籾井勝人NHK会長の全理事に対する日付欄空白辞表提出強制は人格権の侵害であって、会長の資格はない

2014-03-20 10:05:28 | Weblog



 籾井勝人NHK会長を辞任に追い込むにはNHK会長としての資質も資格もないことを、本人がいら否定しようと世間に的確に知らしめることであるはずだが、3月19日(2014年)の参院予算委員会での徳永エリ民主党議員の籾井会長に対する辞職を迫る追及は肝心のことから離れたどうしょうもない、お粗末な追及でしかなかった。

 徳永エリの追及は要旨のみを記し、籾井会長と安倍晋三の答弁はそのまま伝える。

 徳永エリ「籾井会長の1月25日の(就任)記者会見からもう2カ月になろうとしています。いつまでもこの問題を引きずり続けるのでしょうか。もうそろそろご自身で決着をつけたほうがよろしいんじゃないでしょうか。如何でしょうか」

 辞めるつもりもない相手に糠に釘でしかない質問であることに気づいていない。

 籾井勝人「えー、私も一日も早く決着がつくといいと思っていますが、あー、そのオプションは私にはないと思っています」

 この答弁に対して、当然、いや、あなたはNHK会長の資格も資質もないんですよと、資格問題・資質問題として論理的な取り上げ方をしなければならないはずだが、論理的であることから遠く離れた情緒的な対応となっている。

 徳永エリ「ご自身で決着がつけられないということですか」

 籾井勝人「えー、本当に私個人としては、一日も早くこの問題を収拾できればと思っていますが、残念ながら、私自身が収拾するわけにはいかないわけでございます。ただ私自身、業務に全力を上げることに会長としての責務を果たし、公共放送の使命に基づいてよりよい放送とサービスを視聴者の皆さんにお届けしたいというふうに思っています。

 その結果がNHKの信頼回復につながるというふうに思っています」

 馬の耳に念仏とはこのことだろう。

 徳永エリ「もう収拾する方法は一つしかないと思っています。お辞め頂きたいと思います」

 辞めるつもりはさらさらない相手にただ単に「お辞め頂きたい」と迫るのは滑稽でしない。

 籾井勝人「えー、NHK会長の重みはしっかりと受け止め、放送法に基づいて公共放送の使命を果たしていくということで、会長としての責任を全うしてまいります」

 徳永エリ「お辞め頂きたいと失礼な言い方をしたのは国の未来を変えるような集団的自衛権の行使など議論がある中で報道が偏っては困るからだ。そこで安倍総理に伺うが、籾井会長はNHK会長としてふさわしいのか、会長を続けてもいいと考えているのか」

 安倍晋三「放送機関のトップの個別の発言についてですね、えー、また、そのトップが辞めるとかについてですね、政府としてコメントすべきではないとこのように考えております。会長は経営委員の規定によって適切に選任されているものでございます。

 NHKについてその信頼性をさらに向上させるよう、社会的信頼を担う公共放送についてですね、会長以下、役職委員が力を合わせて、自主・自立のもと豊かで良い放送番組による放送を期待しております」

 資格・資質についての具体的な追及ではないから、一般論で逃げられることになる。

 徳永エリ「記者会見以来、NHKに何件の苦情が寄せられているのか」

 籾井勝人「本日現在の数字については私は正確には持っていませんが、3万件を超える意見があると聞いております」

 徳永エリ「しっかりと把握して重く受け止めて貰いたい。約32700件寄せられていて、そのうち21100件が批判的な意見で、その中で受信料に言及した意見は何割かご存知か」

 辞めるつもりもない人間はそんなことは気にもしていない。蚊に刺された程の痛みも感じていないといったところだろう。

 籾井勝人「個々の数字につきましては色んな意見が混じっておりますので、そういうふうなキメの細かい数字は取っておりません」

 徳永エリ「NHKはちゃんと統計を取っている。受信料に言及した意見は全体の3割。年払いの解約の電話が殺到し、局内では不払い運動につながるのではないかとの懸念が広がっているという報道もある。このままでは受信料収入に大きな影響が出るのではないのか」

 籾井勝人「えー、お答え致します。やはりですね、こういう状態が続けば、もしかしてそういう影響があるかもしれませんが、私自身は、今後ですね、各地方を回りながら、私自身も営業に全力を尽くし、営業の人に任せるのみならず、努力を続けていいくつもりです」

 年払い解約の状態が続けば、“当然”影響が出るとするのではなく、「もしかして」影響が出ると他人事とすることのできる神経の持ち主である。

 徳永エリ「NHKの現場や受信料収納業務の職員はどんな思いをしているか。心が傷まないのか」

 心が傷まないから、NHK会長でございますと鎮座していられる。そういった人間に「心傷まないか」と尋ねる。

 籾井勝人「えー、お答え致します。受信料の収納については先程申しましたけど、私も含めて職員一丸となってやりますが、同時に職員の問題につきましては、私は、今は各現場を回っております。職員は一生懸命仕事をしてくれております。(ざわめきが起こり)いや、そのとおりでございます。

 まあ、中にはこういうことで志気が上がらないという人もいるかもしれませんが、えー、やっぱり職員全体としては一生懸命やって貰っていると思います。同時に私自身はですね、そういう心配をする職員がいることに対して非常に私自身も申し訳なく思っているわけでございます。本当に一生懸命やってくれておりますので、これから先、今から先、さらに頑張って参りたいというふうに思っております」

 職員が頑張っていることに主体を置いている。つまり志気に関しては影響なしとしている。

 徳永エリ「とても心が傷んでいるとは思えませんね。実はわたしは100人にアンケートを取った。12月8日の北海道釧路で女性国際デーの催しが開かれた公園と翌日の中標津酪農家の集まりで意見交換したときのアンケートで、会長は辞任すべきだと思うかの質問に87人が辞任すべきだと答えた。

 自由記述欄には『今回のことだけではなく、会長として失格』、『安倍さんのお友達人事で、安倍さんは信頼を失った』、『銀座のクラブのママに放り出された話は有名』等々。総理はアンケート結果についてどう思うか」

 安倍晋三「先程の世論調査風の数字の結果はですね、統計学的には何の意味もない、だろうと思います。後者(自由記載)については、徳永さんのいわば後援会みたいなところで聞いたんじゃないんですか。後援会の皆さんに集まって頂いたんでしょう。

 でも、私は全く私は意味がないんだろうと、このように思・・・・。(ヤジが起こる。)」

 午前は時間切れ。午後再開。

 徳永エリ「総理からこのアンケートは何の意味もないという発言があった。この問題は看過できない。私たちは選挙で国民に選ばれて、国民の負託を受けて国会で働いている。どんな形であれ、国民の声をしっかりと届けるのが私たちの国会議員の仕事であり、民主党の責任だと思っているので、今後しっかりとやらせて頂きます」

 TPP問題に移る。

 いくら国民の声を届けるのが国会議員の務めだからと言って、その声は合理的な妥当性を持たなければならない。

 徳永エリの追及は最初から最後まで合理性を欠いた情緒的追及で終わった。100人人アンケートで籾井会長は辞任すべきだと思うが87人の87%であるなら、NHKに寄せられた苦情が約32700件で、そのうちの批判的な意見21100件、約65%と比較した場合、意見聴取の場所や集まりの性格の影響は受けるが、一定程度相互反映する関係にあることから、最初にアンケートを取った女性国際デーの催しではより多く集まった女性の意見に偏っていたとしても、あるいは中標津の酪農家の集まりでは森永エリに近い立場の意見であったこしても、そのことをタップリと差し引いたとしても、NHKの批判的な意見約65%とより遥かに下の反応とすることはできないことになり、決して「統計学的には何の意味もない」と無視することはできないとより合理的に反論できなかったのだろうか。

 もしNHKの批判的な意見の約65%よりも遥かに下の数字だとしたなら、相互反映の関係を崩すことになり、NHKの批判的な意見自体を「統計学的には何の意味もない」とすることになり、いくら安倍晋三や籾井勝人が図々しい人間であったとしても、それはできないはずだ。

 各報道機関の世論調査にしても、一定程度の相互反映の形を取るから、各社とも似通った数字を取ることになる。

 籾井勝人に関しては問題としなければならないのはやはりNHK全理事に対して日付欄空白の辞表を強制的に書かせたことにあるはずだ。

 日付欄空白の強制的辞表堤出は、何かあったら辞職して貰いますよという辞職の可能性の提出者への伝達であろう。

 但しその何かとは放送法が決めている。

 NHKの会長の罷免権行使が許されるのは放送法第31条第3項各号のいずれかに該当するケースとしている放送法第54条の規定に基づくか、第55条に規定する、「副会長若しくは理事が職務執行の任にたえないと認めるとき、又は副会長若しくは理事に職務上の義務違反その他副会長若しくは理事たるに適しない非行があると認めるときは、経営営委員会の同意を得て」罷免行使が可能となる。

 第31条第3項各号は次のようになっている。

 一 禁錮以上の刑に処せられた者

 二 国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者

 三 国家公務員(審議会、協議会等の委員その他これに準ずる地位にある者であって非常勤のものを除く。)

 四 政党の役員(任命の日以前1年間においてこれに該当した者を含む。)

 五 放送用の送信機若しくは放送受信用の受信機の製造業者若しくは販売業者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを 問わずこれと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。以下この条において同じ。)若しくはその法人の議決権の10分の1以上を有する者(任命の日以前 1年間においてこれらに該当した者を含む。)

 六 放送事業者、第152条第2項に規定する有料放送管理事業者、第160条に規定する認定放送持株会社若しくは新聞社、通信社その他ニュース 若しくは情報の頒布を業とする事業者又はこれらの事業者が法人であるときはその役員若しくは職員若しくはその法人の議決権の10分の1以上を有する者

 七 前2号に掲げる事業者の団体の役員

 4 委員の任命については、5人以上が同一の政党に属する者となることとなってはならない。.(以上)

 放送法第54条が規定している第31条第3項各号に於ける能力・資質の不適格性は一の「禁錮以上の刑に処せられた者」と、「国家公務員として懲戒免職の処分を受け、当該処分の日から2年を経過しない者」のみが該当して、後は身分の線引きの問題である。

 上記二つの不適格性は第55条が規定する職務執行に於ける能力不足や職務上の義務違反、役職に相応しくない非行等の不適格性と重なる。

 いわば資質・資格を不適格と看做す合理的理由の存在を前提として初めて「経営委員会の同意を得て」初めてNHK会長は理事等を罷免することが可能となる。

 だが、籾井勝人は不適格と看做す合理的理由の存在なしに、いわば合理的理由がまだ発生しないうちから、発生を前提としたことになり、さらに罷免は経営委員会の同意が必要でありながら、辞表を提出させたことを経営委員会員に伝えもせずに理事全員に対して日付欄空白の辞表を提出させた。

 このことについて2月26日(2014年)の当ブログ記事――《籾井会長の全理事に対する日付欄空白辞表提出強制の権威主義性も問題だが、理事全員提出の無条件従属も問題 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に次のように書いた。

 〈「NHKの経営委員会によって任命される会長は、理事を罷免する権限を持っているが、それは職務義務違反などがあった場合に限られる」と「FNN」 が解説している。

 ということは、籾井会長が理事全員に対して日付欄空白の辞表提出を強制したことは「職務義務違反」等の理事自身の不適格性を基準としない、慣例にはない提出の強制となる。

 もし「職務義務違反」 等の理事自身の今後現れるかもしれない不適格性を考えて堤出を強制したとしたら、確かに不祥事を起こしそうでない人間が不祥事を起こして考えられない不適格性を示すこともあるが、前以て不適格性が現れそうだと理事に採用しているわけではないから、今後現れ得る不適格性を考えての辞表堤出は人格・人柄を理由もなく、あるいは根拠もなく疑ったことになって、人権問題に発展する。

 当然、不祥事等の不適格性を基準 としない堤出の強制だったことになる。〉――

 このブログ記事を書いたときには触れなかったが、この人権問題とは個人の人格的利益を保護する人格権の侵害に当たるはずだ。

 現時点で資格・資質上何も不適格なことを侵したわけではないそれぞれの人格に対してNHK会長として放送法が規定する罷免可能範囲内の不適格性を想定した辞表を準備させたことになるからだ。

 まさしく人格権の侵害となるはずだ。部下に対して人格権の侵害を犯すような人間がNHK会長を務める資格はない。

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