増え続ける廃村

先日、「母国を捨てて」という記事を書いたが、その元となった特集記事「人が減る！　ニッポン力で挑む」の第四弾が、「２０ＸＸ年、故郷の村が消えた。」というタイトルで載っていた。これ又、かなりショッキングな内容だったので、触れてみたい。

今から３年前、青森県境に程近い秋田県鷹巣町馬屋沢という村で、８２歳の男性が亡くなった。その事実は、この村にとって非常に大きな意味合いを持っていた。何故ならば、彼はその村に住む最後の一人で、彼の死を以って嘗ては２０軒程在った集落は完全に無人となってしまったからだ。彼には養子が居たが、生活に不便という事で１０年前に村を離れている。息子から一緒に村を離れる事を勧められた彼だが、田畑を守りたいと村に残る道を選んだという。水道も敷かれていない村で、彼は生涯を終えた。

この様な廃村は増えている。秋田県では、戦後、無人となった集落は約１３０ヶ所を数えるのだとか。高度成長期には、豊かな生活を求めて若者が都会に流出し、過疎化した村は再編で消滅した。しかし、最近では残された集落で、最後の高齢者が亡くなった事により、村が消滅したケースが増えているという。秋田県の人口自体も、ピークだった１９５５年の１３４万人から、２０００年には１１８万人迄落ち込んでいる。人の減少が地域の活力を奪い去る。秋田県は自殺率が日本一高いという不名誉なデータを残し、その動機は経済苦が最多を占めているという。秋田県の集落は、日本の多くの地域の”未来”を映し出しているのではないかと記事では指摘している。

国立社会保障・人口問題研究所の推計に拠ると、２０３０年にかけ秋田県、山口県、そして長崎県は２０％以上人口が減り、全国約３，２５０の市区町村の内約１６０が半数以下の住民数になってしまうという事だ。首都圏や地方の主要都市には人が集中するものの、その人口は微増に留まり、高齢化だけが急速に進み行くという構図。自治体間で人を奪い合う”人口争奪戦”の激化を予想する声も出ているという。

群馬県新治村も進行する過疎化に頭を悩ましていた村の一つだったが、古い町並みが残っていた事を利用し、周囲の景観を住民挙げて宿場町風に統一した。今から２０年程前の事だ。多くの民家では、住民等が和紙や藍染を観光客に教え始めた。この様な古き景観と体験型の観光が功を奏して、人口約７，２００人の村に毎年約５０万人の観光客を呼び込む迄になった。「”定住人口”が減っても、”交流人口”を増やす。」という選択肢も有りではないかと記事は結んでいる。

過疎化が進む地方都市の数が少なくないのは知っていたが、こうも具体的な現実を見せ付けられると考えてしまう。老若男女を問わず、母国に見切りを付けて海外に流出する人は増え、国内に目を転じても地域のバランスは著しく偏りの度合いを増す。経済大国を任じ、世界各国に対し”ＯＤＡ”という名の資金のばら撒きを行なっている国の将来が、かくも寂しいものなのか。

国民個々が政治というものと真面目に向き合い、真にヴィジョンを持った政治家を選出する。ヴィジョンを持った政治家達は、己の信念に従って国益の為に身命を賭して活動する。そういった、真面目な政治が成されない限り、この国の先行きは非常に暗いのではないだろうか。