福島原発事故メディア・ウォッチ

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御用学者を司法の前に引きづりだそう!その2:告発と捜査進む

2011-05-03 00:53:33 | 海外情報
2001年3月1日。チェルノブイリ原発事故による放射性物質の飛来・降下に関するフランス当局の対応が、甲状腺がん等の病気の深刻化をもたらしたとして、「フランス甲状腺病患者連合」(1999年結成)が、被疑者不詳のまま提訴。
提訴の数は、その後2002年4月までに、400件に達した。

同年11月。告発を受けた予審判事(事件の捜査を担当。その捜査結果を受けて別の担当者(検事)が告訴する)が、放射能の危険防止に責任のある省庁・公的機関を家宅捜索する。何千という証拠書類が押収された。この担当予審判事は、エイズ血液製剤問題も担当しており、後(2003年)には、パリの大審裁判所(地裁に対応)で、公衆衛生問題のチームを作ることになる。

予審判事の捜査は、チェルノブイリ事故当時にフランス当局が放射線リスクを意図的に矮小化して伝えたのではないか、という点に集中した。放射線防護当局の責任者であったペルラン氏(以下、ペ氏)は、何度も安全を強調する声明を出した。特に注目に値するのは、ペ氏がフランスにおける「放射線量の上昇は、基準となる上限値を大幅に下回っている」と断言してもいる点である。ペ氏とその機関は、天候状況が放射能雲をフランスから追いやる効果があるとも言った。それで、周辺諸国が事故後数か月も食品(葉野菜、乳製品)の流通規制をしているとき、フランスは何もしなかったのだ。

2002年2月13日。クリラッド(独立放射線情報・研究センター)が、地質学者アンドレ・パリ氏と共同で、チェルノブイリ事故の放射能によるフランス全土の詳細な汚染地図を作製し、このデータに基づいて、事故当時のフランス当局の隠ぺい工作を告発。

2002年2月26日。政府側も、世論に押されて調査委員会を作る。しかし、これの委員長になった男、アンドレ・オランゴ氏(André Aurengo以下、オラ氏)は、パリの由緒ある病院の放射線科科長であると同時に、なんとフランス電力公社の取締役も兼ね、音に聞こえた超原発推進派であった。オラ氏は2000年に「原子力エネルギーと健康」と題するレポートを公刊しており、その中で「原子力エネルギーは、もっとも環境汚染の少ない発電方法であり、健康に対する影響も(他の方法に比べて)最少に抑えられる」、と書いている。「犯人に事件の捜査を任せる」(元放射線医学総合研究所主任研究官・崎山比早子氏の表現)という日本でもおなじみの構図ができあがった。

2002年2月27日。ペ氏が1986年5月2日(前記事参照)に諸機関の送った「対策必要なし」のファックスが民間団体「原子力脱出」に暴露掲載(現在も同団体のサイトで見られる)。

2002年2月28日。予審判事が、事故当時のフランス当局による放射線量測定に関して複数の専門家による鑑定を依頼。2005年3月25日には、予審判事が原告側に鑑定結果を開示した。それによれば、放射線量測定には「間違い」ではなく、意図的に隠ぺいしようとした工作があったことが明らかにされた。「平均値」というトリックを使い、現実に存在したホットスポットを隠したのだ(その後、医学的な鑑定が特に被曝量の多かったコルシカ島の13の村に関して行われつつあった)。これを受けて翌4月13日には、クリラッド(独立放射線情報・研究センター)がペ氏を被疑者として取調べるように要求した。

こうした告発の動きに対して、オラ氏を先兵とする推進派もむろん黙ってはいなかった。2003年には、こんな奇妙なことも起こった。ペ氏の機関から発展した当局機関「フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)」が、その年の4月にチェルノブイリ事故による汚染地図を公表したのだが、これがなんと民間機関クリラッド(独立放射線情報・研究センター)が前年に公表したものに近かったのだ。オラ氏は気に入らない。そこで、同じ推進派仲間の政府機関を告発する手紙を環境大臣あてに書いた。いわく「このように方法論的に疑問の余地があり、おそらく誤っている結果が、何の科学的検証も経ずに公刊されたことに関して、暗澹たる思いを隠すことができないのであります」。

このオラ氏のほかにも、チェルノブイリの時に汚い仕事を敢然と(!)こなしたペ氏を支える応援団には事欠かない。フランス原子力協会会長は2004年9月に機関紙、その名も高く「原子力総合誌」に寄稿してぺ氏に以下のような賛辞を呈した、「その責務を全うすることにみられるペ教授先生の科学的厳格性と誠実さとは、まさに賞賛に値する」

その後ペ氏をめぐる裁判はどうなったか。実はこの3月、日本の福島が爆発を起こしているころ、あちらでも大きな動きがあった。 (以下次号)


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