有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS ASAP

2006-05-29 06:23:40 | 新着論文
Synthesis of Aromatic Ketones by a Transition Metal-Catalyzed Tandem
Sequence

オルトアルキニルの芳香族プロパギルエステルから、Ag(I)or Au(I)触媒によりナフチルケトン骨格の調整。中間体としてenyne-alleneを経由。

Tosteのグループ。プロパギルエステルの金属触媒による転移を用いた、アレニル体の発生とアルキンの活性化による環化反応。
この反応を利用して、ビナフチル骨格・アントラセン骨格・インドールを構築しています。
官能基共存性に関してはシクロプロピルとアルキンだけを出しているのですが、スコープ&リミテーションはわかりづらいです。筆者らもAgとAuどちらが基質に適している系なのかはトライアル&エラーの様子。

反応機構は中間体と仮定しているenyne-alleneを単離して反応が進行することを確認。
ビナフチルは軸不斉のある前駆体に検討したところ、ラセミ体を与えたとのこと。Fuあたりがやってきそうな予感。
Ag触媒では、副生する酸のscavengerとしてMgOを使っています。Ag(I)と共存できるのですね。MSだと系内の水を食ってしまうのかな

置換アセンなどのpolyaromatic合成に使えるでしょうか。収率が50-60%と残りがどうなっているのかが気になります。

JACS ASAP

2006-05-28 22:33:01 | 新着論文
Synthesis and Electrochemistry of Double-Decker Buckyferrocenes

フラーレンの上下にフェロセンユニットを縮合させたdouble-decker buckyferroceneの合成。X線構造と化学酸化した科学種の構造が報告。電気化学的性質も報告。

東大中村先生。フラーレンにダイレクトに2つの遷移金属が結合していて、非常に面白い構造です。Fe金属間の相互作用や、化学酸化した状態をディスカッションしています。将来的に、ナノチューブや多様な金属の導入へ応用できるのではないかとのこと。面白い構造とCpのいじり方でチューニング可能でしょうから、材料に使えると楽しそうです。

本質ではないのですが、気になったところ。The 110 mV separation of the two
oxidation potentials (⊿E) is comparable to those of phenylene-linked
diferrocenes (⊿E ) 131, 90, and 104 mV for o-, m-, and p-C6H4), but larger than that of a biphenylene-linked diferrocene (⊿E )
70 mV).
と金属間の相互作用の強さを比較しておりますが、確かこの価は溶媒やら電解質やらの測定条件で結構大きく変わるのでうかつな引用データでの比較はできなかった気がします。refが引けないのでちとわかりかねますが、ひょっとしたらphenylene-linkedより面白い相互作用かもしれません。



国民大集会

2006-05-28 22:00:28 | Weblog
小泉首相の決断と今年中に拉致被害者全員救出を求める国民大集会に行ってきました。


平沼赳夫拉致議連会長・山谷えり子内閣府大臣政務官・中川昭一農林水産大臣・中井洽民主党拉致対策本部長・etc
韓国の拉致被害者家族協議会・ハンナラ党議員etc
と被害者救出に対する熱い思いと金正日に対する怒り・各人の立場から行える行動の意志を聞けました。
http://www.ch-sakura.jp/index.html
(ネット放送有り)

ニュースで関心を持っていても、自分の問題として考えることができていなかったことを反省したり、被害者家族の方の訴えを聞くことで涙したりと非常に密度の高い三時間でした。我々がどのような社会に住みたいかという点で、事件に巻き込まれた運の悪い方ですます問題ではないと思うわけで、私には意義のある会でした。

被害者であるはずの家族の方々が協力いただいている方・参加された方に感謝されていたこと。政府の無策により10年目の集会となってしまったこと。哀しい気分となると同時に同情で終わらせるのではなく、自分のできることをやっていこうという気持ちにさせられました。

国連人権委員やら北朝鮮人権法成立やら、道徳律よりも法律が優先したりと問題は多々ありますが、被害者並びにその家族の方が、新年を揃って迎えられることを願います。

JACS 2006, 128, 4101

2006-05-24 21:59:22 | 新着論文
Modified (NHC)Pd(allyl)Cl (NHC ) N-Heterocyclic Carbene) Complexes for Room-Temperature Suzuki-Miyaura and Buchwald-Hartwig Reactions

(NHC)Pd(π-allyl)Clが鈴木カップリング、Buchwald-Hartwig aminationに非常に高活性な触媒として働くことを報告。(それぞれ50ppm, 10ppmが最大)

Nolanのグループ。NHCとアリルの組み合わせのフルという地味な内容かなと思ったのですが、活性の高さが凄いです。
・各種(NHC)Pd(allyl)ClのX線。
・tech.gradeのiPrOHを用い、室温で、立体障害の高い2,6-置換でも進行するアリルクロライドの鈴木カップリング。
・同じく室温で、立体障害の高い系でも進行するアリルクロライドのアミノ化。
・後半では電子材料向けのナフチル、アントリルでのアミノ化。
とおなか一杯の内容です。以前synlettかsynthesisで読んだときは、調整が簡単くらいの内容だったと思ったのですが。

活性の高さはアリルが抜けることによる(NHC)Pd(0)の発生が容易であることを仮定しています。50ppm,10ppmで反応が進むということでTONも凄い。塩基がブトキサイドしか、今回報告していませんが、最適化していけば工業レベルでインパクトは凄いと思います。

JACS 2006, 128, 4238

2006-05-24 21:27:33 | 新着論文
An Efficient Route to Well-Defined Macrocyclic Polymers via "Click" Cyclization

末端にアジドとアルキンを有するポリスチレンをクリックケミストリーで環化。新規なcyclic polymerの合成法。

IR, SEC(GPC),MALDI-TOF massで生成したポリマーを調べています。定量的に分子内のみで環状ポリスチレンを得ているとのこと。GPCチャートが環化前と後と比べていますがとてもきれいです。

数年前、Grubbs触媒を用いて72員環(?だったと思います。手元に資料がないのでわからないのですが、Classicsの2にもとりあげられてたと思います。JOCの表紙にもなってた気がするんですが?)というマクロサイクル。その数年後、GrubbsのグループがcyclicなGrubbs触媒誘導体でcyclic polymerを合成しており、面白いと思っていましたが、Click chemistryでもできるということに驚きました。

反応条件を分子内のみでいく条件にしているのでしょうが、定量的に分子間でがないことに驚きました。

・・・・・・・・・ここまで書いてから気がついたのですが、ポリスチレンの分子量が4200。スチレンモノマーを100くらいとすると、およそ40量体ってことは80炭素で接続部位を足しても100員弱のマクロサイクル。そう考えるとたいしたことないですね。うーむ。もっとクレイジーな員数のマクロサイクルだと思い込んでいました。ポリマーのn表記に騙されるところでした。

azideのクリックケミストリーを環状ポリマー合成に用いたのがえらい!ということでしょうか。官能基のコンパチを考えると応用は広いと思います。既知の材料として用いられているポリマーに物性向上を期待して試してみたいと思わせる仕事ですね。まんまぱくると怒られるでしょうから、自分ならヘテロ環が主鎖に入っているポリマーやシリコンポリマーでやってみたいですね。