タリバンがアフガンを制圧して3日が経過したが、既に日本メディアの関心はアフガン国民の葛藤・脱出よりもタリバン政権の承認に移っているように思える。
西側社会は、クーデターで誕生した政権は承認しないことを原則としているが、アフガンの場合はガニ大統領と政府高官が国外に逃亡してアフガン国内には正統性を主張する後継統治組織が無いことから、アフガンは無政府状態の地域とされるのであろうが、その場合、諸外国に置かれている政府機関や関係者はどのように処遇されるのだろうか。
1996年時のタリバン政権を承認したのは、サウジ、UAE、パキスタンの3カ国であったが、25年経過した現在これらの3国は対米関係を修復ないしは対米依存度を増していることから、今回は早急な承認にまでは踏み切れないように思えるので、最初に承認する国は、既に経済支援を約束するとともに国営メディアがアフガンとの関係強化の論評を相次いでは発表するなど、承認に前のめりである中国と思う。
マルクスは、「ヘーゲル法哲学批判・序説」で、「宗教上の不幸は、一つには現実の不幸の表現であり、一つには現実の不幸にたいする抗議である。宗教は、なやめるもののため息であり、心なき世界の心情であるとともに精神なき状態の精神である。それは民衆のアヘンである」と書きマルクス主義と宗教は相容れない関係とし、毛沢東も文化大革命における旧秩序破壊にこの言葉を使用したとされているが、IT・元・銃でウイグル族の棄宗・教化に自信を持った習共産党は、タリバン教の浸透を水際(国境)で阻止できると考えているように思える。
自分は、アヘン(阿片)を良く知らないので調べて見たが、化学の知識が無いので深く理解するまでには至らなかったものの、アヘンがケシの実から採取されるアルカロイドで、アフガン等の後進地域では、傷をつけたケシの実から流れ出て固まった物をヘラで掻き落として採取するが1kgのアヘンを得るのにケシが2000本も必要であることは理解できた。アヘン戦争や租界の阿片窟でパイプ吸煙されたのはヘラ掻き取集されて不純物が多い生阿片と呼ばれるものであったが、現在の先進地域では茎を含むケシ全体を溶媒処理して化学的に大量の麻薬成分を抽出しているらしい。
ヘロインやモルヒネもアヘンを精製して得られるとされ、特にモルヒネは末期がん患者の鎮痛のためにはなくてはならない医薬品との側面があるようである。
名探偵シャーロック・ホームズが中毒的に愛飲するアヘンチンキは、粉末アヘンをエタノールに溶いたもので、20世紀初頭までは多くの国で処方箋なしに薬局で買える鎮痛・咳止め・下痢止め薬であったが、現在では麻薬そのものとして厳格に管理されているようである。
アフガンがタリバンの手に落ちたことを、バイデン大統領を除くアメリカと軍隊を派遣してアフガン治安部隊の訓練を担当したNATOは、一様に失敗と捉えていると報じられている。
アメリカは共和党を中心として、タリバンの力量を見誤って教条的に撤退に固執したバイデン大統領の判断を、NATOは、治安部隊の練度不足を知りつつ撤退したことをそれぞれ挙げているようであるが、協力者を見捨て・見殺しにしたアメリカの撤退は、今後のバイデン大統領の人権外交や紛争国における米軍の支援行動に大きく影響することは避けられないように思える。
アメリカは、部隊を急派して避難民の救出に当たっているが、「戦略の齟齬は戦術では補えない」という鉄則を今更に示しているように思える。