福島原発事故メディア・ウォッチ

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東電の「行程表」:必要なのは「野心」ではなく堅実な知恵

2011-04-20 16:30:06 | 新聞
 東電の「工程表」について、東芝の元格納容器設計技術者の後藤政志さんが18日原子力資料情報室で話をされています


 何よりも、現在、格納容器の破損によって放射能が依然として大量に放出されているという事実が一番重い。だから東電は、どこからどれだけの放射性物質が大気と水に放出されているか、明らかにすべき。そういうことがわからなければ、この「工程表」が実現できるものなのかどうかもまったくわからない。

 4号機は、これまで疑われていたように使用済み燃料プールが構造的に破壊されているということ。2号機の圧力抑制室の壊れている箇所をおそらく東電では把握していると思うが、塞ぐのは困難。

 炉心を冷やしながら格納容器の隔離機能を回復するのが理想だが、現在もともとの冷却機能は壊れ、また炉心の密閉性は崩れ、圧力容器から格納容器、格納容器から外へつながってしまっている。冷却も閉じ込めもあいまいで、水を入れれば出てくる。どこかで閉じなければ、時間とともに汚染が広がる。

原子炉の冷却はできる状況になっているのか。格納容器の中を水浸しにして水没させる対策は、炉心に水が入らなくても圧力容器の外から冷やせるという発想で、他にどうしようもないときの手段。この対策にも問題がある。

注水による冷却、水漬け、窒素注入、テント覆いなど、現在の対策は事故の影響緩和のみ。本当は格納容器を塞ぎたい。塞げれば他のことはゆっくりやればいい。どこで塞げばいいか。現状認識をきちんとやって正確に調べて対処を考える。その間は緩和策をやる。手配は早く。

 あらかじめ対策をとっておけば放射能汚染水も放出せずに済んだはず。こっちをやっているからあっちがおろそかになるというのではなく、すべてを同時に一斉にやる必要がある。それには各分野の専門家が集まって、経験を積んだ技術者がさまざまな可能性を徹底的に議論したうえで、対策を決めるべき。 (後藤さんの話のまとめ、ここまで)

 読売新聞は、この工程表について、

『米メディアでは、「東電が野心的な計画を提示」(ニューヨーク・タイムズ紙)など肯定的な受け止め方が目立った。』
東電の工程表、海外は一定評価も楽観戒め

と報じました。この記事を読むとニューヨーク・タイムズが「素晴らしいプラン」とほめてくれたような気になりますが、それは大間違い。ニューヨーク・タイムズが「ambitious plan」と書いたのは「(できるかどうかもわからない)大風呂敷の計画」という否定的な評価です。
たとえば、東電の工程表が冷却装置を外付けするとしていることについて、ニューヨークタイムズは「これまでずっと内部の冷却装置の復旧が目標と言ってきた東電がそれはできないと認めていることだ」と言っています(日本のメディアにはそういう指摘はない)。そいうわけだから今度の工程表だって怪しいものじゃないか、という意地の悪い見方が「 ambitious 」という言葉になったのです。(Tokyo Utility Lays Out Plan for Its Reactors)

そもそも、「野心」といえば「原発で一儲けしようという野心」、「核で世界を支配しようという野心」というふうに使う言葉でしょう。「放射能を止めようという野心」なんて、まともな結果を出しそうもなく、先が大変不安になります。




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