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もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ブリッジと第6級賞詞

2025年02月23日 | 自白
 自分は、第6級賞詞受賞という輝かしい?経歴を有している。
 時間的制約を受ける艦内娯楽の代表はトランプであり、士官室ではコントラクトブリッジ(以後。、コントラ)が行なわれる場合が多い。
 かっては海軍士官のたしなみと半強制されたコントラも、現役の最後頃には見かけることも少なくなっていた。幹部昇任後に初めて乗艦した護衛艦では、コントラ好きの艦長のもと多くの幹部が競技していた。乗艦早々の昼休みに召集され、ほんの数分間のルール説明の後、実戦での特訓が始まった。全く要領を得ない自分には、叱責の声雨アラレで昼休みどころか昼地獄の有様が数日間続いた。しかしながら記憶力に難あるのか、一向に上達することは無かったが、それでも相手からは全幅の信頼は得られないものの、協議参加が認められる程度にまではなったと思っている。こんな叱責満載の地獄絵図が若年幹部から嫌われるのか、歳を追うごとにコントラは士官室から姿を消したようにも思われる。閑話休題。
 夕食後は暇が多い補給艦では、幸いにしてコントラができる者が多く、派米訓練やカンボディアPKO時には楽しむことができたが、金を賭けないこともあって、ギャンブル好きの自分には今一つ充足感が無いし、戦績を誇れる物証も無い。そんな訳で「第6級賞詞」の創設を試みた。
 自衛隊には1級~5級までの賞詞があり、それぞれに十干の甲・乙・丙・丁・戊を冠した識別番号が付されているので、6級賞詞は己(き)を付して尤もらしく装い、賞詞には表彰者の職印が押印されるが、流石に艦長職印の使用は憚られるので箔をつけるために艦長の私印を押させて貰うことに漕ぎつけた。
 受賞条件は、コントラ通算でグランドスラム10回&スモールスラム20回獲得とした。13組の札を取りあうコントラでは13組全部獲得のグランドスラム、相手に1組しか与えないスモールスラム(何故か海自では”リットン”と呼ぶ)であれば、滅多にはできないもので、受賞条件を2年程度の乗艦期間でクリアするのは相当に困難なものである。また、表彰はコントラと全く関係の無い幹部まで士官室に呼び集めて表彰式を執り行った。自分の在任中、6級賞詞を獲得したのは、艦長と自分だけであったが、その後は・今はどうなっているのだろうか。
 引っ越しのどさくさと終活の結果、自己満足の域を出ない6級賞詞賞状は保存の対象とは認められずに泣く泣く破棄したが、悔いの残る出来事であった。
 自分が練った表彰状文言「貴殿の透徹した戦術眼と旺盛な敢闘精神は他の隊員の範とするに足るものと認め 茲に表彰する」・・コントラよ、永遠に。


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