11月24日(2011年)、民主党厚生労働部門会議・生活保護作業チームが、〈生活保護の受給者の医療費負担を全額公費で賄う「医療扶助」制度について、自己負担の導入を検討することを決めた。〉と、「YOMIURI ONLINE」記事――《生活保護の医療扶助、自己負担導入検討へ》(2011年11月24日19時50分)が伝えている。
その理由。〈生活保護費の受給者数が過去最多を更新し、増え続ける公費支出の抑制が必要になっているほか、不正受給問題も深刻化しているためだ。〉という。
要するに生活保護受給者は今までタダだった医療費について一部負担をお願いすることの検討開始というわけである。
平成19年被保護者全国一斉調査を記載した《生活保護基準未満の低所得世帯数の推計について》(平成22年4月9日厚生労働省社会・援護局保護課)によると、私自身もその一人だが――
総世帯数 ――4802万世帯
最低生活費未満世帯――597万世帯
被保護世帯数 ――108万世帯
但し厚労省発表の2011年7月時点の全国の生活保護受給者が205万495人と急激に増加している。
平成19年総世帯数4802万世帯に対して生活保護受給基準の「最低生活費」を下回る低所得世帯率は4.8%の約230万世帯。いわば生活保護基準以下の所得でありながら生活保護を受給していない世帯が約230万世帯。生活保護世帯が受ける「医療扶助」の恩恵に与っていない。
このこととのバランスもあるのに違いない。
次のような記述も「Wikipedia」にある。
〈一方、所得が生活保護支給基準以下となるケースの内、実際に受給している割合を示す「捕捉率」は、イギリスでは87%、ドイツは85~90%なのに対し、日本は約10~20%となっている。厚生労働省の推計では、2007年の時点で世帯所得が生活保護基準に満たない世帯は597万世帯(全世帯の12.4%)であるのに対し、実際に生活保護を受けている世帯は108万世帯(全世帯の2.2%)である。世帯類型別では、世帯所得が生活保護基準に満たない世帯は高齢者世帯が141万世帯、母子世帯が46万世帯、その他の世帯が410万世帯であるのに対し、実際に生活保護を受けている世帯は高齢者世帯が49万世帯、母子世帯が9万世帯、その他の世帯が50万世帯である。〉
しかし一方で「増え続ける公費支出の抑制」の必要性は厳然たる事実として立ちはだかっている。
だからと言って、「医療扶助」制度に自己負担を導入した場合、少しの病気なら病院に行くのを控えるといった新たな問題が生じない保証はない。
リーマン・ショック以降の不景気で国民保険料を1年間滞納して保険証を返却するケースが増え、このことは保険証返却以後の場面としてある違いない生活保護世帯のここにきての急増と連動しているはずだが、治療にかかる場合、「被保険者資格証明書」が交付されるが、医療費の全額を一旦窓口負担し、あとから7割分等の返却を受ける制度であるために、そのカネがなくて治療を受けるのを控えるといった問題を既に見てきている。
いわば「公費支出の抑制」が招くこれらの諸問題であるはずだ。
またこういったことは「公費支出の抑制」の名目で給付を剥ぎ取るだけで問題が解決するわけではないことを教えている。給付の抑制は特に中所得層に対する国から個人への負担の付け替えに過ぎないからだ。
やはり11月2日(2011年)の当ブログ記事――《年金問題を含めた社会保障給付費圧縮は根本的な原因療法に目を向けるとき - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》に書いたように、共通番号制を早期に導入、民主党が考えている共通番号制度は「マイナンバー」という名称となっているが、生後1~3ヶ月の乳幼児健診に始まって、幼稚園での健康診断、小中高の健康診断と社会人となった場合の会社による健康診断、失業者であっても、毎年健康診断を義務付け、死亡するまでの健康診断値を各個人の“健康履歴”として管理し、過度の飲酒や過度の喫煙、あるいは健康を心がけない怠惰な生活等の不摂生からの病気、不注意や怠慢からのケガに対しては自己責任として診断費の自己負担を増やす一種の懲罰制を用いたなら、国の給付の抑制ばかりか、国民一人ひとりが健康に留意し、自覚的に健康を管理し、心がけるようになり、自ずと国の給付の抑制につながっていくのではないだろうか。
健康管理が医療費に関わる国の給付だけではなく、介護に関わる給付の抑制にもつながっていくはずである。例え生活保護受給世帯になったとしても、健康を維持していたなら、「医療扶助」制度の世話にならずに済み、その分、国の給付を減らすことができる。
また逆に健康管理が労働の保証となって、病気が原因で仕事を失ったり、仕事があっても就職ができなかったりする経済的困窮の回避につながるはずである。
健康管理が約束する労働の保証=経済的困窮回避はまた生活保護世帯の減少につながっていくはずである。
“健康履歴”を監視役とする健康管理を国民一人ひとりの責任とするこのアイデアが役立たないということなら、政治家は給付を削るだけではない、国民自身の力と責任で年金以外の国の社会保障給付費を抑制する方法を考えるべきである。
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