郵政民営化造反議員復党/安倍無節操劇の一幕?

2006-10-29 04:44:06 | Weblog

 自民党が党を除名した郵政民営化反対議員に対する復党問題で揺れているとここ何日かいくつかのテレビが取り上げている。復党が世間で言われているように来夏の参議院選挙対策なら、安倍首相の消費税増税隠しのご都合主義と同列に置かなければならない自己利害行動としなければならない。

 28日(06年10月)土曜日の朝8時からの日テレ「ウエーク!」での遣り取りをなるべく忠実に再現してみる。

 桝添要一自民党衆議院議員
 「参院選挙云々という話が出てますけど、そういうことよりも、総理代わって、新しい政治です。教育改革やりましょう、いじめから何から大変です。拉致、片付けましょう。そうするとねえ、教育改革中心だったのは佐賀の保利耕輔さん。この人は本当に頑張った。この方の力を借りるのは国民のためにはいいことです。拉致は平沼さんが一生懸命おやりになってるんですね。だから郵政はもう終わったんですね。だから新しい時代に新しい課題にはオールジャパンでやっていこうということですから、そういう大義があるわけです。そのあとのことは、そういうことは政治の世界ではいくらでも、だって、昨日の友は今日の敵だったり、離合集散はあるし、いろんなことありますよ。みなさん、どのくらい政党に属してるんですか。一杯変わってますよ。それはどうですか。そういうことじゃなくて、それはそれぞれ地域において調整すれば済むことであって、新しい時代には新しい課題を掲げて、やり直しましょうと言うことです」

 長妻昭民主党衆議院議員
 「自民党の本性が出たなと思います。去年の総選挙と言うのは郵政が変われば日本が変わると、よくなるんだと、ばら色のこれ、テーマで一点集中で絞って、そして大勝したわけですね。我々は社会保障とか、まあ年金問題等々、色々な争点、天下りとか持ちかけたのですが、しかしやはり当選した方はその郵政、まだ、あれプログラム法ですから、まだ実現していないんで、本当にそれを変えて日本を変えるという公約を引き続きやる責任があるんですね。先ほどもコスタリカ方式とか比例とかありましたけど、多分地盤が脆弱なですね、その新人の方は最終的に比例に回されて最後には小選挙区では立てないような状態になると、こういう過程を辿ると思うんですね。そういう意味では日本を変えるという仕事を最後まで貫通しないで、そして選挙目当てで人を入れていくという、そう、節操の無さというのは、非常に私には不可解ですね」

 桝添自民党衆議院議員
 「それは違うんですね。郵政民営化賛成しない人は入れません。安倍総理の方針に賛成しない人は入れません。ですから、誰でも入ってくると。絶対郵政民営化、今でも反対であって、付いてきません。そういう方は例え国民新党という人おられれば、そういう方と一緒にやることはありません。ちゃんと条件つけますよ」

 司会
 「平沼さんなんぞはいまだに賛成したことないわけで、どうなりますか」

 桝添自民党衆議院議員
 「事態はもう民営化で動いているわけです。だから、ちゃんと踏み絵を踏んでもらいます。ダメならダメです」

 長妻民主党衆院議員
 「プログラム法ですから、途中やっぱ色々と変更が効くような法律なんですよ。だからそこでブレーキかかって、結局は国民のみなさんと約束したのと違う形になってしまう危険性をあるわけです」

 桝添自民党衆議院議員
 「我々が執行部である限り、そういうことはありません」

 司会
 「猪瀬さんと大宅さん、一言ずつ」

 猪瀬直樹
 「あのね、目先のことばかりおっしゃってはいけません。やっぱ郵政民営化をやって、郵政民営化をきちんと、まだ途中ですから、基本的にはできてますけど、それをやっぱ続けるのは、ね、当然ですよ。信義みたいなものをやっぱり国民に問うたわけですから、そこはあくまでも貫かなければいけないと思いですね」

 大宅映子
 「私は、結局おカネの上手な使い方、生きたおカネの使い方の問題なんですよね、根っこのところでは。これからどんどん右肩上がりなんかないときに、あの郵政のおカネをどううまく使うのかっていう形が一番大事なことであって、あんま小っちゃなことにゴチャゴチャ言ってる場合じゃないっていう気がします」

 勿論桝添議員は復党賛成の立場から議論を展開し、民主党の長妻議員は批判する側に立っている。評論家の大宅氏も「あんま小っちゃなことにゴチャゴチャ言ってる場合じゃないっていう気がします」と言っている以上、賛成側に立っているのだろう。なぜなら「郵政のおカネをどううまく使うのかっていう」ことだけの問題ではなく、政治家の〝ルール〟に関わる無視できない本質的な問題だからだ。決めたルールを例え一つでもご都合主義的な自己利害で破る政治家は如何なる場合でも同じような自己利害に従った行動を取る。安倍首相の歴史認識に関わる持論変更を一つ見ただけでも、安部晋三なる政治家のルールに関わる姿勢がどのようなものか理解できる。当然ルールに関わる問題を「小っちゃなこと」とするには、復党に持っていきたい気持があるからでなければならない。

 桝添氏に対する第一印象は東大を出て東大の教授を勤め、退任後国際政治学者を名乗って評論家活動をした人間の割には主張に論理性を欠いていることである。「我々が執行部である限り、そういうことはありません」という保証は言葉だけで終わらせることもできる断言でしかない。郵政反対派議員は選挙となれば、敵は何も同じ党のいわゆる刺客の類だけではなく、民主党や他の野党の対抗馬も敵として迎えなければならない。復党して選挙で党公認と選挙地盤を回復した上、刺客という前門の虎を免れたとしても、彼らの支持者である郵便局長とかのいわゆる郵政に関わる既得権益者の利益にならない政治活動を行ったなら、票を失うことになって、後門の狼たる民主党以下の野党候補に不利な戦いを強いられることになる。

 いわば、彼らは復党で桝添が言うどのような「踏み絵」を踏もうと、支持者を構成する郵政既得権益者の利益も図らなければならないというジレンマを抱えて新しい自民党活動を行わなければならない矛盾を抱えることになる。そのような議員を抱えていて、「我々が執行部である限り、そういうことはありません」という約束はどれ程に確かなものとすることができるだろうか。

 また小泉首相は昨年の9・11総選挙で郵政問題のみに限った賛成・反対の基準で党員を選別した。その他の教育改革や拉致問題に支障ないと見たから、郵政限定でいけたのだろう。それとも取り敢えずは郵政限定で、郵政民営化法案を成立させたなら、復党させればいいとの前提で暫定的措置として党公認を与えず、刺客まで送り、なおかつ除名や離党勧告を行ったと言うことなのだろうか。今になって教育改革問題に保利耕が、拉致問題に平沼赳夫が「大義」だとするのはご都合主義であるばかりか、矛盾する。逆に人材不足の非難を受けなければならない。

 長妻議員が「当選した方」は「郵政」を「変えて日本を変えるという公約を引き続きやる責任があるんですね」、「日本を変えるという仕事を最後まで貫通しないで、そして選挙目当てで人を入れていくという、そう、節操の無さというのは、非常に私には不可解ですね」と言っているが、まさにその通りで、対抗馬として自民党公認の資格を獲得し、〝刺客〟・〝くの一〟等で立候補した人間は一義的に郵政民営化実現の使命を担っていたのである。単に造反議員を落選させるために立候補を任されたわけではないだろう。

 07年10月から郵政民営化はスタートする。民営化がどのような内容で進行するのか、長妻議員が指摘したようにプログラム法である以上行く末を見守る義務がある。桝添氏が言うように決して「終わった」問題ではない。民営会社としてスタートラインに立ったとき、当初目指していた姿と違う、微妙に後退した姿となっていたということもあり得る。

 また桝添氏は復党といわゆる〝政党渡り鳥〟の「離合集散」を同じ俎板の上に置いて同じレベルの事柄としているが、中には政治的主義主張からではなく、国会議員という身分維持の自己利害からの節操を問題としない〝渡り鳥〟もあるわけで、かつて大学教育者であり評論家を名乗っていたなら論理的に議論を構成しなければならないはずだが、それを裏切って「離合集散」の個別性を無視してすべてを一緒くたに扱う不合理を犯している上に、さらにそのように合理的ではない理屈を郵政造反議員の「復党」の正当化理由にも結びつける二重の不合理を犯して何とも思わないでいる。こういった論理性を欠いた人間が国会議員を務めていると思うと、薄ら寒い思いにさせられる。

 同じ日の早朝からのTBSテレビ「朝ズバッ」では自民党参議院議員の片山虎之助が「安倍総理の理念や政策を共鳴をして、一緒にやりたいと人はねえ、復党してもらった方がいいと思いますよ」と言っていたが、参議院選で敗北したら、自分が所属する参議院自民党勢力の立場を失うし、敗北とまで行かなくても議席を減らしただけでも発言力低下を招く恐れからの、いわば勢力消長を問題とした発言なのはミエミエである。

 なぜなら、「一緒にや」るが「安倍総理の理念や政策」の「共鳴」を条件とするなら、自民党内にいる「安倍総理の理念や政策を共鳴」していない少数派は、「一緒にや」る条件を失って、逆に離党しなければならない。こじつけに近いが、〝条件〟(=ルール)を厳密に適用するとなるとそうしなければならない。

 「朝ズバッ」のカメラが野田聖子や平沼赳夫、武部善幹事長を追った。

 野田「できる限り前向きに取り組んでいただきたいと思っております」
 平沼「また自民党の同士と汗をかいてもいいなと、まあ、こんな感想を持ってます」

 復党したくてうずうずしている容姿を窺うことができる。
 
 菅直人「自民党という党が使い捨ての政党であるということを示していると思います」

 面白くも何ともないまともすぎる反応で、この程度のことしか言えないのかと分かっただけでも価値ある映像の一コマであった。

 武部前自民幹事長「私はねえ、さっき小泉総理と会いました。心配してましたよ。既得権者の票を当てにして、絶対参議院は勝てっこないと言ってましたよ」

 何かの会合か、マイクに向かって声を大にして言っていた。「さっき小泉総理と会いました」とは、武部氏の中では小泉純一郎はまだ総理大臣のようである。ということは自分はまだ自民党幹事長のつもりでいるのだろうか。

 武部前自民幹事長はいわゆる小泉チルドレンと称されるうちの無派閥新人議員を集めて新グループ発足を表明している。そのような立場上、逆に新人議員を追い出しかねない造反議員復党は真っ向から自己利害と対立する。声を大きくして反対する理由がそこにあるのだろう。

 所詮、人間は政治家であろうがなかろうが何らかの自己利害で動く。問題は自己利害行為が合理性を備えていて、広く一般的に正当性を獲得できるかどうかである。「大義」なる言葉も桝添同様に自己利害正当化の口実・便宜に利用される言葉であって、言葉どおりであるとは限らないことが多い。

 最後に安倍首相。解説で「今週党に対して復党問題に対する検討を指示しました」と説明があった後、「同じ考え方を持っている人たちに対して、どう対応していくか、それは幹事長、まあ党本部で検討して参りたいと思います」

 「検討」とは体裁で、〝体裁〟に時間をかけている間に世論がどう動き、どう判断するか、その動向・推移を見守って、復党が参議院選挙で自民党に有利に働くか、不利に作用するか見極めてから最終的に決定しようということだろう。だから自分の考えは述べない。不利に動く可能性のある事態に関しては、党が決定したこととするのだろう。機会あるごとにリーダーシップの発揮を言いながら、そのことに矛盾する党の決定への同調なのである。

 また有利・不利で判断すると言うことは自己利害行動の証明以外の何ものでもない。節操を超えたところで自己利害が基準とされることの証明でもある。

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