Developmental outcomes following vaccine-proximate febrile seizures in children
ワクチン接種後の熱性けいれんは小児の発達に影響しない(医療従事者限定の解説記事)
ワクチン接種後に熱性けいれんを起こしたことがある小児でも、その後の発達や行動に問題は生じていないことの報告があったので、情報を共有します。
<研究の方法>
オーストラリアの4施設の小児病院から、2013年5月~2016年4月の間に熱性けいれんを初めて発症した生後30カ月未満の小児を対象に、ワクチン接種後2週間以内に発症した熱性けいれんか(62人)、それ以外の原因で発症したものか(70人)の3群に分類。
さらに、熱性けいれんの既往がない、ほぼ同年齢の小児を対照群(90人)を比較対象群として評価に組み入れた。
熱性けいれんを初めて発症した小児はけいれん発症の12〜24カ月後に、熱性けいれんの既往がない小児は12〜42カ月の月齢で、Bayley乳幼児発達検査第3版(Bayley-III)により認知、言語、運動機能などの発達レベルを評価した。
また、同様の指標としてWoodcock-Johnson Tests of Achievement第3版で就学前レディネス(preacademic skills)について、さらに、質問票に対する親の回答をもとに行動や実行機能について評価した。
<結果>
ワクチン接種後に熱性けいれんを発症した小児、その他の原因で熱性けいれんを発症した小児、熱性けいれんの既往がない小児の間で、発達、思考能力、行動に明らかな差は認められなかった。
また、1歳未満に生じた熱性けいれん、15分以上続いた熱性けいれん、熱性けいれんの再発といったその他の因子に関する評価でも、小児の発達とは関連は示唆されなかった。
<結論>
筆者の結論として、こうした知見は「親や医療従事者のワクチンの安全性に対する不安を解消するという点で重要だ」とのこと。
<個人的なコメント>
ただし、今回の研究の限界として、対象者数が比較的少なかったことが指摘されているように、数万人に1人とされる、非常に稀なドラベ諸侯群等の遺伝子疾患がある小児では(予防接種が発症の原因ではなく、もともと素因があったところに実施した予防接種で病気がみつかるきっかけになって)、将来的に発達障害と評価されることになる可能性もあると思います。
今回の報告の結果は安心材料のひとつですが、大切なことは、熱性痙攣があっても発達に影響はないと妄信するのではなく、特に長時間続く痙攣や再発性の痙攣では、痙攣になる素因がある可能性を考慮して、適切に医療機関に検査や経過観察を行い、正しい診断と早期の治療や介入に繋げることだろうと思います。