花鳥風月

生かされて行くもの達の美しさを見つめて,
ありのままの心で生きている日々の、
ふとした驚き、感動、希望、

富士登山のバラ、そして樹海

2013-09-18 01:38:45 | Weblog

1994年、昭和大學のイベントに参加するという
「北大薬学部」の植物探索の授業の一環として、
聴講生だった自分も、「富士山の植物と樹海の植物の探索」に
参加する機会がありました。、探索会のレポート書き提出すべく
雑誌の受付印までもらっておいたのですが、とりわけて珍しい発見も無く、
原稿を引き出しに入れっぱなしのまま、
なんと!「19年」の年月が流れていた。
七年後には「東京オリンピック!」
「世界遺産に文化登録されている富士山」

私は、今日は元気でも、明日はもう何が起こるかわからない年齢に達している。

19年前の「世界遺産になる前の富士山の植物」を、
レポートのしたままうずもらせるよりは、
回顧録のつもりで、ここに記しておきます。

昭和大學植物園の先生、北大の薬学部の助手さん、
思い出をありがとうございます。
  
     富士山のバラ、そして樹海

牧野煮日本植物図鑑には「いばら科ー高嶺バラ」
Rosa aciculasis Lindl var.nipponensis Hook.fil と掲載されている。
高さ1-2メートルの落葉潅木であるが、
夏季から秋季に枝端に大きな花を単生する。
その花は4センチほどで淡紅色を呈し、優美である。
それとは対照的に、富士山固有に近い植物の中で、
富士ハタザオ、Arabis serrata
富士オトギリ Hypericum erecutum var.caespitosum 等と並んで
「オオサワトリカブトAconitum ishidzukai らしき
「ホソバトリカブト」によく似た近縁種であろうかと思える植物を
観察した。たとえば、ホソバトリカブトの下面の葉脈の上の毛は曲がるのだが
脈上の毛は開出するので、判別できる。
このトリカブト北大付属植物園や薬草園のトリカブトよりは背丈が高い。
まるで「トリカブト畑のように群生している。
探索会の届けが昭和大學から提出されているからであろうか、
群生する紫の花園より、研究用の一本の採取が許可された。
北大の同行した助手さんに、トリカブトの根やその根にくっついたように
新しいウズという根っこがついている説明を受けた。来年は根っこが枯れて
ウズが次世代のトリカブトとして、発芽するから、10年も経つと、
トリカブトの群生は動物のごとく、這っているかのように移動すると教えられた。

助手さんの実地で鍛え上げられた臨場知識はさすがに深く、
持ち帰った検体の植物は、その後発芽して多くの事を伝えてくれた。
さらに、
昭和大學の植物園の園長先生と農学部と薬学部、学生らのメンバーが
こぞって、青木が原の樹海に「植生の探索に行く」というので、
チャンスを逃がしては、青木が原には個人では無理と思ったので、
参加させていただいた。
樹木の苔むした露出した根っこの上を歩きながら、火山の噴火がもたらした
地底の洞穴に興味を覚えて、コケ植物や、小さなキノコに気をとられて、
ややもすると、はぐれそうになりながら、
マムシ草に結んだ道しるべのリボンを目印にしながら、植物の宝庫の沿道を
ジグザグと歩き続けました。

1994年9月27日から29日までの探索会でしたが、
台風が目の前に迫っており溶岩と泥流に、引っ掻き回されたとおぼしき巨木が
根っこをあらわにしているので、歩くのには厳しいゾーンでもありました。
今、思えば、富士山は世界遺産のうちでも、「文化遺産であると聞いている。」
探索を、もっと大掛かりに緻密に分担して植物のキノコやコケ類地衣類に
更なる発見があって、世界に珍しい蝶や虫が見つかれば「自然遺産」に
登録される可能性もあるのではなかろうか?楓の葉っぱも、札幌の農場試験場の
楓の標本林には見られない「小型のつるりとした、緑一色の、葉内輪楓のような
形の切れ込みの木も眼にしました。はぐれてしまいそうになるので、
ルーペの探索は時間的に出来ませんでした。

スバルラインが通り、行楽の登山客には便利になりましたが、道路が故の
環境破壊、消え行く富士山の界隈の固有の植物群、そして、荒らされた
富士信仰の歴史をしのぶ建物の破壊に、価値観の視点の違う登山客のマナーを
残念に思うのでした。
もの言わぬ植物は、一千年の時間の単位で動きながら、科学の進入道路や
人災の環境破壊を悲しんでいるかのように、植生が途切れているところが
哀しい文化遺産でした。北海道の知床五湖のあたりも、ウッドデッキの行楽客
最優先歩道で、侵略された固有の植物や熊達は
共存できなくなってゆくのだろうか?
そんなことをふと思いながら、台風の接近した土砂降りの雨の富士界隈を
シャツまでグシャグシャに濡れながら富士信仰の名残の神殿の狛犬の下に
もぐりこんで、雨風をしのいだのでした。
台風のニュースの報じられる中、ヒマラヤ登山の体験のある北大の助手さんや
アマゾンからの来日中という客員や植物の実学に強い大学の教官、武田薬品の
薬草園の縁の方、26名のプロ中のプロの中に、運良く大學の聴講生として
参加できたことは、富士山の視点、価値観が世界的に貴重なゾーンであることを
認識させられたのでした。行楽の俗化した破壊をストップさせるべきだと、
学者の先生方は嘆いておられたようでした。
「植生」が語ることは大切だとも言っていました。

右に左に「シラビソ」「コメツガ」が観れたのも5合目まででした。
ミヤマハンノキの下にあるはずの「オニク」も剥ぎ取られた後ばかり。
今振り返ると、青木が原の足元の敷き詰められた苔の海の
30センチはあろうかと思われる敷き詰められた濃い緑の中を松の根っこが
大蛇のようにうねり溶岩が大きな口をあける地底への洞穴はめり込んだ足を
どこまでも沈み込ませる恐怖も感じたのでした。光をさえぎり、苔をはぐくみ
乾いた溶岩台地を湿度で飽和させ雨水を逃がさない。本来なら、砂漠のような
溶岩台地に、樹木と苔が助け合って、一大樹海を作り上げ、大自然の知恵は
樹海の海溝の中に人々を招きいれて、神々しくも森の精のベールのような
風の感触で水中の如く透明な感動で包んでくる。油断していると苔の割れ目の
地底に続く大小の奈落の迫に落ちてしまう。石を投げ入れると、しばらくして
はるか遠くから地底の返事が帰ってきた。好奇心も手伝って、安全そうな広い口の
地底への洞穴に降りてみた。ひんやりと冷たく止まったままの風の中で
魚になったような、浮遊感の伴った非現実感の心地よさがあった。一歩間違って
自分に酔っていると、同じところをぐるぐる廻っていそうな不思議の中で
「カニコウモリ」「ツバメオモト」「シラビソ」「アカマツ」「シラカンバ」を
目印に、真っ赤なテンナンショウの実を目印に、皆と合流できました。
富士も樹海も。あまりにもスケールの大きな
「大自然と人間の文化の共存共栄」の未来への問題を抱えているだけに
レポートの掲載は控えてしまいました。之を提出する前に確かめたいことが
いくつか出てきてしまい、入笠山、霧が峰、白山 三つ峠山 鉢伏山 志賀高原
雲仙岳、吉野山 高野山 等を友人と登り、富士山の固有な蝶や植物虫達の
特定を出来ないものか、歩き回りました。

白山などは、実に植物が楽しめて、高山の蝶や虫やキノコや、苔も多く
自然の素晴らしさを体感するにつけ、富士山のレポートは、とうとう、、、
19年間も眠ったまま、世界遺産になった富士山に、
祈る思いで捧げる文になりました。

美しい富士山の界隈に「文化遺産」「自然遺産」の共存を願うものであると。
安易な自然破壊は「山が許すはずはありません。」

肩寄せて 富士の樹海を潜り抜け 仰ぎ見る山 台風の中

世界遺産という「台風」よ、、、

         富士の高嶺に

               心して吹け


                      Kiko 2013

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