菅無能前首相が「日本再生が東日本の復興を支え、一方では東日本の復興が日本の再生の先駆けとなる」と菅内閣の一つの大きな責任としたように、野田首相は「福島の再生なくして、日本の再生なし」と自らの内閣が成すべき責任の主たる一つとした。
勿論断るまでもなく、この「福島の再生」とは東日本大震災被災地全体の再生を含めて言っているはずであるし、含めていなければならない。そして日本全体の再生は被災地全体の再生を含めているということであろう。
すべては政府の責任と主導のもと展開される日本全体に亘る再生・復興であるということも断るまでもない。再生、あるいは復興に向けて各自治体を如何に動かすかに関しても、偏に政府の責任とリーダーシップにかかっている。
いわば再生・復興の使命と最終責任を負うということである。
しかしである。2011年7月31日当ブログ記事――《安住の中央集権国家であることとそれゆえの責任の大きさを忘れた口汚い被災首長批判 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いたことだが、被災地衆院宮城5区選出の当時の安住淳民主党国会対策委員長はこのことを自覚しておく責任を有していない発言を7月30日(2011年)出演のテレビ番組で行なっている。
しかも現在財務相となった安住は昨日(2011年11月9日)の衆院予算委質疑でも再度自覚責任を欠く答弁を再度行なっている。政府の責任とリーダーシップに関わる自覚責任の変わらない欠如は体質化していることを示し、当然大臣としての資格を欠いていることの証明としかならない。
上記ブログに書いた7月30日(2011年)のテレビ東京の番組に出演したときの発言を再度取り上げてみる。
安住淳民主党国会対策委員長「『知事は頑張っている』と言うが、仕組みが違う。自治体の首長は都合がいい。増税しないんですから。国からお金をもらって自分は言いたいことを言い、できなかったら国のせいにすればいい。『増税も無駄の削減も国会議員がやれ』と、立派なことは言うけど泥はかぶらないという仕組みを何とかしないといけない。
(被災地の有権者に対して)家、財産、家族がなくなった人は不満は持っているが、だからといって『全部国会議員が悪い』というのは感情的な話だ」(asahi.com)
安住淳民主党国会対策委員長「地元では『ハエが大きくなったのもお前のせいだ』と言われることもある。被災者のストレスが私に来て、私のストレスが首相に行く。みんな首相が悪いというのは首相もかわいそうだ」(毎日jp)
例え党の一役員であっても、再生・復興のリーダーであり、最終責任者たる首相及びその内閣と協力関係にある立場にありながら、そのことの自覚責任を欠いて、国として地方を動かすことができない自らの無能を棚に上げ、被災地の知事を批判している。
では昨日(2011年11月9日)の衆院予算委での江田憲司みんなの党幹事長の質問に対して再度自覚責任を欠いた安住財務省の発言を見てみる。
江田憲司議員「えー、震災から7ヶ月、まあ、やっと本格的な補正予算、えー、提出をされました。本当に遅すぎると、私は思っていましたところですね、あのー、先日、うー、看過できない記事が目につきましたので、まあ、冒頭これについてお伺いしたいと思います。えー、パネルをご覧頂きたいのですけれども、これは、10月25日の朝日新聞朝刊、オピニオン欄というところにですね、まあ、前の総務大臣の片山善博さん、こういった、あのー、一面の、おー、デカデカとした記事が載っておりまして、そこにですね、あのー、驚くべきことが書かれているのですね。
あのー、ちょっと読ませて頂きます。パネルで」――
パネルに、「復興=増税 財務相の言いなり 片山善博前総務相 10/25 朝日新聞」の文字が最初に書いてあり、片山前総務相の発言のいくつかが書き入れてある。
この記事の正確な題名は、「改革の一丁目一番地」はどうなった? 野田さんは「分権お休み中」で、2011年10月28日の当ブログ記事――《野田首相の“安全運転”とは官僚運転の車に乗って行先きまで任せることなのか - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》で既に取り上げている。
以下の発言は文字化を横着して、江田憲司公式サイト・コラム欄《日々是好日》の記事題名――「復興を人質に増税が決まるまで補正を遅らせた・・・片山前総務相の内部告発」から採った。
江田憲司議員「『私第3次補正予算をを早く決めましょうと言い続けたが、財務省が震災を機に増税をすることにこだわって進まなかった』
『復興のためなら国民も増税に応じるはずと復興を人質にとった』
『復興の遅れを菅さんの6月2日の辞意表明以降の政治空白のせいにする人がいるが的外れだ。真の原因は、財務省のヘンテコな論理(野田さんが代弁)を菅さんがとがめなかったところにある』
『多くの与党議員が財務省にマインドコントロール。メディアも同じ』
『救急病院に重篤な患者を運び込まれているのに、治療費の返済計画を家族が提出するまで待ておくよなもの。異様、世の中がこれを異様だと言わないところがまた、異様』――
まあ、こういうことが、オー、インタビューで書かれているわけです。
先ずですね、名指しをされた財務省、主計局長、来られていると思いますので、これに対して何か反論があれば、お願いします」
真砂靖財務省主計局長「えー、委員の、おー、引用されました部分のご指摘は全く当たらないというふうに思います。私共、あの、3月11日の大震災以来、えー、政府の方針に添いまして、えー、予備費の積極的な活用、それから、第1次補正予選、第2次補正予算、そして今回ご審議いただいています第3次補正予算の編成に職員一団となって全力で、エ、取り組んできたつもりでございます。
あの、今後共、所掌事務を、遂行に万全を期していきたいと、いうふうに思っております」
江田憲司議員「まあ、当局としてはそう言わざるを得ないですよねえ。ただ私も、片山善博さんという方を、存じ上げております。けれども、まあ、改革派知事としてですね、あの、鳴らされ(ある優れた能力によって評判を取る」意味の「鳴らす」を言ったのだと思う。)、まあ、総務大臣として入閣をされた。
まあ、私としても嘘をつくとは思えないんですね。これはもう財務省の幹部、責任問題ですよ。こんなに被災地、被災民の方を愚弄することをはありませんよね。
要は、そのー、復興を人質に取って増税に拘り、補正予算の提出を遅らせたと、おっしゃってるわけですから、これに対して是非ですね、当事者であった野田総理にですね、お聞きしなければなりません」
江田議員は上記公式サイト・コラム欄の《日々是好日》で、「野田首相らがそうじゃないと言うなら、片山善博さんの方が嘘をついていることになる。いずれにせよ看過できない大問題だろう」と書いていて、片山氏の発言を事実と取る立場からどちらが事実なのかを明確に求めているのだから、財務省主計局長が「ご指摘は全く当たらないというふうに思います」と答弁したことに対して、「では片山善博さんが事実でないことを喋り散らかしたということなのですか。つまりウソを並べ立てたと」といったふうになぜ問い返さなかったのだろうか。
多分、主計局長は「どのような意図でそのような発言をされたのか、私には分かりません」と逃げるだろうが、「意図が何であれ、ウソ発言ということになる。片山氏はウソつきだということになる」と、片山氏をさも人格的欠陥者に仕立てているというふうに問題を大きくすれば、面白い展開となったのではないだろうか。
野田首相「増税をしたくて復興を遅らせたってことなんてあり得ないことであります」
ここでも江田議員は、「では片山善博さんがウソを言ったことになるということですか」と問い質すべきだったが、そうしなかった。
江田憲司議員「本当は今日ですね、片山善博さんに、ご本人に参考人、お呼びしたかったんですけれども、残念ながら、民主党が反対で、実現しませんでした。(声を大きくして)是非、委員長。これはですね、重大問題です。責任問題ですよ。是非委員長、あの、参考人招致を片山善博さんにお願いいたします」
中井洽委員長「理事会で検討を致しました」
過去形を用いたのは検討し終わって、既に片付いた問題だと言ったのだろうか。
江田議員は片山氏の参考人招致を考えていたなら、「では、どちらが事実でないことを言っているのか、片山さんをここに呼んでシロ・クロをつけてもいいんですね」と迫り、相手が承知したなら、こちらの戦いに引き込むことができるし、ガチンコ対決はなかなかの見物(みもの)となるはずである。
例え反対されて、その反対が最終的に成功したとしても、何度もしつこく求めて相手の反対を繰返させたなら、心証として参考人招致が実現した場合の相手の都合の悪さを浮き立たせることができるはずだ。
江田議員はそれ以上追及せずにみんなの党の「増税なき復興」の主張に入っていく。大きなパネルを用意した。
増税なき復興 みんなの党の復興財源案(10年間)
総計80兆円+α
(1)国会議員 国家公務員の人件費カット 計10.0兆円
(2)日本郵政株式(郵貯・簡保)の売却複数年 計8.0兆円
(3)JT株の売却 計1.8兆円
(4)政投銀株式の売却 計1.3兆円
(5)公務員宿舎等国有資産の売却 計3.8兆円
(6)国債整理基金特別会計の剰余金(繰入停止) 計10.8兆円
(7)労働保険特会雇用勘定の剰余金 計5.5兆円
(8)財政投融資特別会計の剰余金 計1.0兆円
(9)原発予算・原発埋蔵金の活用 計2.0兆円
(10)民主党の4K予算の見直し 計35.0兆円
(その他 日銀引き受け、外が準備の活用等)
色々と説明し、最後に――
江田憲司議員「この中の総計80兆円+αの中の10兆円でも工面できれば、現実にできればですね、今の9.2兆円増税など吹っ飛ぶわけですよ。是非ですね、この前向きな考えでですね、野田総理もですね、なるべく増税をしたくないと思います、今のところ。是非野田総理、こういったものを検討していただきませんか」
野田首相が立たずに安住財務省が手を上げて答弁に立つ。
安住財務相「あのー、先ず、ぞのー、片山総務大臣のところで、私はちょっと3番目のですね、一方的におっしゃってるので、これ、認識の違いがあると思うんですけどね。『重篤な患者運び込まれているのに治療、おー…費の返済計画を提出するまで待たせておけ』と。
私は被災地の人間だから申し上げますとね、江田さんにね。それぞれの自治体の復興計画は、ようやく10月の時点でもまだ3割なんですよ。7割は全く地元を含めて、国の予算がないからという人もいます。しかし、(声を大きくして)一方で、私自身の土地もまだどうするか自分でも、なかなか、両親と話しても、生家の所どうする悩んでいる。
で、なーにもですね、何から、私、財務大臣だから言うわけじゃないですけども、すべて財務省が悪くてですね、マインドコントロールなんて言葉、あまり国会で私、お使いにならない方がいいと思いますよ。
先生のような方が、それをご紹介するというのはちょっと私は如何なものかと思いますし・・・」
江田憲司議員(席に座ったまま手を上げて)「委員長」
安住財務相「そういう点で私はですね、様々な反省もありますけれども、決して、それが元で遅くなったということだけではないということだけは分かっていただきたいと思います」
江田憲司議員「委員長、委員長」
安住財務相「それからですね――」
みんなの党が主張している「増税なき復興」案の各財源捻出項目の妥当性について答弁をしていく。その答弁が少し長く続いたためか、安住財務相の「マインドコントロールなんて言葉、あまり国会で私、お使いにならない方がいいと思いますよ」という発言に抗議するために「委員長」と手を挙げたのだろうが、抗議を忘れてしまい、自党の案を検討していただきたいで終わる。
安住財務相は自治体の復興計画の遅れを、「国の予算がないからという人もいます」と言いながら、「ようやく10月の時点でもまだ3割なんですよ。7割は全く地元を含めて」出ていないと、自治体の責任としている。
菅首相の諮問機関である復興構想会議は4月14日に第1回会議を開催、2ヶ月以上もかけた6月25日に提言をまとめて答申、それ以降も除染対象の放射能線量が一度に決まらず、規制緩和や税制特例を活用して復興を図る「復興推進計画」、住宅の高台移転など、土地利用の再編に関する「復興整備計画」、道路の整備や住宅の高台への集団移転事業などを対象に国が財政的な支援を行い、被災自治体が一定の範囲で自由に使える復興交付金を申請できる「復興交付金事業計画」等の「復興特別区域(特区)法案」を閣議決定したのは10月28日、復興政策の司令塔となる復興庁設置法案は11月1日の閣議決定、国会に提出して震災から1周年(来年3月11日)の設置を目指しているというスローモーションである。
自治体は国の財政支援がなければ、身動きできない財政状況にある。また国の各方針が決まらなければ、どこまで進めていいのか決めかねることになる。当然、自治体の復興計画にしても国と自治体の財政の負担割合を決定できない状況に置かれる。いわば国の財政支援に対応した各自治体の復興計画の形を取らざるを得ない。
当然、「復興特別区域(特区)法案」が閣議決定を受けたのは10月28日であることからして、「それぞれの自治体の復興計画は、ようやく10月の時点でもまだ3割なんですよ。7割は全く地元を含めて」復興計画を完成させることができていなくても無理ない事情と言える。
それを自分の生家の話を持ち出して、「私自身の土地もまだどうするか自分でも、なかなか、両親と話しても、生家の所どうするか悩んでいる」と私的遅れを当然だとすることで自治体の遅れをも当然だと正当化して、国の責任ではないとする最終的な正当化を狡猾にも図っている。
例え自治体に責任があったとしても、再生・復興の最終使命と最終責任は偏に政府の責任とリーダーシップにかかっている以上、自治体をリードして再生・復興を力強く進めていく責任と義務を負っているはずである。
当然、自治体を批判していても始まらない責任と義務であり、その自覚責任のカケラもない政府の責任を棚に上げた、薄汚い言い逃れ答弁の自治体批判と見做さざるを得ない。
こういった自覚責任のない政治家が財務大臣を務めている。 |