有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

Angew. Chem. Int. Ed. Early view

2005-07-26 23:54:06 | 新着論文
Hexakis(trimethylsilyl)tetrahedranyltetrahedrane

三角錐二つを向かい合わせた形のtetrahedrane dimerの合成、構造。tetrahedraneの炭素の高いs性のため、その間の炭素ー炭素単結合は1.436Åと非常に短くなっている。筆者らによれば、非環状など歪のない単結合では世界最短とのこと。

筑波大学の関口先生のグループです。合成が非常に苦労しています。tetrahedranyl Liのクラウンエーテル錯体を単離し、シアン化銅/酸素で酸化的にカップリングしています。その収率3%!すごい。(GPC、HPLCを用いているのでかなり複雑な混合物を与えたと思います。)他の酸化剤では全くできなかったとのことです。対称性も非常に高い構造で、X線もよくとれたなぁと関心しきりです。

実験項をみて思ったのですが、酸化カップリング、濃度が<0.04 M という条件で行っています。二分子のカップリング、操作的に限界があるのでしょうが、低収率なのは希釈条件にも問題がある気がしました。
自分は操作上問題がなければ0.2から0.5M、反応が暴走などの問題がなければ1から2Mで無理に反応を行っています。溶媒が少ないと、手に入る器具でスケールを上げられ、後処理、濃縮など短時間で終わるという利点がありますし、速度論の上では早く終わるはずというのがあります。

Chem. Lett. 2005, 1152

2005-07-26 18:59:52 | 新着論文
Silver-catalyzed Alkyl–Alkyl Homo-coupling of Grignard Reagents

Grignard試薬の銀触媒による二量化反応、sp3-sp3のホモカップリング。
銀トシレートを用い、再酸化剤としてジブロモエタンを用いています。二級Grignardも熱をかけることで中程度の収率で反応が進行。

トランスメタル化の際、ベータ水素脱離を起こさないのが鍵のようです。リガンドフリーという点に加え、銀の性質を利用したシンプルで優れた反応だと思います。機構を考えると臭化銀で進行する気がするのですが、トシレートを用いているのは何故でしょう?溶解性が効いているのでしょうか?
sp3のカップリングも用いられる金属が増えてきました。この金属ならではという特色がもっと出てきてくれると面白いのですが。

Org Lett ASAP

2005-07-26 09:02:55 | 新着論文
The First Negishi Cross-Coupling Reaction of Two Alkyl Centers Utilizing a Pd-N-Heterocyclic Carbene (NHC) Catalyst

NHCを用いた根岸反応でのsp3-sp3のクロスカップリング

亜鉛試薬、ハライドともに一級ハライドのみ報告。ハライドはブロマイドのみ。Fuの報告している条件(JACS 2003,125, 12527)をNHCに変えたところ進行したとの事。FuのグループもNHCを使っているがMesを側鎖に持つもので進行していなかったのを、2,6-diisopropylphenylに変えて成功。さらに室温でもカップリングが進行することを報告。
NHCも窒素上の置換基でここまでかわるというのが不思議でした。

JACS ASAP

2005-07-26 08:03:03 | 新着論文
Cyanuric Chloride as a Mild and Active Beckmann Rearrangement Catalyst

有機分子触媒による温和な条件でのBeckmann転移

触媒設計が非常にうまいです。共触媒として塩酸、塩化亜鉛、サイクルに効くのはわかるのですが、共に必要な理由がいまいちわかりませんでした。サマリーで環状ケトンの検討を今後行うとのことですが、今回開発した条件では適用できないのでしょうか?