ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

過ぎた欲望の行き着く先は

2005年04月20日 | 其の他
昨日、車で移動している際に流していたラジオ番組で、面白い話を耳にした。アメリカ在住の日本人映画評論家が語っていた話だったのだが、その事に付いて少し書いてみたい。尚、時々受信状態が悪くなった為、詳細に於いて多少の差異が在るやもしれない。記事を書くに当たって、事実関係のチェックは行なったものの、万が一誤りが在った場合は遠慮なく御指摘戴きたい。

話は2001年10月7日に遡る。場所はカリフォルニア州に在るサンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地パシフィックベル球場。その日の球場内は、異常とも言える過熱ぶりを見せていた。その理由は、マーク・マグワイアー選手が1998年に記録した年間最多ホームラン数70本を既に打ち破ったバリー・ボンズ選手が、この最終戦で記録を何処迄伸ばせるかに注目が集まっていたからだ。否、正確に言えば最終戦で彼のホームランが飛び出した場合、メジャー年間最高ホームラン数を達成した記念ボールが、誰の手に渡るかに注目が集まっていたのだった。

マグワイアー選手が、当時の年間最高記録である70本を達成した際、その記念ボールをキャッチした人間がオークションにそのボールを出品した所、日本円で約3億7千万円*1の値で落札された。記念ボールをキャッチした人間は、一瞬にして億万長者となった訳だ。その記録を打ち破った記念ボールならば、それ以上の値が付くと人々が夢想したのも致し方ない事だっただろう。

ロト(宝くじ)で尋常ではない高額の当選者が出現するアメリカに在っても、そういった高額当選を掴み取る確率は、飛行機事故に遭う確率よりも低いという。しかしながら、万が一最終戦で記録を更に塗り替えるホームランをボンズ選手が放ったとしたら、億万長者への道を切り開いてくれるであろう記念ボールをキャッチする確率は、球場収容人数の6万3千人分の1、否、実際にはホームランが飛び込むのは外野席に限られるのだから、確率は倍以上にに高まるだろう。ロトの高額当選確率よりも遥かに可能性が高いという事だ。

そして、期待通りボンズ選手は73号のホームランをライトスタンドに放り込む事になる。その記念ボールが誰の手に渡ったかは、当時のニュースでもかなり報道されたので御存知の方が多いと思う。一旦はアレックス・ポポフ氏(37歳)のミットに収まったものの、殺到した観衆に押されてよろめいたポポフ氏のミットから、そのボールは無情にも零れ落ちてしまった。転々と転がるボールを掴み取りポケットに仕舞い込んだのは、日系アメリカ人のパトリック・ハヤシ氏(36歳)だった。御宝ボールを巡って、ポポフ氏とハヤシ氏は所有権を互いに主張し合い、その判断は裁判に委ねられる事となった。

裁判では、両者の人格攻撃が行なわれる等、泥沼化の様相を呈した。最終的に裁定が下ったのは、試合から1年以上経過しての事だった。

19世紀後半、5人の少年達がたまたま拾った靴下の中に700ドルの紙幣が入っていた。その所有権を巡って裁判が起こされ、結果的に5人で等しく分け合う様にとの判決が下ったのだとか。そんな古い判例(良くそんなのを見付け出して来たものだと感心してしまうが(笑)。)を適用して、記念ボールはオークションに掛け、その落札額を2人で等しく分ける様に。との事だった。ここ迄の話はニュース等で見聞していたが、それから先がどうなったのかは知らなかった。

記念ボールはオークションに掛けられたのだが、その落札額は日本円で約5,500万円*1にしかならなかったのだとか。何でも、”たかが”ボール一つを巡り、醜く争い続けて来た彼等の姿に嫌悪感を覚えるアメリカ国民が多かった事が、この予想を大幅に下回る落札額へと結び付いたとも言われている。この結果、両者は折半額の約2,750万円を手に入れる事となる筈だったのだが・・・。

億万長者を夢見た両者は、裁判に勝つ為に腕利きの弁護士を用意した。その雇用費は日本円で各々5千万円近くに上ったというのだ。つまり、両者共2千万円以上の持ち出しとなり、億万長者どころか破産宣告をしなければならない事態に追い込まれた訳だ。

ポポフ氏に付いた弁護士は雇用費の支払いを強行に求め、裁判で係争中なのだとか。又、ハヤシ氏に付いた弁護士は、「欲に目が眩んで、愚かしい裁判を延々と行なって来た。」事への猛省をハヤシ氏に求めた上で、莫大な雇用費の支払いを免除したのだとか。ハヤシ氏は、「人間を磨き直したい。」として大学に入学したという事だ。

過ぎた欲望の行き着く先には、必ずしも幸福が待っているとは限らない。という、何かイソップ物語等の寓話を思わせる話だ。

やれメディアミックスだ何だとぶち上げ、結果的に400億円を越える”利益”をまんまと手に入れ、その利益を新たなM&Aに投じたいとしゃあしゃあと言ってのけた堀江社長。自分は一貫して、彼に胡散臭しか感じていなかったが、本性を遂に曝け出したといった感じだ。

人の褌で相撲を取る。」行為に嫌悪感を覚える自分だが、利益追求の一手段としてこういった手法が在る事を完全否定はしない。自分には受け付けない遣り口で在るが、法律の範囲内で在るならば致し方ない事だろう。

唯、堀江氏の一連の動きに対し、「新しいビジネスモデルだ。」とか「素晴らしい企業家だ。」という声が少なからず在った事には、改めて異を唱えたい。結局は、「乗っ取り屋」と称された横井英樹氏の手法を”微妙に”変えただけの、古臭い手法に過ぎないと思う。それならばそれで、最初から妙な御為倒し等並べ立てずに、「金を儲けて何が悪いんですか?金の為なら何でもしますよ!」といった”本音”を吐いた方が、余程好感は持てただろう。(実際にはもっと嫌悪感を持ってしまうかもしれないが(笑)。)

堀江氏の欲望が何処迄拡大して行くのか、それは彼の勝手である。だが、ボンズ選手の記念ボールを巡って繰り広げられた事態が、どの様な結末を導き出したかを考えると、彼の欲望の果てに薔薇色の将来が必ずしも待っているとは思えないのだが・・・。

*1 当時の換算レートに基づく。
コメント (3)    この記事についてブログを書く
« 勝負師ヨシノブ | トップ | ダン・ミセリはドン・マネー... »

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こんにちは (ボス)
2005-04-20 11:34:54
興味深く記事を読みました。

大岡裁きの三方一両損の場合は「相手のため」を各々が思っての事ですが、欲に目がくらんで「自分のため」だけを思うと・・こういう結末が待ってるんですね。関係ないですけど明石家さんまが「ため、は自分のためにしか使ってはいけない。相手のためなんてうそ」と名(迷)言を吐いたことがありますが彼のコメントが聞きたいなと、ふと思いました^^

長々と裁判で争ったようですね。もっと早く和解すれば損害も小さかったんでしょうが・・。



和解といえば、日枝社長もホリエモンに対して、はらわたが煮えくりかえる思いをしながらも、既存の体制を莫大な出費をすることで維持したってことは、やはり規制で守られた、本当に美味しい業界なんだろうなあと、いや、もしかしたら自宅建設費問題という痛いところを突かれたのかなあとか、いろいろと邪推してしまいます。

ホリエモンの経営手腕・手法は確かに胡散臭いと「思いますが、昨年の「新規参入」で吹いた風(特に若者からの)を巧く利用して、同じく若者に人気のあるフジサンケイに着目したあたりは、やはり風を読み取る才覚には長けてるんでしょうね。

今年もまた「想定の範囲内」が新語・流行語大賞で何かしら受賞しそうです。
返信する
Unknown (餅きなこ)
2005-04-20 20:03:36
 あんま、嫉妬や欲ってよくないみたいですね。守護霊さんがちゃんと見てるみたいですね。あんまよくない人から離れるみたいです。浮世離れした話だと思いますが、そう考えると、人にやさしくなれるというか、余裕ができます。余裕ある人ってイイ顔になる気がするの。だから、きなこは、守護霊さんに見守ってもらえるように、いい態度で、いろんな人に迷惑をかけないように心がけたいですね。
返信する
ITって (ふうてんの猫)
2005-04-23 13:15:42
ITバブルを経験した人たちや、そのバブルに引かれた人たちがいるIT業界というのは、ミニホリエモンがたくさんいる業界です。



ただ、当時ITコンサルやITベンチャーに行く人たちはハイリスクハイリターンだ!! といっていましたが、その言葉どおり、一部のホリエモンや孫はハイリスクを得ましたが、当然の帰着としてハイリスク側にいるわけで、時々中央線を飛び込んで止めたりしています。



ITバブル当時はニューエコノミーとか騒ぎ立てましたが、やっぱり今回も適当なことを言う評論家は多かったように思います。



ただ、今回の件に関して言えば、やはりフジ側に相当の過失があったなぁと思います。

上場するということの覚悟が足りないし、人を批判する側の時は意気揚々なのに、自分たちが矢面にたてばだんまり。

所詮は国有の電波を切り売りする商人の魂しかもっていないことを衆目の下にさらしたと思います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。