もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

ゼレンスキー大統領の国会演説に思う

2022年03月24日 | ロシア

 国会でのゼレンスキー大統領のオンライン演説が行われた。

 英(7日)、加(15日)、米(16日)、独(17日)、イスラエル(20日)、伊(22日)、に続く7か国目の議会演説であり、対象各国ごとに内容や言葉を変えるという演出は、一部識者がする演説巧者という評価よりも、ウクライナの窮状がより身近に感じられるものであると思う。
 しかしながら、米国議会で9.11同時テロと並んで真珠港攻撃が例示されたことについては、宣戦布告という国際慣例の戦争行為で、軍事施設に限定した行為を無差別テロと同列に扱われることに違和感を持ったが、それが米欧における真珠港攻撃に対する共通認識であるのかと思うと、これまで日本の外交官が何をしていたのかとの思いが強い。
 つい先日、安保理でロシアの国連大使が「ロシアはウクライナを武力攻撃していない」と強弁する映像を見た。馬蹄形テーブルを囲む数メートル先には非難・敵意をむき出しにする理事国大使が居並ぶ中で、顔色も変えず、言葉に詰まることもなく強弁する鉄面皮には驚かされる以上に不快感を持ったが、そのような姿勢を取り続けることは、外交官には必要不可欠の資質ではないだろうかと今は思っている。
 日本の在外外交官で、「真珠港攻撃は国際慣例に則った戦争行為で、奇襲ではあっても軍事施設に限定したもので非難される点は無い」、「日本軍の在外駐屯地近傍には民営の売春宿があったのは事実であるが、強制連行などしなくても貧しかった内地や朝鮮半島からの売春婦の応募には事欠かなかった。第一、売春行為は当時の世界基準であった」、「朝鮮半島は植民地ではなく日本であり、朝鮮人・朝鮮人労働者も日本国民として処遇していた」と公式の席で述べたことのある人は、果たして如何ほどいるのだろうか。

 ゼレンスキー大統領の演説やSNSで配信される映像で、ウクライナ国民(非戦闘員)の窮状がより鮮明になったことで、「市民を救うため」として「政治決着」という名のウクライナ降伏を促すという主張が出始めた。あの橋下徹氏ですら与しているが、このような主張は命の危険を冒してロシアに抵抗しているウクライナ軍民に対して非礼極まりないものと思う。
 国を失ったことが無い日本人の理解を超えるものであるが、ウクライナの歴史はロシア帝国・ソ連邦による蹂躙・苛斂誅求の連続で、ソ連による1932-33年のホロドモール(スターリンの計画飢饉)では、強制移住・種子までの強制収奪によって数百万人の餓死者を出し、第二次大戦ではソ連の先兵として戦わされ800万人から1,400万人ともされる犠牲者を出したとされている。
 このような歴史を見れば、国を失うこと・ロシアの傀儡に甘んじることは、民族の誇りを失うことと同義であり、いかなる人的損耗があっても抵抗を止めることはないだろうし、政治決着という降伏を勧めることの愚は慎むべきと思う。
 ウクライナは、領土や市民の生命のためだけに戦っているのではなく、ウクライナ人のアイデンティティのために戦っていることを、我々は知るべきと思う。


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