有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS ASAP

2005-09-28 08:38:38 | 新着論文
Thiourea-Based Bifunctional Organocatalysis: Supramolecular Recognition for Living Polymerization

lactide(乳酸の環状二量体)のチオウレア-アミン触媒による重合。チオウレアがカルボニルの求電子性を、アミンがアルコールの求核性を水素結合により高め、分子量分布の少ないポリ乳酸(PLA)を与える。

WaymouthとHedrick、PLAの合成を研究しているようです。JACS, 2005, 127, 9079.
仕事として、PDI <1.1と分子量分布の狭いポリマーを与えている反応という点で面白いです。論文として、polymerができた、分子量測っておしまいではなく、反応機構を検証している点も面白いペーパーでした。チオウレア、アミン単独では重合は進行せず、また水素結合が必須であることを溶媒を変えて確かめています。その過程でチオウレア、アミンが同一分子内になくても反応が進行することを確かめています。 PLAは工業化されていたり、グリーンケミストリーで注目されていたりと、相当やりつくされている化学だと思っていましたが、そんなことはないのですね。

国連分担金 日本の負担軽減 中露増額、要求方針固める

2005-09-27 12:10:56 | 記事
政府は二十六日、来春から本格的に始まる国連分担金に関する交渉で、日本の負担軽減とともに安全保障理事会常任理事国の中で大幅に低い中国とロシアの分担率引き上げなどを柱とした算出方法の見直しを求める方針を固めた。常任理事国入りが極めて困難になるなど国連内で発言権が向上していないのに、従来通りの分担金を負担するのは国内世論の理解を得られないと判断した。
 国連分担金は三年に一度、国連総会で見直すことになっており、来年は二〇〇七年から三年間の分担率を決めることになっている。
 現在は、米国が22%と最も分担率が高く、日本は約19・5%で二番目。これに対し、拒否権を持っている常任理事国のうち、米国を除く英国(約6・1%)、フランス(約6%)、中国(約2・1%)、ロシア(約1・1%)の四カ国の分担率の合計は約15・3%で、日本一カ国にも満たない。
 分担率は、各国の国民総所得(GNI)などを基礎に算出しているが、途上国には割引措置が適用され、その分を日本などの先進国が肩代わりしている。本来、中国は約4・8%の分担率となるが、途上国として扱われているため割引措置を受け、半分以下に減額されている。
 政府は国連創設六十周年となった今年を最大の機会ととらえ、常任理事国入りを目指してきたが、中国の妨害工作や安保理の大幅な拡大を望まない米国の反対で挫折。このため、「『発言権は与えないが、カネは従来通り出せ』では国内に説明がつかない」(外務省幹部)との声が高まっていた。
 政府は「常任理事国は最低でも3-5%の分担率を負担すべきだ」(外務省筋)との考えで、分担金見直し交渉の中で日本の負担軽減と同時に、米国を除く常任理事国の負担増を求める方針。
 ただ、安保理改革をめぐる議論に影響を与える可能性もあり、現実には難しい対応となりそうだ
産経新聞より http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050927-00000001-san-pol


%ではなく、具体的な金額を提示すれば世論は動くと思います。頑張れ外務省。
国連60年、あり方を見直さないと、歪みは酷くなるのではないでしょうか。

BCSJ 2005, 78, 1654-1658.

2005-09-26 22:45:08 | 新着論文
2-Methoxy-4-nitrobenzenediazonium Salt as a Practical Diazonium-Transfer Agent for Primary Arylamines via Tautomerism of 1,3-Diaryltriazenes: Deaminative Iodination and Arylation of Arylamines without Direct Diazotization

2-methoxy-4-nitorobenzenediazonium saltとアリルアミンから誘導された1,3-diarylトリアゼンの異性体が、分子内水素結合と電子的要因で固定されることを利用した芳香族置換反応。2-methoxy-4-nitorophenylanilineは再利用可能。

玉尾先生のグループ。Ar-XをAr-Nuに変換する上で、Xとしてトリアゼンに着目していましたが、今回分子内水素結合に着目した分子設計の反応を報告しています。非常に良く考えられた分子設計です。
報告している収率は中程度ですが、反応条件も温和、官能基共存性も高いようで実際に使える反応ではないでしょうか。テーブルを見たところ立体障害のある系ーオルト置換アニリンなども例として欲しかった気がします。

小林修教授がアメリカ化学会賞を受賞

2005-09-23 12:09:53 | 新着論文
有機反応化学教室の小林修教授がアメリカ化学会賞(Arthur C. Cope Scholar Awards)を受賞した。この賞は有機化学分野において優れた業績のある研究者に与えられる賞であり、1984年にアメリカ化学会によって設立された。過去の受賞者としてはアメリカを中心に蒼々たるメンバーが名を連ねているが、日本人の受賞は、正宗悟教授(1987)、岸義人教授(1988)、福山透教授(1993)、尾島巌教授(1994)、野依良治教授(1996)、柴崎正勝教授(2002)に続いて7人目である。
(東大薬学研究科HPより)

おめでとうございます。

有機反応化学教室ホームページ

Arthur C. Cope Scholar Awards
Tosteも受賞してるようですね。

Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 5664-5667.

2005-09-23 10:03:04 | 新着論文
Versatile Direct Synthesis of Oligosubstituted Pyrroles by Cycloaddition of α-Metalated Isocyanides to Acetylenes

α-metalated isocyanideと電子不足アルキンを原料に3置換ピロール合成。メタルはK,Csは量論、Cuが触媒量で反応。

Meijereのグループ。アルキンに対して、α位炭素からマイケル付加、イソシアニドの挿入、異性化。ピロール合成で、窒素原子が反応点に関与していない点が面白かったです。条件検討の基質にシクロプロピルがついているのがMeijereらしい。
応用、展開は活性化されていないアルキンへ適用するくらいしか思いつかず。