立読ブログ

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数奇な生涯 ジョン・ハンター

2010-01-02 00:37:13 | 
はいたい 立読師です
年末年始ようやっと読み始めました

解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯  ウェンディ ムーア、Wendy Moore、 矢野 真千子  河出書房新社

やー面白い!!
近代外科医学の父と呼ばれる奇人
ジョン・ハンター!
なんかもー名前の響きから
なんかを成し遂げてしまいそうな
ジャンプ主人公的な名前じゃありません?

ジョン・ハンター!
ジョンっハンターっ

ほら ね?

という間抜けな紹介はおいといて

似非科学と迷信と無知と無学がまかり通り
教会の教えという権威が科学的手法をねじ伏せて
恐ろしいほどに医学が黎明を極めた時代
医学の進歩と教会の倫理はごたまぜで
墓泥棒から斜血、消毒なしの外科治療
いいんだよ結果的に一時的に治りゃあ…
それこそ現代から見たら悪夢のようなバーリトゥード
17世紀から18世紀の西洋外科医術の変遷なんかがよくわかります
科学哲学の変遷や 同時代の日本医学の状態なんかを
並行して頭に浮かべながら読むと
なかなか読みごたえがあります
いや そんなことしなくても
本書だけでも十分面白いんですが
たとえば17世紀のイギリス人の平均寿命って
30代なんですって
んでもそれは子供の死亡率があまりにも高かったからで
赤ん坊が30才くらいまで生き延びると
その後は結構長生きできて60くらいまで生きられた
とか読むと
あれ?似たような記述を
江戸時代(17世紀)の日本人の寿命の話で読んだことがあるぞ と
つまり 当時の洋の東西問わず
医学の進歩はそんなに大差なかったのかな?
とか思っちゃうわけですよ
ジョン・ハンターの偉業とかは
わきに置いといて
とりあえず 医学って科学って
どういう風に今の哲学になっていったの?
という問いに少しは時系列で答えてくれる本だと思います

副読書として科学哲学の本と
江戸時代の医術書がちょっと欲しいです

が 一方で
結局科学の啓蒙主義って現代でもできちゃいないんじゃない?
とか思っちゃいます
怪しげな(似非?)科学療法を盲信したり
健康になるなら死んでもいいみたいな健康主義
結局無知と無学によってやくたいもない薬や
毒をありがたがって試してしまうのは
現代人にも多々おられるのでは? 
17世紀の一般市民を現代人は
とてもとても「昔の人はバカだなぁ」なんて
侮蔑できたもんじゃありませんよ
医学に対する畏怖と尊敬と軽蔑は
根っこでは全然昔と変わってないじゃん
…て 単に著者に踊らされているだけだけどね
そういう考えが頭をかすめるように
書かれているなぁこの本は


さて 本編ではいよいよジョン・ハンターが
生きた人間の外科治療へ進んでいくところまで読みました
いやぁ ダークにして魅力的ですわジョン
それにねぇ この本の章のタイトルがまた
「え?それってどういうこと?」と
気持ちを引っ張る超キャッチーなコピーなんだわ
章タイトルの意味が分かって
振り返ると…
ホント 数奇な生涯だねジョン・ハンター