有機化学にっき

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タミフルの化学合成に成功 原料は石油、安定供給に道

2006-02-25 12:41:47 | 新着論文
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060225-00000059-kyodo-soci

インフルエンザの抗ウイルス薬で、新型発生時の切り札として各国が備蓄を進めるタミフルの成分を、植物原料を用いずに石油から化学合成する方法を東京大の柴崎正勝教授(薬品合成化学)らの研究グループが、25日までに開発した。
 現在タミフルは、トウシキミという木の実で中華料理に使われる「八角」の成分「シキミ酸」を原料に、10回の化学反応を経て生産されているが、柴崎教授らの方法ではシキミ酸を経由せずに作れるという。
 植物原料は気候によって収穫量が左右されやすいため、大量備蓄が必要なタミフルの化学合成による生産が可能になれば、安定供給につながる成果として期待される。
(共同通信) - 2月25日11時9分更新


 インフルエンザの特効薬タミフルを植物原料を使わず化学的に製造する方法を東大大学院薬学系研究科の柴崎正勝教授らのグループが開発した。

 世界で需要が急増している抗ウイルス薬の安定生産を可能にする技術として注目されそうだ。

 タミフルは、スイスの製薬大手ロシュが独占的に製造している。中国料理に使われる植物トウシキミの果実「八角」を原料に、その成分であるシキミ酸から複雑な工程を経て生産される。新型インフルエンザにも効くと予想されるため、各国が備蓄を進めているが、慢性的に品不足状態にあるうえに、天候不順だと原料の確保が難しくなる。

 柴崎教授らは、石油から生成される安価な化学物質「1、4―シクロヘキサジエン」を原料に、シキミ酸なしでタミフルを作ることに成功した。

 反応を促進させるため、野依良治博士のノーベル賞受賞業績でもある「不斉触媒」という技術を用いた。柴崎教授はこの分野の第一人者で、日本が世界をリードしている。

 タミフルに耐性を持つウイルスが出現した場合も、この製造法を応用すれば、新薬開発につながる可能性があるという。

 東大は大学所有の知的財産として23日、この製造法を特許出願したが、タミフルの製造販売権を押さえているロシュの許可なしには生産できない。柴崎教授は「ロシュと話し合い、実用化研究を進めることになるだろう」と話している。
(読売新聞) - 2月25日3時29分更新


出発原料がシクロヘキサジエンか。んーと JACS 2005, 127, 11252.を利用した合成なのかなぁ?

鳥インフルエンザですが、ウィルスが人間に移り得る変異を遂げていると、WHOも見解を出しているそうで。リアルB級ホラーの世界ですね。輸入禁止で簡単にすむ問題でなさそうで、世界の中心の中華大国から距離的に飛んできてもおかしくないとか。このままいくと安心して食えそうなものは流動食とかになりそうな勢いですね。

JACS ASAP

2006-02-24 18:46:29 | 新着論文
The Structure of the Strongest Brnsted Acid: The Carborane Acid H(CHB11Cl11)

carborane acid [H(CHB11Cl11)]の気相、固相それぞれの構造をIR, DFT計算、X線結晶構造解析を用いて明らかに。H+が気相では分子内のClを架橋した構造をとり、2つの異性体が存在。固相では分子間で架橋した構造。対称性の低いものほど、安定性が低く酸性度が高くなるとのこと。

温度可変のIRを用いて、酸性度に影響を与える構造を議論しています。測定の難しさとプロトンの架橋の働きで相によって酸性度に影響を与えるという点が評価された点でしょうか。

単純に熱かければ酸性度もあがるんじゃないかな、という想像と実用ではあまり大差のない結論に落ち着いている気もしました。この構造に関するデータがプロトン化の反応にどう使えるのか、いまいち想像がつきませんでした。この仕事が従来発生させられなかったカチオンをだす反応に活かされると楽しいと思います。

いつもバタバタしている人の気持ち切り替え術

2006-02-23 21:17:33 | 書籍
やらなくていいことは山ほどある
自分からわざわざ骨を折ることはありません
好きなことをたくさんやりましょう。自分に合わないことはやめましょう。そうすれば仕事が楽になります。
自分のことを一番上位にランク付けしましょう。他人のことは二位以下で十分です。
あなたが原点なのです。あなたが自分の才能や長所をしっかりと見極めそれで真剣に勝負するようになって初めて、他人もあなたを正当に評価するようになるのです。


草思社 バルベラ・ベルクハン 訳者 瀬野文教 


スタッフの言うことを何でも聞き入れて、論文になっても納得してないあなた!
無能なスタッフがでたらめな論文を投稿している一方、真剣に再現性や反応性を検討しているためにむかついているあなた!
能無しかつ役立たずかつあなたの足をひっぱる後輩の面倒で磨り減ってるあなた!
俺も口先だけのやる気のない奴のために無駄な時間を使わされました!


健全なエゴイズムを持つための指南書!!!!!!

知っている助手さんで、サーバー管理の能力やNMRの知識を披露してしまい、できるのはいいのですが、他の研究室のスタッフからゴミ捨て場便利屋扱いされてしまい、研究に時間が使えなくなった人を知っています。
無能な阿呆の卒業にスタッフが時間を使い、自分の仕事が進まなかった人を知っています。
思い付きを言われ、連日徹夜でデータを出してTLとかゴミIFの低い論文に報告され、ぶん殴りたくなったことがあります

ボトルネックはどこか、何に力を注ぐのが費用対効果が最大になるか? 効率的に仕事を行うことを見出すための良書!!


いつもバタバタしている人の気持ち切り替え術

Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 1147-1151.

2006-02-21 07:03:53 | 新着論文
Chirally Aminated 2-Naphthols-Organocatalytic Synthesis of Non-Biaryl Atropisomers by Asymmetric Friedel-Crafts Amination

cinchonaアルカロイドを触媒とした2-ナフトール誘導体とazodicarboxylateとのアトロプ選択的反応。1位が窒素化される。8位へアミノ基を導入することでアトロプ異性体を安定に扱う。

非ビアリル型のアトロプ異性体として、オルト置換アミド、アニリドがあるそうです。その誘導体でナフチル骨格でアミドは報告されているけれどもアニリドは報告例がなく、不斉配位子として興味がもたれていて、今回ワンステップ、Friedel-Crafts型の反応で合成を報告。
触媒自体(DHQ,DHQD)が基質として同様のアミノ化が起こり、そのアミノ化された触媒を用いると>94% eeで反応が進行。
生成物はその官能基を利用して誘導体化が可能。

生成物の異性化を抑える工夫、触媒の最適化と話の流れが面白かったです。生成物の不斉配位子としての展開や、骨格をフェニルと単純化できたりしたらと先が面白い反応だと思います。

目標達成・・・

2006-02-20 23:52:22 | 日々の研究
先日、スタッフより某ジャーナルの特集号とかで投稿することになったから目を通してくれとのこと

結果をだして投稿というわけではないので、満足感がないのだが
博士課程進学で目標としていた10報が達成できた
後輩の二人には世話になったわけで、彼らがいなければできなかったろうということで感謝

しっかし・・・大事なのは量でなく、質だと本当に思うね 
Organometallicsx1, JOC x1 TLx2, CLx3, BCSJx2 +予定1 (どうなるかわからない+2) 
現在での平均 IF<2 で総被論文引用回数1.2か・・・ 
必死に蛇口をペンチを使って捻っても、ダムが干上がってれば水はでない
ダムに水があっても、水道管がつながってなければ水は出ない
数を目標にしていた時点で、細い水道管になっていたんだろうなぁ
この教訓を活かして頑張る方向を間違えずに頑張ろうと思ったり。

「目標が小さいとアウトプットされる結果はゴミクズ」