12時20分、時刻表通りに井川駅を発車しました。カタンと揺れてゆるゆると動き出すディーゼル機関車DD20形特有の駆動に引かれて5輌の客車がカーブの上を動き始めました。最後尾のクハ603客車に乗ったことで、その前の5輌の動きがよく見えました。
井川駅内の二つの側線への分岐を通りました。一番西側の、使われていない側線も、ポイントの辺りでは落ち葉が無くてレールが見えました。保線の関係上からか、中央の側線に繋がるポイントあたりは綺麗に掃除されているようでした。
後ろを振り返って、二つの側線を見ました。今も使用されている中央の側線と、全然使われずに落ち葉に埋もれている西側の側線との対照的な有様が印象的でした。
こういう景色をNゲージジオラマで再現すると面白いかもな、と考えましたが、仮に模型の再現時期を現在でなく昭和か平成の頃に設定した場合、西側の側線も使われていたそうなので、いまとは違う状態に再現して作ることになります。
昔の井川線の写真はネット上でも豊富に見られますので、例えば観光客が多かった昭和期の、全盛期の井川駅の光景などを見ますと、現在の閑散とした情況とは全然違って、登山客や井川ダム湖遊覧の観光客が大勢行き来して賑わい、売店も営業していて活気に溢れている様子がうかがえます。
井川駅横の61番トンネルに列車が入っていきました。さようなら井川駅。次に来るときは嫁さんも一緒だろうと思います。
井川線で最も長い区間である、閑蔵駅までのルートをゆっくりと、僅かに下り気味に走るアプト式列車。
最後尾のクハ603客車に乗ったのは正解でした。車内は私だけでまたもや独占貸し切り状態でした。そして窓から前を見るとカーブの度に前の機関車や客車がうねうねと動くのが見えて楽しめました。
サイズが小さな車輛だけに、雄大な大自然のなかで見ていると、模型みたいに、ジオラマの中の模型列車みたいに見えてくるのでした。その感覚が、Nゲージジオラマでの再現製作にて大変参考になる、と思いました。
眼下に大井川。その後、奥泉ダムも見えました。
斜面に広がる杉林の下を走るアプト式列車。時折、DD20形機関車が「ボーン」と独特の警笛を鳴らしていましたが、踏切が一切無い区間でしたから、野生動物が線路に入ったりするのを防ぐためだったのでしょうか。
崖上にどこまでも続く杉林。木漏れ日がチラチラと差して、アプト式列車の赤い車体を白っぽく染めたり。カーブの連続で徐行し、時々増速、減速を繰り返していました。「井川線サウンド」と呼ばれる独特のキイキイという摩擦音も間断なく響いていました。
そして閑蔵駅の手前のトンネルへ。
トンネルを抜けて閑蔵駅へ。
12時39分、閑蔵駅に停車しました。3人ほどの客が乗り込んできました。その後もしばらく停車していたので、下り列車が来るのだな、と気付きました。
12時40分、1分遅れでその下り列車がやってきて停まりました。この日の井川行きの最終便でした。
けっこう乗客が乗っていますね・・・。これが井川で折り返して千頭駅に戻るのは15時45分ですから、金谷駅まで戻る頃には夜になっているわけです。
最後尾のDD20形機関車は4号車の204番、ヘッドマークは寸又峡温泉の「すまた」でした。絵も温泉でした。上図右奥に駅前広場が見えますが、車や観光客の姿も見えました。
遠ざかっていく井川行きの最終列車を見送りました。その後にこちらも発車し、1分遅れで閑蔵駅を後にしました。 (続く)