有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

ダマスカス鋼とカーボンナノチューブ

2006-11-30 22:28:06 | 記事
Ancient Steel's Surprise Ingredient
Damascus saber is found to contain carbon nanotubes


「平原にのぼる太陽のごとく輝くまで熱し、次に皇帝の服の紫紅色となるまで筋骨逞しい奴隷の肉体に突き刺して冷やす、・・・奴隷の力が剣に乗り移って金属を硬くする」
という製法が伝えられているダマスカス鋼で作られた刀剣は
“もし絹のネッカチーフが刃の上に落ちると自分の重みで真っ二つになり、鉄の鎧を切っても刃こぼれせす、柳の枝のようにしなやかで曲げても折れず、手を放せば軽い音とともに真っ直ぐになる”

そんなダマスカス鋼の刀剣から多層カーボンナノチューブ(MWNT)が発見されたそうです。Nature 2006, 444, 286.
記録として人類最古のナのチューブだとか


レシピの再現できるようになるといいですね

追記

製造技術が失われていることを書くのを失念していました(^^;
こちらにダマスカス鋼を作ろうとした研究の歴史と発展が詳細に述べられています。
ダマスカス鋼の研究

Wikipedia
MWNTの話題がこちらにも載っていました。

Driving a Spike into Viruses

2006-11-24 21:58:53 | 記事
C&EN Nov. 20, 2006, p17.


<記事抄録>
脂質二重層にポリマーを突き刺してウィルスや病原菌を殺す

MITのAlexander M. Klibanov教授のグループが  Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2006,103, 17667. にてpolyethylenimine ポリマーでコーティングしたスライドガラスが、インフルエンザウィルスを不活性化することを報告した。ポリマーはスパイクのようにガラス表面から立って配置しており、ウィルスのlipid envelopeに突き刺さると考えている。

Klibanovのグループは以前、このアイデアがバクテリアに有効であることを報告しており、同様にウィルスの脂質膜にも作用すると考えていた。

疎水性ポリマーのlipophilicな性質により、細胞の脂質膜とインタラクションするのだが、そこでカチオン性=アンモニウム構造が鍵となる。ポリマー内の分子鎖が分子間力で丸まってしまうのを、電荷を持たせることで反発させ表面にスパイク構造を構築。

ポリマー薄膜はウィルスやバクテリアがくっつくことで不活性化しても、石鹸水で洗うことで再生可能だという。

記者は、将来ドアのコーティングなどの抗菌剤として使われるかもしれないと述べている。


単純な構造ながら、ポリマーの構造と性質を利用してこんなことができるとは面白い。
ある程度の規則性に気がついたのだが・・・配向膜とかフィルムとかのノウハウ使えねーかな?
日産化学さん、バイオに参入どーですかね? フィルム作ってる会社さんどーですかね?

帝人がバイオ燃料に参入、欧州に生産会社

2006-11-18 04:03:27 | 記事
帝人は植物を原料とするバイオ燃料事業に参入する。欧州で軽油代替となるバイオディーゼル燃料の生産会社を現地企業と共同で設立した。同事業を手掛けることで次世代の収益の柱と位置づける環境・エネルギー事業を強化する。温暖化ガス削減の規制を追い風に、国内主要企業がバイオ燃料事業に乗り出す動きが本格化してきた。

 バイオディーゼル燃料は、バイオエタノールとともに次世代のバイオ燃料の主力とされている。

日経新聞 2006年11月16日

三井物産>ブラジル国営石油会社ペトロブラスと同国での生産・輸出拡充に向けた事業化調査。ペトロブラス、ブラジル鉄鉱石大手リオドセとブラジルでのエタノール物流効率化に向けて事業化調査。
丸紅>サッポロビール、月島機械とタイでサトウキビを原料にエタノール生産。サッポロビール、大成建設などと堺市で建設廃材を原料にエタノール生産。
伊藤忠商事>ブラジル政府系企業とブラジル東部でのバイオエタノール、バイオディーゼルの生産工場建設。2010年目処に対日輸出。
トヨタ自動車>07年ブラジルでエタノールだけで走るカローラ。08年北米で混合比85%まで対応の小型トラック発売へ。
ホンダ>ブラジルで混合比20-100%対応のシビック、フィットを06年内に。稲わらや茎などから得たんールヲ製造する技術をRITEと共同開発。2,3年内に量産技術を確立
日産自動車>欧米でエタノール車販売を準備中
デンソー>エタノールによる腐食を防ぐ部品の開発強化
新日本石油>トヨタ自動車とバイオディーゼル燃料を共同開発。


Mukaiyama Award

2006-11-16 02:01:21 | 記事
有機合成化学協会誌が届いたのでぱらぱらめくっていたら

標題の2007年の受賞者が
北大の谷野圭持先生
Princeton Univ.のD.W.C. MacMillan (CALTECだと思ってましたが移ったのを知りませんでした)

谷野先生はingenol, norzoanthamineの全合成、MacMillanはイミニウム触媒(MacMillan触媒)の業績
おめでとうございます!