米中が貿易協定の第1段階の合意文書に署名した。
合意の要旨は、中国はアメリカからの農産物等の輸入量を拡大(対2017年比で22兆円相当)するとともに元安誘導を取りやめ、アメリカは先に課した13兆円分の輸入品の追加関税を半減させるとしているが中国は追加関税を廃止しないとしている。また、アメリカが1丁目1番地としていた知的財産権保護(先端技術の移転強要)や国有企業への補助金は、第1段階合意では当面中国の改善を待つと先送りされており、抜本的な解決は第2段階以降の協議に委ねられるとされている。合意後の会見で米中双方がwin-winを表明したが、自分としては痛み分け若しくは中国の勝利と観ている。再選を狙うトランプ大統領が短期で目に見える実績を必要としたために腰砕けしたのに対し、反対意見を圧殺できる終身皇帝の習近平氏は”負けたふりをして百年河清”を待てば次期アメリカ大統領は軟化するとの読みに立った合意ではないだろうか。これまでの米中貿易戦争を通じて自分は、アメリカの仕掛けた貿易戦争(関税障壁)は中国の膨張阻止と封じ込めを狙うトランプ・ドクトリンと評価し、メディアが全ての事象を大統領選挙と結び付けることに疑問を感じていたが、今回の合意を見る限りメディアの主張が正鵠を衝いていたと思わざるを得ない。第1段階までの米中双方の戦果を総括すれば、アメリカは対中貿易赤字を若干縮小し得たものの衣料品等の小売業界が打撃を受け、中国は消費財生産者が打撃を受けて経済成長が鈍化したものの致命的な痛手は被っていないかのようである。経済戦争に勝者はいないとされているが、アメリカの力をもってしても中国の覇権野望を挫くことができなかったのかというのが実感である。
米中は日本の貿易相手国としては平成30年度実績で1位中国(19.5%)、2位アメリカ(19%)となっており、これまで米中貿易戦争の余波をまともに浴びていため政財界ともに今回の合意を歓迎しているが、米中貿易戦争は終結ではなく休戦・条件付き停戦状態である。今後、米中双方に停戦義務違反が生じた場合には停戦は破棄される以上に泥沼化に発展する可能性もあるので、アメリカの大統領選挙と並立的に2段階以降の協議を見ていこうと思う。
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