安倍晋三東日本震災3周年記者会見で言った被災地の「縦割りを排した現場主義」は機能していなかった

2014-03-16 06:50:27 | Weblog



 3月10日のあさひテレビ『たけしのTVタックル』は、「震災3年・・被災地の声を聞け! 安倍政権に怒りの直談判SP」と題して、復旧・復興に名を借りたムダな公共事業が行われているとの批判を繰り広げていた。

 私は確かにムダはあるだろうが、そこにタテ割り行政を見た。

 但し安倍晋三は3月10に行った震災3周年を迎えるに当たっての記者会見でタテ割り否定している。

 安倍晋三「総理に就任以来、13回にわたり被災地を視察いたしました。昨年春ごろはあちこちで用地確保が難しいという切実な声がありました。特に、いつ、何戸の住宅が再建されるかの見通しも全く立っていませんでした。

 こうした中、安倍内閣におきましては、省庁の縦割りを排しながら現場主義を徹底し、政府一丸となって加速化に全力をあげました。被災地 の抱える課題は制度面、執行面、多岐にわたります。現場主義で用地取得手続の迅速化、そして自治体へのマンパワー支援などきめ細やかに対応してまいりました」――

 全て過去形となっていて、現時点までの責任を果たしたと言い切っている。

 果たして言っているように「省庁の縦割りを排した現場主義」は徹底されたのだろうか。

 番組からはブログ記事に必要な箇所のみを抜き出して、簡略に見てみる。

 復旧・復興に名を借りたムダな公共事業の例として、いくつかの公共事業を挙げている。

 1.宮城県気仙沼市小泉地区の3枚の防潮堤

 一番内陸側の防潮堤は住民を守るためを目的として建設、中間の防潮堤は国道を守るためが目的、海側沿岸部の防潮堤は農地を守るため。

 だが、小泉地区の住民は全て高台移転を決めていて、無人化するから、ムダな復旧事業だとしている。

 2.宮城県松島湾に浮かぶ無人島に防潮堤

 20億円の防潮堤建設予算。

 無人島の近くの男性住民「ホンネで言えば、目の前の復興が進んでいない中で、日々の生活を精一杯頑張っている中で、誰も使っていない無人島に20億もかけて直すというのは腹立たしい限りですよ。我々弱者を愚弄しているような、こんなふうに受け止めました」

 解説「住民の反対を受けて、県は見直しを含めて検討中」

 番組出演の臼井壯太朗宮城県気仙沼市遠洋漁業会社社長の発言。

 臼井壯太朗社長「最初にやって貰いたいのは先ずは防潮堤ではなくて、生活の再建と産業の復興なんです。防潮堤建設に住民が合意しないと後の街はつくらないという感じになっている。街づくり自体が人質になっていて、そんなに大きな防潮堤は必要ないし、(建設に)合意したくないが、それをしないと街が前に進まないというので、内陸部に済む方々は早く防潮堤を造ってくれという人もいるし、それをわざと狙ってやっているのか・・・・」

 3.宮城県石巻市大川地区農地復旧事業

 約413ヘクタールの大川地区農地が津波に呑み込まれて、現在も巨大な塩水湖化している。

 復興交付金17億1300万円+農地等災害復旧事業費95億7600万円――合計112億8900万円の事業費。

 地元男性農業者「私たちは工事を望んでいない。専業農家は殆どいない。殆どが兼業農家で、収入の大半は農業以外での収入。{農業機械など)全部流された。新しく設備を整えてやると言ったら、誰も復旧されても困るという考えが殆ど。

 だったら、メガソーラ、風力発電でもいいし、総合飛行訓練場でもいいじゃないですか」

 大川地区農家533戸(1997年時点)
 専業農家26戸
 兼業農家507戸

 前出の男性。

 地元男性農業者「正直、こうした海と化した所にどんなにいい土を盛ったとしても、その下が砂浜の土ですから、いい作物を採れるまで何百年もかかると思う。育たないですね。例え農地が復旧したとしても、農業をやる気はない。ですから、(国が農地を)買って頂けるんでしたら、売りたいというのが現状です」

 解説「再び農業をするのはリスクが高い。殆どの農家の方が耕す気がないという大川地区の農民。国が誰のために何のために113億円というおカネをかけ、農地を復旧させようとしているのか」
 
 自民党衆議院議員・前復興副大臣・東日本大震災復興特別委員長。

 秋葉賢也「ここ(大川地区)は被災直後のアンケートで9割の人が続けたい、自作したい、誰かに委託したいと、受託生産して欲しいというのが一番多くて、75%。県がやったアンケートでそういう報告が私たちの所に来ているんですよ。殆どの人が受託生産したいということで。

 これは発災(平成)23年の6月に県がやったアンケートで、受託生産で続けて欲しいんだという声が県に届いている」

<align="center"<p>調査票

 水田として利用する場合

 水田として利用する場合の取り組みについて該当するものを◯で囲んでください。

 1.自作する   16人
 2.担い手、認定農業者に委託 86人
 3.その他 12人

 ・組合で運営 ・法人組織 ・復旧が早ければ自作する ・共同など 
 ・国の買い上げ 

 計114人

 番組はこの割合をパーセントで表している。

 自作する14%
 担い手に委託する75%
 その他11%
 
 解説「自作する14%と担い手に委託する75%合わせて90%が農地の復興に前向きとされた。

 県が地権者の要望があったとして、復旧工事を進めている」

  宮城県石巻市大川地区復興協議会事務局長。

 濱畑幹夫「調査票来たのは分かっていた。私が聞くと皆んな売りたいと言っている」

 ビートたけし「土をかぶして農作物ができるかどうかのテストぐらいすべきではないか」

 地元男性農業者が「正直、こうした海と化した所にどんなにいい土を盛ったとしても、その下が砂浜の土ですから、いい作物を採れるまで何百年もかかると思う。育たないですね」と言っていることも、ビートたけしの発言も、その言葉の証拠能力は浅瀬に土を盛って農地とした諫早湾干拓事業が否定することになる。

 全員が高台移転を決めていて、無人化する小泉地区にしても、農地として復旧した場合、通いで農業ができることになるから、一概にムダな公共事業だとは言えない。

 問題の一つは石巻市の大川地区農家に対するアンケート調査が彼らの運命が急変して、今後の運命に対する知識が十分に固まっているとは思えない発災から3カ月後の早い段階に行われたことである。時間の経過によって心理的に落ち着き、他の者の意見などを聞いて考えが変わった者もいるはずである。

 次の問題点は、番組は1997年時点の統計として、大川地区農家は専業農家26戸、兼業農家507戸、合計して533戸と紹介しているのに対して、アンケート調査は計114戸を対象としているに過ぎない。

 1997年時点の533戸が2011年6月時点で津波等の被害を受けて多くの死亡者を出して114戸に減ったというわけなのだろうか。

 だとしても、死亡者の全員が全員、土地を相続する者がいないということは考えられないから、相続者の意見も聞かなければならない。例え相続者の殆どが「担い手、認定農業者に委託」を選択するだろうと予想できたとしても、統計を推計で行うのはその確実性を失わせることになる。

 この二つの問題点を百歩譲って正当性を与えるとしても、アンケートには何年で復旧工事が終了して、何年後から農業を開始できるか、国が買い上げる場合の単価は2011年3月11日以前の土地価値に対して何割程度になるのか、委託生産の場合の土地貸付金や収穫農産物の取り分等の契約はどうなるのか、具体的な計画が何一つ含まれていない。

 もし具体的な計画を示していたなら、農業開始が可能であるという知識を得ることができて、「いい作物を採れるまで何百年もかかる」などといった発言は出てこないだろうし、ビートたけしの発言もないことになる。

 さらに言うと、どの地区にしても後継者不足・高齢化は免れることのできな状況となっているはずだから、自身の年齢や後継者の有無が影響する問題でただ単にアンケートを取るだけではなく、将来的な具体的な計画表を示されなければ、信頼の置ける進路の選択はできなはずだ

 だが、宮城県は具体的な計画表を示した上での地元住民の意向確認を省いて、簡単なアンケート調査を以って住民の意思だとして国に事業を申し出て、国はその報告を受けて、県の報告通りに事業を許可した。

 とう言うことは、安倍政権は復旧・復興に必要な役人を各省庁から復興庁に集めて情報の一元化・意思決定の一元化を図ることでタテ割りを排し、現場主義を徹底させることで地元要望を正確に吸収・把握するとしているが、タテ割り排除は復興庁の中だけのことで、復興庁と県・市町村との間には、そこに地元住民の声が入ってこない構造のタテ割りが厳然として存在していだけではなく、県・市町村が態度とすべき現場主義に関しても地元住民の声を正確に把握し切れていなかった点に於いて実際的で正確な現場主義を採用できていなかったことになる。

 だから、宮城県は松島湾に浮かぶ無人島の防潮堤建設を見直しを含めて検討しなければならなくなったし、安倍晋三も国会答弁で防潮堤の高さ等の見直しをする発言をせざるを得なくなった。

 安倍晋三の「縦割りを排した現場主義」は偉そうに言う程には実際には機能していなかったのである。

 これでは「総理に就任以来、13回にわたり被災地を視察」は全く以ってクソの役にも立たなかったことになる。

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