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重要な指摘-釜井先生の論文から-

2008年11月22日 | 平成20年6月岩手・宮城内陸地震

今年6月に発生した岩手・宮城県内陸地震。皆さん覚えていますか。
ここ数年直下型地震が多く発生しているので、比較的記憶の薄いほうになってしまったでしょうか。
注目されたのは、キラーパルスの”低さ”によって、大規模な地すべりが発生した割には木造家屋の被害がほとんどでなかったことです。

ところが、

自然科学学会誌の最新号で、宅地防災の第一人者、京都大学防災研究所の釜井先生は、以下の重要な指摘をされています。

築館の舘下地区で谷埋め盛土の崩壊が発生した。この崩壊は,2003年三陸南地震の際に発生した谷埋め盛土崩壊箇所(幅約40m,長さ約200m)の西に隣接しており,その当時は滑らなかった谷埋め盛土が,今回のより強い地震動(K-net築館で3 ch合成約800Gal)によって,崩壊した事例である

この地区の斜面は,1970年代の農地改良事業によって造成された斜面である。造成の目的は畑地とも宅地への転用とも言われているが,結果的に造成後の利用が放棄され,長い間適切な維持管理がなされていない斜面であった。谷埋め盛土料は,尾根部を形成していた更新統の軽石流堆積物であり,多孔質なため土粒子の比重が軽く,有効上載圧が小さいうえ,地下水を貯留しやすい特徴がある。ただ,今回の事例では,2003年の崩壊よりも地下水の量が少なかったため,完全な流動化には至らなかった。転圧不足のため,盛土の締まりは悪く,大部分がN値3以下である。旧谷底付近の地盤強度は,特に小さく,しばしば,N値も測定不能(自沈)である。
2003年の崩壊箇所の盛土厚さ(旧谷地形の深さ)は,約4 mであった。隣接する谷埋め盛土の厚さ,これよりも厚く,今回崩壊した西側(向かって左)の盛土は約6 m,東側(向かって右)は約8 mである。すなわち,厚さの薄い谷埋め盛土ほど,不安定であり,順番に崩壊したといえる(但し,東側の盛土には排水施設が新設済)。この斜面の様に,盛土底面付近の地盤が液状化する場合,底面での抵抗はほとんど失われるので,崩壊の発生を左右するのは,側部抵抗の大きさであると考えられる。2003年と今回の地震によるこの地区での谷埋め盛土の崩壊事例は,そのメカニズムを実証した事例として貴重である。


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