Guardian / The Yellow And Black Attack... (1999)

2007-09-02 00:17:30 | Music > HM/HR

Guardian:
Jamie Rowe - vocals
Tony Palacios - guitars
David Bach - bass
Karl Ney -drums

アメリカ出身のクリスチャン・メタル・バンド Guardian が教祖 Stryper のデビュー作 "The Yellow And Black Attack" を "まるごとバナナ" してしまったというかなり気合の入ったカヴァー・アルバム。誰しも一枚くらいは「○○の演奏であのアルバムを聴いてみたい」という願望を持っていることでしょう。この世の中に Guardian の演奏で Stryper のデビュー作が聴きたいと願った人がどれだけいたのかは知りませんが、彼らは本当にやり遂げてしまいました(笑)。しかもアルバムのタイトルが "The Yellow And Black Attack Is Back!" だなんて、何とも粋ではありませんか!(記事タイトルでは文字数の制約上、一部省略)

こういう性格のアルバムをリリースした以上、リスナーの関心が「どれだけ似ているか」に集中してしまうのはある程度避けられない事実です。もちろん裏をかいて、まったく異なるサウンドで攻めてくるという作戦も考えられないではありません。世の中には様々なスタイルのカヴァー・アルバムが存在しますからね。ただ本作に関して言えば、オリジナルを踏襲したアレンジで、Stryper に対する敬意がストレートに伝わってくるアルバムです。つまりスタイル的には正攻法ということですね。まあ実際に似ていると感じるかどうかはネット上でも賛否両論あり、聴く側の感性に委ねられるようですが、ここでは僕なりに思うところを書いてみようと思います。

オリジナルのまんまという一歩間違えばギャグにしか映らないアルバム・ジャケット。それが実際に音を聴いてみるとこだわりの一つとして感じられるから不思議です。ヤリ過ぎもここまで徹底すれば爽快感すら与えてくれますね(以下は本家版のジャケット)。



そんなわけで中身のほうは至って真剣です。アレンジはオリジナルに忠実ですから、原曲がわからないという非常事態に陥ることはまずありません。それならば STRYPER 度は高いのかというと、実はそうでもないんです(笑)。ここからは個人的な所感になりますが、正直サウンドはまったく別物です。もちろんアルバムを聴いてイメージするのは Stryper です。しかしそれはあくまで聞き手である僕がオリジナルのバージョンを知っているからに過ぎません。楽曲に囚われず各パートに耳を傾けてみると、やはりバンドは自分達の音を出しているんですよね。

まずヴォーカルですが、洗練されたハイトーン系の Michael Sweet とは対称的に Jamie Rowe の唄い方はかなりハード・ロック然としています。大味ではありますが、声のコントロールも効いていて、なかなか上手いヴォーカリストだと思います。オリジナルよりも楽曲がハードに聞こえるのは、パワフルかつワイルドなこの声質に依るところが大きいですね。これはこれでカッコいいのですが、Stryper を彷彿させるスタイルではありません(笑)。

次に Stryper サウンドの要であるバッキング・ギター。ツイン・ギター編成であるかはさほど重要ではなく、Tony Palacios のザクザクとした質感のギター・サウンドがすでに Stryper のそれとはかなり異なる印象を与えています。オリジナルで聞ける独特のミュート音も Stryper らしさを感じさせる一つの要因でしたが、この辺りの再現性も低いと言わざるを得ません。ギター・サウンドに絞れば、Mass の "Voices In The Night" に金メダルを与えたいところ。本作は残念ながら予選落ちですね(笑)。ただし似ているか否かを問わないのであれば、この Tony Palacios というギタリスト、テクニックもサウンド・メイキングもかなりハイレベルです。ちなみに Guardian 以外の活動としては Mastedon のアルバムや Michael W. Smith のツアーなどに参加しているそうです(やっぱりクリスチャン系・・・笑)。

最後はドラム・サウンドについてです。良くも悪くも Stryper のドラムはクセが強いですから、リスナーに依って好き嫌いがハッキリ分かれるところだと思います。個人的には Robert Sweet のポンポンと甲高いスネアの音や単調なフィルがあまり好みではないので、本作のタイトで抜けの良い音は大歓迎。ただ、それが Stryper っぽいかと言えば、やっぱりノーです(笑)。

以上をまとめると、メロディやアレンジに関してはオリジナルそのものですが、サウンドからは Stryper っぽさはほとんど感じられません(あくまで個人的な所感ですよ)。全体的な印象であれば Mass の "Voices In The Night" のほうがよっぽど "ストライパーしている" と思います(笑)。聞き手の関心を「どれだけ似ているか」に集中させてしまうと、こんな結論になってしまいますね(苦笑)。

では本作は単なる企画モノに過ぎない退屈なアルバムなのかというとそんなことはありません。むしろオリジナル以上に骨太で正統派のハード・ロックに仕上がっていると思います。バンドのテクニックもおそらくは本家を上回っているでしょう(苦笑)。僕は変に Stryper を意識せず聞くほうが楽しめるアルバムだと思うのですが、皆さんはいかがですか?(笑)