《謝罪と訂正》
昨日のブログ――《安倍晋三の「侵略や植民地支配を否定したことはない」は肯定しないための狡賢い言葉の詐術 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》の最後の方で、「決して否定=肯定とはならない」と書きましたが、「決して否定しない=肯定とはならない」の間違いでした。謝罪します。
――ウクライナの領土と主権と国民の分断・侵害に目をつぶることができる安倍日本の対ロシア経済・資源外交継続――
今回の2月下旬親露派ヤヌコビッチ政権崩壊のウクライナ政変を受けて、ロシアが3月4日、ウクライナのクリミア自治共和国を軍事制圧したマスコミが伝えている。2月下旬にロシアに亡命したヤヌコビッチ大統領が3月1日付の書簡でロシアに軍事介入要請をしていたが、欧米諸国の強い警告を無視した軍事行動である。
本人は解任を認めていないものの、解任され、ロシアに逃れた大統領の亡命地での要請はロシアの管轄権が及ばないクリミアでの如何なる行動に対しても効力を与えるはずはない。
だが、ロシアは軍事行動を起こして、クリミアを制圧した。クリミアがいくらロシア系住民が6割を占めていて、クリミア住民を保護する名目を掲げたとしても、ウクライナの暫定政権の要請を受けた行動ではない以上、その正当性はなく、ウクライナの領土と主権と国民を分断・侵害する国際法違反に他ならない。
ヤヌコビッチには報道弾圧や多数の市民殺害、国費乱費の疑いも出ている。
欧米諸国は3月7日(日本時間8日)開幕ソチ冬季パラリンピック式典への政府代表者非出席、6月ソチ開催予定G8サミット準備作業への参加中断の方針等の外交的制裁やロシア経済に打撃を与える経済的制裁、あるいは政治的制裁を検討している。
では、我が日本の安倍晋三積極的平和主義外交の対応策を見てみる。
3月3日昼の政府・与党連絡会議。
安倍晋三「平和的解決を期待する。ウクライナの主権と領土の一体性を強く求めている」(時事ドットコム)
ロシアに対して自制するよう呼び掛けを強める方針だと同記事は伝えている。
同じ3月3日昼の政府・与党連絡会議の安倍晋三の発言を伝える記事。
安倍晋三「全当事者が自制と責任を持って慎重に行動し、関連国際法を順守すること、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重することを強く期待する」(ロイター)(下線個所解説体を会話体に治す)
だが、次の記事を見ると、「ウクライナの主権と領土の一体性」の尊重は言葉だけで、我が日本の安倍晋三積極的平和主義の政治哲学からしたら、ロシアのクリミア自治共和国への軍事介入はウクライナの領土と主権と国民を分断・侵害する国際法違反だとは映っていないようだ。
《政府 ロシア非難の足並みそろえるも対話は継続》(NHK NEWS WEB/2014年3月4日 5時43分)
記事冒頭解説。〈緊迫するウクライナ情勢を巡り、政府は、ロシアを非難する 欧米諸国と足並みをそろえる一方、北方領土交渉の進展などをにらんで、経済面での協力をはじめとしたロシアとの2国間の対話は引き続き継続したいとしています。〉――
〈政府は3日、アメリカなどと足並みをそろえ、G7=先進7か国の枠組みで、ロシアがウクライナの主権を侵害していると非難したうえで、ロシアのソチで予定されているG8サミット=主要国首脳会議の準備作業を当面中断するとした首脳声明を発表しました。〉
3月3日参議院予算委員会。
安倍晋三「平和的な手段で解決されることに期待したい。すべての当事者が国際法を順守し、ウクライナの主権と領土の一体性を尊重するよう求める。
ロシアとの2国間の関係については、プーチ ン大統領との個人的信頼関係をてこに、外相や外務次官級の政治対話を推進し、北方領土問題の解決に向けて平和条約の締結交渉を加速したい」(下線個所解説体を会話体に直す)
記事末尾解説。〈政府は、日ロ双方の閣僚や企業経営者らが出席して今月東京で開かれる「日ロ投資フォーラム」を予定どおり開催する方向で準備を進めるとともに、来月に予定されている岸田外務大臣のロシア訪問も今の時点で変更はないとしています。
このように政府はウクライナ情勢を巡って、アメリカなど欧米諸国と足並みをそろえる一方で、ロシアとの2国間の対話は引き続き継続したいとしています。〉――
要するにロシア非難の足並みは欧米諸国と揃えるものの、経済制裁や政治的制裁は一切行わないことを早々と宣言した。
当然、欧米諸国と足並みを揃えたロシア非難は実体を伴わない言葉だけとなる。
ウクライナの領土と主権と国民の分断と侵害の危険性を考えない自国国益だけを考えた安倍晋三の積極的平和主義外交は一国平和主義を正体としていることになる。
この安倍晋三の積極主義的平和外交が正体としている一国平和主義に内閣の一員として茂木経産相が同一歩調を示している。3月4日閣議後記者会見。
茂木経産省 「これからも事態を注視するが、今のところロシアとの間における経済外交や資源外交に方針変更はない。現時点でウクライナで邦人や日本企業に何らかの被害が出ているという報告は受けていない」(MSN産経)
ウクライナ在住の日本人や日本企業しか視野に入っていないらしい。
この記者会見がロシアがクリミアを軍事制圧する前に行われたとしても、既に見せていたロシアの軍事介入の構えがウクライナの領土と主権と国民を分断・侵害する危険性を日本の閣僚として予測していなければならなかったことを考えると、安倍晋三の積極的平和主義外交と同様に自国のことだけを頭に入れた一国平和主義の観点に立った発言としか映らない。
安倍晋三はいくら北方四島問題を抱えていたとしても、日本は制裁グループには属さないよ、制裁の実体化は行わないよとロシアに対してシグナルを早々と送ったのである。
当然、ロシアのクリミアに対する軍事行動も、ウクライナの領土と主権と国民の分断・侵害の危険性も考慮していなかったことになる。
安倍晋三「自由や民主主義、人権、法の支配の原則こそが、世界に繁栄をもたらす基盤である、と信じます。日本が、そして世界が、これからも 成長していくために、こうした基本的な価値を共有する国々と、連携を深めてまいります。
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国際協調主義に基づく積極的平和主義の下、日本は、米国と手を携え、世界の平和と 安定のために、より一層積極的な役割を果たしてまいります」(186回国会安倍晋三施政方針演説/2014年1月24日)――
何と虚しく響く一国平和主義だろうか。