真夜中の映画&写真帖 

渡部幻(ライター、編集者)
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異能派アベル・フェラーラのワイルドサイド・フィルムが魅せる凄み

2010-11-29 | 映画作家


最近ヴェルナー・ヘルツォーク監督、ニコラス・ケイジ主演でリメイクされた『バッド・ルーテナント』のオリジナル版は、ニューヨーク派のアウトロー監督アベル・フェラーラの大傑作。主演はハーベイ・カイテル。
マーティン・スコセッシの『タクシードライバー』やジェームズ・トバックの『マッド・フィンガース』フェラーラ自身による『ドリラー・キラー』(こちらもフランスで『真夜中のピアニスト』としてリメイク)の系譜に連なるニューヨーク映画の怪作中の怪作だが、殺伐としながら色気のある映像作りはフェラーラの真骨頂。日本での公開時、閑静な東横線祐天寺駅に、この成人指定映画のポスターがずらりと飾られて、小さな革命を起こした。

癒されることのない魂を抱え込んだ男の苦悩を救済するのは、「死」の恵みだけだ。
極点に達したハーベイ・カイテルの芝居と、フェラーラが格好よく歌うざらついた主題歌が、都市生活の裏面に潜む絶対的な孤独を焙りだす。その厳しき認識の向こう側に、脈々と流れる情の深さに、流れされることの涙が滲む。もっともっと観られるべきカルト。

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