ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ツナグ 想い人の心得」

2020年01月22日 | 書籍関連

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顔も知らない父親に、事故死した幼い娘に、片思いしていた彼の人に、若しも会えるなら。一生に一1だけの死者との再会を叶える使者「ツナグ」。長年に亘っ務めを果たした最愛の祖母から、渋谷歩美(しぶや あゆみ)は使者としての役目を引き継いだ。7年経ち、会社員として働き乍ら依頼を受ける彼の元に、亡き人との面会を望む人々が訪れる。依頼者達は、誰にも言えぬ想いを胸に秘めていて・・・。
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辻村深月さんの小説ツナグ 想い人の心得」は、 2010年に上梓された「ツナグ」の続編。「主人公の歩美は、彼が6歳の時に両親を失った。以降、彼は祖母・渋谷アイ子(しぶや あいこ)達と暮らす事になるが、彼女は“死んだ人間と生きている人間を会わせる窓口”で在る使者(ツナグ)という仕事をしており、歩美は其の仕事を受け継いだ。
」という設定。使者の役割をもう少し詳しく書くと、「死んだ人間Aに、どうしても会いたいと思っているB(生きている人間)が居るとする。『死んだ人間と生きている人間を会わせてくれる使者。』という存在を知ったBは、何とかして使者を見付け出し、直接依頼をする。使者はAの氏名や亡くなった日等をBから教えて貰った上で、Aに『Bが、会いたいと言っている。』という事を伝え、Aが会う事に同意すれば、決められた場所で一晩だけBをAに会わせる。会わせる事で金銭の支払いは全く発生しないが、会わせるにはAの同意以外に、他にも条件が在る。「死んだ人間が生きている人間に会えるのも、又、生きている人間が死んだ人間に会えるのも1度だけ。即ち、死んだ人間で在るAが過去に1度でも、生きている人間に会っていたら、又、生きている人間で在るBが過去に1度でも、死んだ人間に会っていたら、もう希望は絶対に叶わない。」と言うのだ。無条件に何度も会えてしまっては、ストーリー的に深みが増さないだろう。上手い設定だと思う。

実は、前作の「ツナグ」を読んでいない。8年前、原作を映画化した「ツナグ」の評判が良かった事から観に行き、そういう作品が存在する事を知った。確かに映画「ツナグ」は「見入ってしまう作品。」で、自分は総合評価「星3.5個」を付けた。

「死んだ人間に1度だけ会わせて貰えるなら、貴方は誰に会わせて貰うか?」と問われたら、自分は迷わずに亡き父親を指名するだろう。「亡くなった当時の姿を保つ父親が、当時の自分の年齢を遥かに超えてしまった息子に会うのは、とても驚きだろうな。」と思いつつ。

多くの人は恐らく、自分同様に“自分と近しい関係に在った死者”との対面を望む事だろう。だから、歴史研究の心得」というに登場する依頼人の高齢男性が「会いたい。」と望む死者は、実に意外だった。本人とは全く面識が無い、戦国時代に生きた、其れも一般的な知名度は全く高くない人物を希望したからだ。歴史が好きなので、「歴史上の人物に、実際に会ってみたい。」という気持ちは非常に理解出来るが、「死んだ人間に会えるのは1度だけ。」という“縛り”が在ると、普通は“自分と近しい関係に在った使者”を希望するだろう。だから、実に意外な選択だったけれど、ストーリーが進んで行く中で彼が置かれて来た環境が明らかとなり、意外な選択に納得。又、“実際に希望する死者と会った後の彼の思い”にも、心を打たれる物が。“亡き娘”と対面する2人の母親を描いた「母の心得」という作品と合わせ、非常に印象に残った。「人は大切な人との別れにより、大きなダメージを受けるが、同時に大きく成長もする。」のだ。

総合評価は、星3.5個とする。


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2 コメント

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Unknown (悠々遊)
2020-01-23 10:45:25
こんにちは
この物語や「黄泉がえり」など、死者との再会をモチーフにした話には心惹かれるものがあります。
一種の郷愁とでもいえるかもしれません。
自分なら誰との再会を希望するだろうかと。
でももう一歩踏み込んで考えると、「あの世」や「死者の世界」の存在が確かなら、そう慌てずとも数十年以内には自分もあちらに行くのだから、その時会えばいいようなもので(苦笑)。
ただ、現在の地球上の人口約70億人どころか、その何千倍何万倍もの死者が待ち構えている中、目当ての死者を探すのには、確かに「繋ぎの労を取ってくれる使者」の存在は欠かせないでしょうね。
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>悠々遊様 (giants-55)
2020-01-23 14:33:39
書き込み有難う御座いました。今回は、此方にレスを付けさせて貰います。

死者との再会をモチーフにした作品、結構在りますよね。其れだけ、悠々遊様同様に、そういう設定に惹かれる方が多いという事なのでしょう。斯く言う自分も、そういう設定に魅了されるし。

今回の作品に登場する「歴史上の人物(死者)との対面を望む。」というケースを含めると、目当ての人物を捜し出すのは“至難の業”なんてレヴェルじゃ無く、だからこそ“ツナグ”の需要が在るのでしょう。

特に考えもしていなかった事なのですが、“歴史上の人物”、其れも相当昔の人物と対面するという場合、ツナグ及び対面希望者がどうコミュニケーションを取るかというのが問題になるというのを、今回の作品で「そうだなあ。」と感じました。今とは言葉遣いが大きく異なるだろうし、其処に“方言”とかが介在すると、「現代で、外国人とコミュニケーションを取るよりも難しい。」という可能性が高い訳ですから。
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