ラクトフェリンは人の初乳、ミルク、涙、唾液等に含まれ、宿主の防御機能を高めるとされている成分です。
ラクトフェリンの疾病予防効果について、レビュー中心に調べてみました。
未熟児における経口ラクトフェリンの敗血症、壊死性腸炎の予防効果について
[Cochrane Database Syst Rev. 2010 ]
472例の超低出生体重児(1000g未満)において、ラクトフェリンを補助的に追加投与された群では母乳のみを投与された群と比較して統計学的有意に遅発型敗血症を減少させた(相対リスク0.34, 95%CI 0.17-0.70)。また乳酸菌の一種であるラクトバチルス・ラムノサスと併用することでさらにリスクは減少した(相対リスク0.27, 95%CI 0.12-0.60)。
経口ラクトフェリンのみを投与された場合の壊死性腸炎の発症予防効果は有意なものではなかった(相対リスク0.33, 95%CI 0.09-1.17)が、ラクトバチルス・ラムノサスと併用することで有意な予防効果を認めた(相対リスク0.05, 95%CI 0.00-0.90)。
この研究では長期的な検討は行われていないが、ラクトフェリンによる副反応は認められなかった。
解釈:
経口ラクトフェリンは極低出生体重児(1500g未満)において遅発型敗血症を減少させた、また超低出生体重児においてその予防効果はより明確だった。
未熟児における壊死性腸炎の予防効果は単独では認められなかった。
容量、期間、ラクトフェリンのタイプ(ヒト、ウシ等)及び母乳栄養の効果についてより明確にすべきである。
小児におけるラクトフェリンの臨床研
[Biochem Cell Biol. 2012]
ラクトフェリンに関する19の臨床研究について系統的レビューを実施。内訳は鉄分の代謝と貧血に関する研究が6編、便中の細菌叢に関する研究が5編、腸管感染症に関する研究が3編、一般的な小児疾患に関する研究が1編、免疫修飾に関する研究が3編、新生児敗血症に関する研究が1編だった。
それぞれの研究においてラクトフェリンの予防効果は一定の結果を得られなかったが、ラクトフェリンによる介入の安全性は示されていた。
小児における腸管感染症と新生児敗血症はラクトフェリンの効果と生物学的な関連性が高いと考えられた。
調べてみた結果(雑感):
腸管防御機能が未熟な低出生体重児における腸管感染症に対する一定の予防効果はいくつかの論文で示唆されているが、正常な腸管防御機能を持つ乳児以降での予防効果に関する明確なエビデンスは確立していない。
また、ラクトフェリンによる影響に比して感染リスクに関する他の要素が明らかに強いため、一般の乳幼児等を対象とした比較臨床試験において、ラクトフェリンの有意な臨床予防効果を示すことは困難であろう。
一方で、安全性は高い介入であるため、必要に応じてラクトフェリンを利用することに問題はないと考えられる。