有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

Org Lett ASAP

2005-08-30 12:50:45 | 新着論文
Synthesis and Spectral Properties of a Highly Soluble Push-Pull Type of Quinoidal Thiophenes

広島大学の大坪先生のグループです。push-pull quinoidal thiophenes群の合成。溶解性の問題を解決するために、筆者らの開発した溶解性を向上させるbis(butoxymethyl)cyclopentene縮環チオフェンを適用。電子スペクトルと溶媒効果、CVを報告。

結晶構造をみると、シクロペンタン環がオリゴチオフェンの共役に影響を与えず開発した置換基の有用さが際だった仕事でした。
シクロペンテン縮環、パイスタックで溶解性が悪くて困る化合物はたくさんあるようですし、他の系にも適用できないでしょうか。

「ウォームビズ」経済効果は2323億…クールの2倍

2005-08-29 12:22:25 | 記事
 第一生命経済研究所は、クールビズの“秋冬版”の「ウォームビズ」の経済効果が2323億円に達し、名目の国内総生産(GDP)を0・03%程度押し上げるとの予測結果を発表した。
 ウォームビズは、環境省が企業や自治体に、社員や職員が重ね着をして暖房温度を20度に設定するように呼びかけている運動。サラリーマンやOLなどがベストやセーターなど購入するため、「クールビズの2倍の経済効果が見込める」としている。

暖房家電やエネルギーとか冷え込む業界もあるのでは?(゜д゜lll)

JACS ASAP

2005-08-29 09:06:04 | 新着論文
Tandem Aldol-Allylation and Aldol-Aldol Reactions with Ketone-Derived Enolsilanes: Highly Diastereoselective Single-Step Synthesis of Complex Tertiary Carbinols

ケイ素原子上の置換基にエノールエーテル、アリルを設計。シリルエノールエーテルのアルドールと、アリルシランの付加をタンデムで行える試薬を開発。後半では、ケイ素上にエノールエーテルを二つのせ、タンデムアルドールを報告。
ピナコールやアミノアルコールで5員環シラサイクルの歪により反応性、立体選択性を制御。JACS 2002, 124, 10672でエナールを報告、今回はエノールにして三級アルコールが立体的に発生。

グラフィカルアブストラクトを見たときは、不斉がないにも関わらず、多数の不斉を制御したタンデム反応で面白いと思いました。しかし、イントロで筆者らの以前の仕事を見て、延長の仕事という印象をうけました。エナールからケトエノールにしたことで困難になるかをアピールすれば良かったのかと思いました。
後半の、アミノアルコールを用いたアンチアルコールを与えるアリル化、dienolsilaneを用いたタンデムアルドールが加えたところが形にするうえでよかったのでしょうか。個人的に有用性に疑問を感じました。ひとつには基質のアルデヒドの置換基の例が少なく、基質特異性が高いのではないか。もうひとつには試薬のdienolsilaneの調整で23%と悪い点でした。
アイデァはかなり面白いので、置換基を変えて汎用性の高い条件を探していけばよいのかなと思いました。でもそういう例を増やすだけの仕事は、この人たちのやる仕事ではないしな

東北大学吉良満夫教授ワッカーシリコーン賞受賞

2005-08-27 07:39:23 | 記事
吉良満夫教授が有機ケイ素化学分野で顕著な業績を挙げた科学者に贈られる「ワッカーシリコーン賞」の2005年度の受賞者に選ばれ、8月1日、ドイツのヴュルツブルグで開催された14th International Symposium on Organosilicon Chemistry(3rd European Organosilicon Daysとの併催)において授賞式が行われた。同賞は1987年にドイツのワッカーシリコーン社が有機ケイ素化学の基礎研究の発展を願って設立した国際賞であり、二年に一度、European Organosilicon Daysの折りに授賞者が決定される。アメリカ化学会のキッピング賞と並んで、この分野の最も栄誉ある賞とされている。同氏は特異な結合・構造をもつケイ素化合物を創製し、これらの独特の物性と反応を発見し、原因を解明することに顕著な業績を挙げた。なかでも、ケイ素二価化合物(シリレン)とケイ素-ケイ素二重結合化合物の化学に関する貢献は目覚ましく、安定なジアルキルシリレン、環状ジシレン、スピロペンタシラジエン、トリシラアレンなど、未知の結合様式をもつ化合物を合成し、構造・反応の特徴を解明したことが高く評価されている。これらの業績が今回の受賞の対象となった。

吉良先生は平成16年度日本化学会賞もこの春受賞されています。
東北大学吉良研究室
おめでとうございます