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「エジプト:人気TV司会者に名誉毀損の疑いで逮捕状」(3月31日、毎日新聞)
エジプトの検察当局は3月30日、ムルシー大統領の風刺で知られる人気TV司会者のバセミ・ユセフ氏を、大統領やイスラム教に対する名誉毀損の疑いで逮捕する様命じた。ユセフ氏は31日朝に検察に出頭し、事情聴取後、保釈金1万5,000エジプト・ポンド(約21万円)を払って、即日釈放された。ムルシー政権は反政権派に対する強硬姿勢を打ち出しているが、経済が低迷する中、反発は強まる一方だ。今回のユセフ氏への捜査も、言論統制として、国民の反感を買う可能性が高い。
ユセフ氏の本業は心臓外科医。2011年のムバーラク大統領退陣後、ムバーラク氏等を風刺した動画をインターネットで公開して人気を集めた。人気に着目したエジプトの衛星放送局と契約し、2012年11月から週1回のトーク番組の司会を務めている。
過去の番組では、ムルーシ氏を「スーパー・ムルーシ」と呼び、指導力が伴わない権力者として描写。ナチス・ドイツのヒトラーや旧ソ連のスターリンを紹介後、ムルーシ氏の写真を示し、「此れが独裁者だって。」とコメントし、笑いを誘っていた。
ムルーシ政権は最近、反政権派への言論統制を強め、3月24日には大統領自身が「私や国家に対する行き過ぎた侮辱が在る。国を守る為に、必要な措置は採らなければならない。」と声明を出した。
ユセフ氏は検察に出頭した際、大学の卒業式等で被る黒いハット帽を手に登場。ムルーシ大統領が3月18日に訪問先のパキスタンの大学で哲学の博士号を受けた時の衣装が話題になっており、ユセフ氏の「演出」は集まった支持者の喝采を受けた。
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独裁者だから、言論封殺を行うのか?それとも、言論封殺を行うから、独裁者になって行くのか?「鶏が先か、卵が先か」と似た感じは在るが、兎にも角にもエジプトでは、ムルーシ大統領による言論封殺が酷いらしい。
国民の生殺与奪権を握る権力者に対し、厳しい目を向けられるのは当然の事。度が過ぎた風刺はどうかと思うが、強権的な姿勢を見せる権力者に対しては、強烈な風刺も問題在るとは思えない。
我が国でも「自身に不都合な事柄を、不当な形で封じ込めようとする風潮。」が強くなっている。「日本でも嘗て、言論封殺が行われた時代が何度も在った。」という事実、そして其の事で国家がとんでもな方向に突っ走ってしまった事実を、多くの人が知らないといけないと思う。
「民主政治の成熟」とかなんとか言いますが、お手本国の北欧諸国、ベネルクス、英仏独にしても長い時間かけていますし、だいたいその芽はフランス革命あたりの啓蒙思想であったり、北欧やオランダが顕著ですが、プロテスタント一派の質実剛健な個人主義が基礎にあるように思うのです。実際、カトリック国で民主主義や個人主義、不可知論的無神論が根付いているフランスというのはかなり異質な印象です。同様にチェコがそうなのですが、ここは共産主義だったからというありがちな単純な観点では測れず(同じ境遇のポーランドは非常に熱心なカトリック国)、宗教不信に関してはヤン・フスの火刑にまで話をさかのぼることが出来ます。
失礼ながら、イスラム教の国々は北西欧の18世紀か、19世紀の状態だと思って差し上げればよいかと思います。同じ文明国ではないと思えば気も楽です。
確かに「国情」というのは、国民の言動に大きな影響を与えるでしょうね。「『権力』に対して『反発』するのが一般的な国。」も在れば、「『権力』に『従う』のが一般的な国。」も在る。日本の場合、特に関西圏では「『御上』への『反発』を良しとする気風。」が一般的に在ると言われ、個人的には好ましく思っていますが、其の一方で「一旦流れが変わると、『権力』に身を委ね勝ち。」というのが、日本人の国民性として在るのも事実。そういう意味では、日本人って世界的に見ると面白い存在と言えるかもしれません。