世中立国であるスイスの通貨であるスイス・フランは安全資産と認識されている。実際、欧州債務危機が発生し、スイス・フランが買い進められた2011年には、実際に当局が無制限介入に踏み切ってスイス・フラン高を止めた。しかし、2015年1月に、ECBのさらなる金融緩和予測により、無制限介入を終了した。スイスの外貨準備は、介入によりGDPの7割を超えている。対ユーロの介入であり、ユーロ下降のリスクも許容できなくなったようである。
・人民元の通貨制度の歴史
①固定相場制(1949~71年)
②通貨バスケット固定相場制(1972~80年)
③二重相場制(固定相場制)(1981~93年)
④管理変動相場制(1994~97年)
⑤固定相場制(1997~2005年)
⑥通貨バスケット管理変動相場制(2005~07年)
⑦変動幅拡大(2007~08年)
⑧固定相場制(2008年7月~10年6月)
⑨通貨バスケット管理変動相場制(2010年6月~)
⑩変動幅拡大(2012年4月に変動幅を1%以内に拡大し、2014年3月には変動幅を2%に拡大した)
・英国では、ユーロの導入に関してまだ結論が出ていない。欧州と米国との経済的そして政治的関係もその理由の一つである。日本も東アジア共通通貨を推進しているが、実際は、日本の場合も英国と同じ立場で、アジアと米国との経済的そして政治的関係があり、東アジア共通通貨に参加できる可能性は低く、英国と同様にアジアと米国との経済的そして政治的関係を共に重視していくのではないか。そうなってきたときに、日本円、そして日本経済のアイデンティティーの再構成が必要になるのではないか。
・アジアの通貨を考えるときに、人民元の動きに注目しなければならない。現在は、まだ国際化しておらず、固定的な通貨制度を採用している。しかし、人民元建ての貿易決済もスタートし、人民元建て債券の発行もスタートした。政府間では通貨スワップ協定が多数結ばれている。また、近隣諸国との間では人民元の紙幣の流通がスタートしてきており、徐々に広がりつつある。このような進め方は、通貨経済学からすると、きわめて合理的かつ戦略的である。しかし、いくら経済規模が大きいからといっても、国際通貨になっていない人民元がすぐに基軸通貨になることには無理がある。しかし中国当局は、人民元の基軸通貨化に向けて、着実に布石を打っている。
・通貨統合には地域経済協力がベースとなる。アジアの経済統合はASEANが中心に進んでいる。ASEANをコアにして、さまざまな地域協力が進展している。チェンマイ・イニシアティブなどの金融協定は、ASEAN+3をベースにしている。東アジア首脳会議(サミット)は地域の政治・経済問題を協議する会合であり、ASEAN+3にオーストラリア、ニュージーランド、インドを加えたASEAN+6の16カ国で構成している。この延長線上に東アジア共同体構想もあった。あらにASEANは、東アジアサミットに米国とロシアを加え18カ国の枠組み構築を目指す。この場合、構成国の8割がAPEC(アジア太平洋経済協力会議)のメンバーと重複する。こうなると、東アジアの地域協力から経済統合、そしてその先にあると仮定される共通通貨の可能性も薄まることとなる。
・電子マネーは、日本独自の決済手段といえる。欧州では銀行口座から引き落とされるデビットカードが主流で、かつて流通していた小切手の代替と考えられる。米国ではクレジットカードが多い。日本で電子マネーが使われるのは現金志向が根強いためと考えられる。
・中国の銀聯カード(Union Pay card)が日本で普及し始めている。2002年設立の上海に本部がある中国銀聯(China Union Pay)が手掛ける人民元カード。中国では銀行預金カードにあたり銀行に口座をつくると発行され、40億枚以上発行されている。クレジットカードもあるが、主としてデビットカードで、世界140カ国・地域で利用できる。日本でも百貨店各社が中国人旅行者のために対応している。ネットワークはクレジットカードのネットワークを使う。
・ビットコインは2009年に登場した仮想通貨である。仮想通貨とは、いわゆある種の「国のない通貨」で発行量はすでに円換算で1兆円を超えたといわれる。中央銀行や金融当局の規制に縛られず、インターネットを通じて世界中に瞬時に送金できる。経済活動がグローバル化する中で、新たな需要を取り込んだが、違法取引の防止や利用者の保護では多くの課題を抱える。ビットコインは各種の通貨をデジタルに扱っているのではなく、それ自体が資産としての価値を持つ。各地にある専門取引所でドルや円と引き替えに、ビットコインを購入する。取引価格はその時どきの需要によって変わる変動価格であり、投機的性質も備える。ビットコインはネット上を転々とする一種の「数式」であり、通貨と呼ばれるだけに、高度な暗号技術を使って複製が防止されている。ビットコインはプログラムで流通量の上限が決まっているだけなので、購入する人が増えるだけ価値が高まる。その意味では、通貨というよりは金に似ている。また、非常に複雑な数式を解けば自分でビットコインをつくり出すこともできる。これを「マイニング(発掘)」という。ネット上を自由に行き交うことができるため、世界中に送ることが可能である。銀行を介さないため、手数料はほとんどかからない。端末同士が直接通信し合うピア・ツー・ピア(P2P)方式で行う。匿名性を持ち、その特徴ゆえに違法取引やマネーロンダリング(資金洗浄)の温床になりやすい。金融機関のネットワークを経由しないため、補足が難しい。
良かった本まとめ(2014年下半期)
<今日の独り言>
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