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ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

下山事件 ~戦後史最大のミステリー~

2004年09月22日 | 歴史関連
戦後史最大のミステリーとも呼ばれる「下山事件」を扱った本を読み終えた。森達也氏著の、タイトルもそのままズバリ「下山事件(シモヤマ・ケース)」。

GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)による占領政策が執られていた1949年の日本。未だ未だ敗戦の影を色濃く残していた時代だが、この年に「下山事件」は起こった。7月5日の朝、初代国鉄総裁の下山定則氏は出勤途上に、公用車を待たせた状態で、「5分位だから待っててくれ。」と運転手に言い残し、三越日本橋本店に入った。そして、彼はそのまま行方が判らなくなる。

謎の失踪から15時間後、常磐線北千住駅綾瀬駅間で、下山総裁は発見される事になる。列車に轢かれバラバラとなった轢死体の状態で。

当初、他殺説と自殺説両方が論議された。他殺説の根拠は、生きている人間が列車に轢かれた際に生じる生活反応が殆ど見られなかった事で、死後轢断されたのではないかというものだった。対して、自殺説の根拠には、下山総裁が失踪前日に、3万7千人の国鉄従業員に対して解雇通告を行なった事を悩んでいたというものだった。

政府首脳や国鉄幹部は、事件発生当初から、共産党員による犯行を匂わせていた。大量解雇に反対する労組が、共産党員と組んでこの犯行を成したのだと。そして、下山事件発生後僅か1ヶ月強の間に、国鉄絡みの不可解な事件が連発する。三鷹事件松川事件である。この2つの事件が起きていく過程で、捜査本部は多くの共産党員や労組幹部を逮捕して行く。(最終的に、逮捕された全ての人間と言って良いが、無罪を勝ち取る事になる。無罪にならなかった人間も、再審請求中に獄死しており、その意味で、有罪と断じるのには無理がある気がする。)

そして、これ等の逮捕劇と相前後して、下山事件は何故か自殺説へと傾いて行く。各方面から圧力が掛けられたと噂されるが、結局、下山総裁は自殺したのだという結論となった。

圧力を掛けたのはGHQではないか?という説が根強い。松本清張氏は、著作「日本の黒い霧」の中で下山事件を、GHQの下部機関であるCIC(敵諜報部隊)が計画した謀略であるとしている。

当時の世界状況は、中国では共産党が全土を掌握し、朝鮮半島では南北の対立が激化、米国は力を増すソ連と冷却化の一途と、共産主義が猛威をふるっていた。日本でも、共産党が議席数を大幅に増やしており、このままでは日本も赤化すると危惧した米国が、共産勢力の弾圧&弱体化を企図して、これ等3つの事件を計画&実行させたのではないかと言うのである。

事実、これ等の事件以降は、日本に於ける共産勢力は弱体化して行く。これは、時の政府にとっても望む所だったろう。つまり、米国と日本政府の利害が一致していたとも言える。

話を元に戻すが、森氏の本では様々なビッグ・ネームが登場する。後の総理となる佐藤栄作氏の関与も匂わせている。しかし、全体的には余り目新しい内容が見当たらず、その意味では失望。唯、下山事件というモノを整理して理解していく上では、興味深い1冊と言えよう。

結びで森氏はこう書いている。「下山事件は終わっていない。その後の時代は、未だ続いている。何故なら僕等は未だ、途中下車もしていないし、路線を変える事すらしていない。」と。

確かに、今の日本繁栄を考えた場合、下山事件は大きな分岐点になった事は否定出来ない。その後に起こった朝鮮戦争で、日本は特需景気に沸く事となる。共産党勢力が勢いを増していたならば、この特需を享受出来ただろうか?そして、その特需景気が高度成長の時代へと日本を誘って行く。経済面だけではなく、政治の枠組みに於いても、下山事件以降、根本的に何も中身が変わっていないと言えるのだから・・・。
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8 コメント

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下山事件 (kazu-n)
2004-09-22 05:31:57
TBありがとうございます。

森達也の“下山事件”。実は僕も読みました。

森の数ある本の中でもこの本は結構異色ですよね。

実は、去年のいまごろ諸永裕司の「葬られた夏」を先に読んでいたのです。そこへ、何も知らずに森の本が出版されて「最近、下山事件がやけにホットだなー」などと思って読んでみたらびっくり!!!

正直、ちょっとだまされた感じです。



同じ、取材をもとにして書かれているため、内容はほとんど同じ。むしろ「葬られた夏」の方が最後にアメリカ取材の話がくっついている分、客観的に見るとおもしろいのです。



森の本を読む限り、諸永側に完全に出し抜かれた格好ですが、これが裁判にならないのだから日本社会って本当にファジーですよね。



僕は今アメリカに住んでいますが、アメリカじゃ絶対にありえないことだと思います。

そもそもアメリカだったら取材を開始する時点で記事のpriorityに関しての問題はクリアーされてるでしょうが、、、



ということで、この2冊を読み比べてみるっていうのも一興かもしれません。



本文と直接関係ない話題ですみません。

また遊びにきます。今後とも宜しくお願いします。
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戦後史 (オレdays)
2004-09-22 07:48:46
トラックバックありがとうございました。



下山事件は、かすかにテキストで習ったぐらいだったので、

興味深く読ませていただきました。
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戦後最大のミステリー (ともや)
2004-09-22 08:23:06
こんにちは、TBありがとうございます。

森達也氏の著書は読んでないのですが、

「小説・下山事件-謀略の鉄路」は読みました。

事実を踏まえながらも、あくまで小説なんで、エンターテイメントなミステリーだったのですが、なかなか面白かったです。

森達也氏の著書は問題を取り上げた「放送禁止歌」を読みましたが、彼の著書は読みやすくて面白いですよね。

この「下山事件」も読んでみようと思います。
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TBありがとうございました (schade)
2004-09-22 09:20:43
TBありがとうございました(たしか二度目か三度目と記憶しています。読んでくださってありがとうございます)。下山事件については、わたしはGHQがやはり黒幕かと思っています。勝手に日本共産党の政治活動を許可しておいて(アメリカには共産党はありませんものね)都合が悪くなると弱体化させる。いかにもアメリカのしそうなことだと思っています。



ところで、TBをくださった私の記事(宅間死刑執行)と直接関係ないように思うのですが、件の記事にTBくださった理由をお聞かせ願えれば幸いです。
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>kazu-n様 (giants-55)
2004-09-22 13:46:03
初めまして。書き込み有難うございました。



基本的に、書き込んで下さった方のブログに、直接レスを付けさせて戴く形を取っているのですが、kazu-n様の御名前でのブログが見当たりませんでしたので、こちらに書き込ませて戴く失礼を御許し下さい。



近・現代史が好きで、特に戦前~戦後に到る時代に強い興味を持っています。戦国時代とかも確かに面白いですが、どうしても時空を超えた世界といった感じも有り、人々の生々しい感情や息遣いが伝わって来そうな戦前~戦後史に魅力を感じてしまいます。



戦後事件史を紐解く上で、多くの謎の事件に接する事となりますが、「帝銀事件」と「下山事件→三鷹事件→松川事件」は特に謎が多いものだと思います。



森氏の本は、ブログ内でも触れました様に、下山事件から松川事件に到る流れを整理するには、悪くないものだと思いますが、如何せん目新しい内容に乏しいので、どうしてもイマイチ感を覚えてしまいました。



「諸永氏サイドに完全に出し抜かれた格好」というのは、その通りでしょうね。訴訟社会の米国では、まず有り得ない事だとも思います。しかし、何故にこの話を森氏は盛り込んだんでしょうね?マスメディアの過度な商業主義やモラルの無さに触れた事によって、肝心な下山事件への焦点がぼやけてしまった気もします。



これからも宜しく御願い致します。
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他にも (ますだ)
2004-09-23 16:44:31
安部譲二の「日本怪死人列伝」という本、もし読んでなかったらぜひ読んでみてください。



 下山事件以外にも、「新井将敬」、「永野一男(豊田商事会長)」、「尾崎豊」、「力道山」、「村井秀夫(オウム真理教幹部)」、「ロッキード事件―田中総理運転手・笠原政則」、「御巣鷹山の五百二十人」などの事件について、書いてます。



日本怪死人列伝■安部譲二著

http://www.fusosha.co.jp/senden/2004/045588.html

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下山事件 (おいら)
2004-09-24 19:10:58
偶然にも今日、某古本屋でこの本が売ってました。下山事件については以前に麻生幾さんの「封印されていた文書」を読んだ際興味を持っていた上に、著者の森達也さんもオウムのドキュメント「A」から知っていたので買う条件は揃っていたのですが、店内を回っているうちに買うのを忘れてしまいました。



オウム関連やグリコ森永、そして下山事件など表には出てない(出せない)ような問題は他にもたくさんあるのでしょうね、怖くなります。
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森達也がコテンパン (saheizi-inokori)
2005-08-28 11:12:20
柴田本では諸永に好意的ですね。
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