NHKアナウンサー小野文惠のジャーナリストはそうであってはならない無邪気さ

2011-11-04 10:19:43 | Weblog

 NHKのアナウンサーである小野文惠をジャーナリストの範疇に入るかどうかは意見が分かれるだろうが、「Wikipedia」には「ジャーナリスト(journalist)とは、新聞、雑誌など、あらゆるメディアに記事や素材を提供する人、または職業」と書いてある。いわば取材等を通じて自身がつくり上げた情報の提供者のことを言うことになる。

 だとすると、NHK「週刊ニュース深読み」で務めている役目は司会の立場であっても、政治問題や社会問題を扱っている番組である以上、テーマとしている問題に関して前以て自分なりに学習し、解釈していた情報を他の出演者に提供する場合もあるだろうから、多少はジャーナリストの側面は有していると思う。

 少なくともジャーナリズム活動には携わっていると言えるはずだ。

 10月29日(2011年)土曜日放送のNHK「週刊ニュース深読み『どうなるの?わたしたちの“年金”』」で年金受給年齢の65歳から68歳引き上げについても議論していた。

 山田五郎(評論家)「定年から年金を貰うまでの間に空白期間が生じる。結局雇用延長ということになる。ただでさえ少ない若者の雇用が圧迫される」

 山憲之(年金シニアプラン総合研究機構研究主幹・65歳)「支給開始年齢を引き上げていっても、今68歳だって言ってるんです、68歳まで自分は年金が貰えないと言う方が、殆どの人が思っているわけですよ。

 で、実際違うんですよ、60歳から年金貰いたい人には年金差し上げますよっていう別の仕掛けが用意され――」 

 小野文惠「振り分け・・・方式?」

 山憲之「ええ。今もですね、65歳なんですけど、実際、60歳から手を上げれば、60歳からあなたに上げますよっていう制度になってるんですよ」

 竹田忠NHK解説委員「年金額は少なくなります。・・・・・(あとは声が小さくなって聞こえない)」

 早い時期からの支給を受けた場合、月々の受取り額は少なくなっても、総額は変わらないはず。このことを高山氏が解説する。

 山憲之「一生の間に貰う年金額、65歳から貰う年金額、総額を60歳から貰ったときに総額で同じにするんだったら、どのくらいがいいかって言ったら、受給期間が長くなりますから、少し我慢して減らしますよっていう発想で、何歳から貰っても、一生の間に貰う年金は同じですという発想で、60歳からの支給を認めているわけです。

 だから、68歳に引き上げても、60歳から実は年金を貰いたい人には差し上げますよっていう制度は残るんですよ」

 何と回りくどい言い方となっていることか。納付した年金保険料に応じて年金支給金額の総額は決まるから、早くから支給を受けると月々の支給額は減るが、総額には変わりはないために希望者には60歳から支給も認める制度となっていると言えば済むことを長々と解説している。但し長生きが前提となる。68歳まで支給を我慢して、69歳で死んでしまったなら、何にもならない。その恐れがあるから、人情として多くが早めに支給を受けようとする。健康を力強い命の保証としていても、いつ見舞うとも不確定な事故や自然災害や予想外の突発的な身体の変調が命の保証とする健康をいとも簡単に否定してしまう。

 但し何歳から支給を受けたとしても総額を保証する制度は少子高齢化の進行によって1人当たりの高齢者を支える若者の負担を逆に増やすという現象を当然とする問題が残る。しかも現役世代の受給額が将来減っていく場合、負担の格差みならず、若者と現在の受給者との間の受給金額の格差が問題として残る。

 この議論があってから、その続きとして高山氏が再度発言する。 

 山憲之「今日本はデフレで、実は賃金が下がっているんですよ。で、去年で言いますと、大体男子の賃金は手取りで言いますと2.2%下がっている。その前の年はリーマンショックで下がってる。実は3.5%下がってる。現役で、汗水垂らして頑張ってる人たちが手取りの収入を減らしてるんですよ。

 ところが年金制度は特別な措置で年金は下がらないってやってるわけですよ。で、おカネを出しているのは若い人達で、若い人たちの月給は実は減ってるんですよ。

 で、若い人達は可哀相だ、先程のインタビューの中でもおっしゃっていた人もいましたけれども、自分のことを考えるのではなく、是非自分のこと以外のことも考えて欲しいなって言うのが私のお願いです」

 小野文惠「高山さん、実は自分の年金を返納してらっしゃるんですって」

 感心した顔で他の出演者に向かって言う。

 山憲之「いや、返納ではありません。私はあの、65歳で、まあ、月給稼いでいるもんですから、年金を受給していないっていうだけであって――」

 竹田忠NHK解説委員「元から貰っていない」

 山憲之「ええ、貰っていない」

 小野文惠「受け取っていないようにしている・・・・」

 山憲之「そういうことです」

 小野文惠女史は高山氏が若者の収入が減っている、そのことに反して負担が増えていると同情した上に、「自分のことを考えるのではなく、是非自分のこと以外のことも考えて欲しいなって言うのが私のお願いです」などと利己主義とは正反対の利他主義なことを言ったものだから、単なる年金の受給の先延ばしを返納と思い込んで、欲のないことだと感心した顔になったのだろう。

 だが、高山氏から提供された情報(もし高山氏以外からだったなら、最初にその事実を高山に確かめなければならない)を返納と間違える情報解釈はジャーナリストの一員として、少なくともジャーナリズム活動に司会者として関わっている人間として許されない無邪気さと言わなければならない。

 現在のところ年金の支給の総額は早く支給を受けようと遅く受けようとも支払った年金保険料に応じて決まっている。違う点は所得税の点である。Wikipediaで経歴を調べると、東大を卒業し、財団法人年金シニアプラン総合研究機構研究主幹以外に一橋大学名誉教授兼特任教授の任に就いている。

 合わせた報酬額は相当な金額に達するに違いない。

 現職の前は大学助教授や教授を歴任している。当然、年金額も相当な金額に達するはずである。現在の相当な年収に加えて相当な金額となる年金を受給した場合の総収入に対する所得税は馬鹿にならない税金額となるだろう。

 もし年金を遅い年齢から受給したとしても総額が変わらないとしたら、年金を受給するまで所得税を減らすことができる上に月々の年金受給額を増やして受け取ることができる。

 もしすべての仕事をリタイアしてから年金を受給した場合、所得税は年金額のみの対象とすることができる。

 受給年齢の操作に応じて所得税の一定程度を浮かすことができるというわけである。

 こう疑ってかかると、「自分のことを考えるのではなく、是非自分のこと以外のことも考えて欲しいなって言うのが私のお願いです」は違った正体を現すことになって、小野文惠女史が利己主義ではなく利他主義と勘違いした姿は利他主義から利己主義へと変貌することになる。

 少なくとも高山氏は年金を受給しているよりも少ない所得税で済ませていることだけは疑いもない事実とすることができる。

 最後に政府が法律で年金受給年齢を68歳に引き上げたとしても、希望者は60歳から受給できるなら、定年を最低65歳までだときっちりと定めて企業が忠実に従わなければ、年金受給68歳は殆ど有名無実となる。

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