もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

アフガンのガニ政権崩壊に思う

2021年08月17日 | 社会・政治問題

 アフガンのガ二政権崩壊(大統領出国)と一般国民が決死の脱出を求める映像が報じられた。

 自分の不明と先見性の無さを恥じるところであるが、米軍撤退によってアフガンの内戦突入は必至の情勢と書いたのは今年の3月3日、米軍撤退支援の空母レナルド・レ―ガンの不在長期化を懸念と書いたのは5月28日であった。
 アメリカが、アフガン政権抜きでタリバンとの和平合意したことによるタリバンの攻勢は伝えられていたが、米軍の撤退が本格化した7月初めの時点ではタリバンの支配地域は全土の6割程度であり、戦闘は激化するにしても、30万人と称される近代装備の治安部隊に支えられたガニ政権の崩壊は、あるにしても先のことと観られていた。しかしながら、バイデン大統領も「予想外」とするほどの急展開で、13日にアフガン第2の都市カンダハルを制圧したタリバンは3日後には首都カブールに無血入城してしまった。
 今回のアフガン国民の被る厄災に至る原因は、アメリカの指導者がビジネスマンから政治家に交代したことが大きいと考える。米軍の存在と戦闘・影響力をビジネス感覚で捉えるトランプ氏は経費の高騰するアフガン支援を5月末の完全撤退で終了することでタリバンと合意したが、契約(和平合意)の前提が消滅もしくは覆された場合には、アフガンからの完全撤退という契約自体を破棄もしくは変更することに躊躇しなかったのではないだろうか。一方、政治家バイデン大統領はビジネス契約を受け継いだものの、完全撤退事態を変更できない国際公約と捉えて、情勢の変化に顧慮することなく公約の実施にのみ拘ったように思える。
 日本の朝野においても、トランプ氏の和平合意が対話重視のバイデン政権に引き継がれたことを歓迎し、「ようやくに、アフガンの地がアフガン国民の手に戻る」、「タリバン、ガニ政権とアメリカの対話が実現する」との意見が多かったように思うが、タリバンはガニ政権との対話を拒否して力による現状変更を選択した。
 凡そ「関係改善のための対話」は、一定の価値感を共有する場合にのみ可能で、日本と韓国・北朝鮮・中国を例にするまでもなく、共有できない若しくは相反する「水と油の関係」では、言葉の通じない異星人に対する場合と同様に会話は成り立たないと思っている。

 ガニ政権崩壊の事態に対して、アメリカは大使館員・国際機関員退避のために2千人規模の部隊の急派を検討中とされているが、時計の針を戻すことや遅らせることは不可能に思える。
 タリバンも前回のイスラム原理法の行き過ぎを改めることを表明しているが、既に、タリバン戦闘員との強制結婚、女児の就学停止、政権と米軍の協力者に対する迫害は各所で始まっているともされている。難民・国外脱出を望んでも、カブール在住者には一縷の望みが遺されているものの、他の地域にあってはカブールに辿り着くことすら絶望に思える。
 国境を接する新疆ウイグル自治区へのイスラム原理主義の浸透を警戒すると思っていた中国は、既にタリバン首脳に経済援助を約束して取引を完了したともされている。自治区内の教化が完了したのであろうか。それとも、原理主義の浸透を力と恐怖で抑え込めると判断したのであろうか。