先日、ヴァラエティ番組「ナカイの窓」【動画】には4人の作家が出演し、作家業に付いての裏話を披露。「最高年収は2億円。」(石田衣良氏)、「(全く無関係な)別の作品なのに、登場人物に同じ名前を付けてしまう事が在る。」(湊かなえさん)、「小説は布団に寝そべった状態で、手書きで書く。」(西村賢太氏)等、興味深い話が多かったのだけれど、中でも「短い映像を見た上で、即興にて短編小説を仕上げる。」という企画は面白かった。短時間で四者四様の作品を仕上げていたのは、「流石、プロだなあ。」と感心させられたもの。
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経済成長は行き詰まり、列強が資源と市場を奪い合う高度植民地時代。氾帝国、エウロペ連合、アメリア民主国の三大列強による世界の寡占化が進んでいた。其の中で劣勢を強いられている日乃元皇国だが、植民地支配の中枢を担う進駐官を育てる全寮制の東島進駐官養成高校には、国中からエリート中のエリートが集まっている。
此処に新入生として入学した逆島断雄(さかしま たつお)。逆島家は、皇室を守護する近衛四家の1つとして様々な特権を与えられていたが、戦死した父・靖雄(やすお)が国家反逆罪に問われた為、全ての特権を奪われ、没落していた。その為、断男は、争いを嫌う性格にも拘らず、家の再興を担わされていた。
優秀な軍人を育てる為、非人間的とも言える厳しいカリキュラムの中で、断雄は同室同班となった仲間、あらゆるジャンルで学年1位の超イケメン・菱川浄児(ひしかわ じょうじ)、硬派の柔術家・谷照貞(たに てるさだ)、軟派だが度胸が据わっている鳥居国芳(とりい くによし)の3人との友情を育んで行く。
ところが、入学早々に起こった謎の狙撃事件を皮切りに、断雄の周りでは次々と不可解な事件が起こる。そして、其れ等の事件の裏側に、皇室を巻き込んで国家転覆を謀るクーデター計画が浮かび上がって来た。其の勢力にとって、反クーデター派の信望が厚い逆島家の子息・断雄は抹殺すべき対象だったのだ・・・。
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「ナカイの窓」に出演していた石田衣良氏の小説「逆島断雄と進駐官養成高校の決闘」。タイトルを初めて見た時、「石田氏、戦記物にも手を広げたのかな?」と思ったのだが、内容的にはライトノベルといった感じ。王子様キャラや熱血キャラ、硬派キャラ、生意気な御嬢様キャラ等、イラストも含めて、そういう雰囲気が前面に出ている。
実在する国名と重ね合わせてしまう「氾帝国」、「エウロペ連合」、「アメリア民主国」、「日乃元皇国」という国々が、植民地拡大を競う時代の話。優秀な軍人を育てるべく、日乃元皇国の東島進駐官養成高校にはエリート中のエリート達が集められているが、其処で次々と不可解な事件が発生する。「逆島靖雄は、本当に裏切り者なのか?」や「何故、逆島断雄は命を狙われ続けるのか?」等、幾つかの謎が存在し、其れ等が解明されて行く過程は悪く無い。
又、最近の石田作品は過剰な性描写にうんざりさせられる事が多いけれど、此の作品はそういう所が無いのも良い。
でも、嗜虐的な描写が少なく無い事、不自然な展開、余りにも後味の悪い結末(此処何年か読んだ作品の中では、トップクラスの後味の悪さと言っても良い。)等、低い評価を下さねばならない点が多過ぎる。
すっきりしない終わり方をしているが、どうやら現在、続編が連載されているらしい。其の内容によっては、“全体としての評価”は変わるかもしれないけれど、少なくとも此の作品だけで言えば、総合評価は星2つ。