有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

A Nose for Bombs

2005-04-27 20:49:24 | 記事
犬の嗅覚並みの爆弾探知センサー

Forbes 2005年6月号から。Nomadics社が製造した携帯用爆弾探知センサー"Fido"
MITのSwagerの名前があったので読んでしまいました
ちょっと調べたら、JACS, 1998, 120, 11864の実用化だと思われます
爆弾探知犬を不要にした製品だそうです。シェパードに比べ三倍もの値段がするそうですが
飼育費、訓練費込みで考えると安いですし、記事の中では5年以内に55万円まで落とすとのことでした 
実用化につながるようなポリマー、分子設計一つで金属からエンプラにかわったのみならず、生物にもとってかわれるようです。
ところで、「蛍が持つ発行物質を混ぜた薬物」「センサーのチップは暗い鎖を即座に捕らえることができるのだ」だそうですが・・・55万円もドルのままでいい気がしますが・・・本文の記者が悪いのか、専門外の訳者が悪いのか・・・

普通に毎日論文を読んでいるだけで、専門を活かした翻訳で食っていけそうな勘違いをしそうになりました。
ドルといえば、関係ないですが、銀行にいったときに外貨定期の勧誘でおっさんが訛っていたため、「ベーぐる」という金融商品があるのか?と思ったら「米ドル」でした。自分が腹ペコ学生ということを実感・・・

Chem.Commun., 2005, 1848-1850

2005-04-27 20:24:57 | 新着論文
Fluorescence enhancement by hydroperoxides based on a change in the intramolecular charge transfer character of benzofurazan

benzofurazan骨格へホスフィノ基を導入。酸化剤によりホスホリルへ酸化されることによって、蛍光が増大するという報告。
蛍光分子の設計には興味をもっているのですが、勉強不足なため、Swagerの話と関連して、興味をひかれました。分子設計が書いてあり、合成もリン原子の導入以外収率よく、短工程であり、蛍光に関しても酸化剤のセンサーという目的に対して、感度、定量性ともに高く、水中でも蛍光を発し生体内の過酸化物の検出に役立つとのことです。
蛍光のデータに関して、形式上の契約書のよう眺めて本文の結論と見比べるだけで、あまり積極的に考えて読めないのですが、専門家の方はこの蛍光データからどのような議論、展開ができるのでしょうか?
本質ではないのですが、リン原子の官能基共存的、位置選択的な反応、用いることのできる試薬の少なさをどうクリアするべきでしょうか?他の典型元素に比べると、匂いや廃棄の問題は配位子などの応用がなされている現状を考えると、解決法を考えなくてはならないと思いました。

Angew. Chem. Int. Ed. 2005, 44, 2215-2220

2005-04-26 20:23:33 | 新着論文
Head-to-Tail peptide cyclodimerization by copper-catalyzed azide-alkyne cycloaddition

アジド、アルキンの双極付加を用いた固相における環状の二量体ペプチドの合成。
M.G.Finnのグループの銅触媒を用いたアジド、アルキンの付加反応を利用して、固相上で環状ペプチドを合成する手法を報告しています。
驚くべきことにdimerが選択的に得られ、76、124員環の環状ペプチドを合成しています。
なぜ選択的に得られるのか?という点に関しても考察しており、このペーパーと連報である2210-2215で速度論的な解析により、得られた反応機構により説明をしています。
反応機構の方は、確かに面白い銅アセチリド2量体を推定しておりますが、その存在をつかまえていないのにAngewということに?でしたが、こちらのペーパーを読んで納得しました。
筆者らはペプチドライブラリー、カテナンや非ペプチドなどの環状化合物へと適用を考えているとのことです。
筆者らはおそらく始めは環状ペプチドを狙っていたのでしょうが、選択的に2量体が得られたことから反応機構などとさらに深く追求している方向が面白いペーパーでした
クリックケミストリーは、応用の方向性が非常に多いということが、毎回読むたびに思います。何かアイデアがあったとしても、この反応を使えば後追いとしかならないので、クリックケミストリーに使えるような、独自性の高い、基質や反応を見つけたいものです

stephacidin A

2005-04-23 08:10:12 | 目的
JOCやAngewの表紙など人目をひくというか、芸術的といおうか
研究のプレゼンや一般に説明をするときにわかりやすい説明をするためのヒントとして、
小学校で図工は2,3だった自分には全く無いセンスなのでいつもながら感心している。

ちなみにポスター発表などは手抜きでA4で作成している。
A全でやろうか?という気持ちがないではないが、オーラルに転用したり、構成を考える関係、
スタッフとの価値観のすりあわせなど、労力対効果を考えてしまい、ついつい手を抜いてしまう。
実際にA全でポスターを作ってるグループもあるが、あまりA4と変わりない構成のものもみうけられる。

で、センスがあるなと感心する対象として、BaranというNicolaouの弟子がスクリプスにいて、独立してからも独創的な全合成やメソドロジーの開発を行っている。年齢も自分と同じなので、CPの全合成達成やIBXの異常反応を行っていた頃から、俺も頑張ろうと注目している。

でHPのresearchでは仕事を一枚にまとめた美しいスライドを掲載している
その中の一枚 標題化合物だが
http://www.scripps.edu/chem/baran/html/stephacidin.html
全合成と道路工事を例えてるのか、なんの関係があるのか、それまでの研究スライドとは感じが違っていたりとよくわからなかった。

それがわかった
昨日の夜、レンタルでCSI科学捜査官を見ていた。
http://www.watch-csi.jp/
Crime Scene Investigationの略で鑑識を題材にしたドラマで、些細な物証から論理の筋道を展開し、何度も検証しつつ犯人を絞り込んでいく。仮説、検証の繰り返しという思考プロセス、最新の現場では、どのような分析機器が使われており、どのような欠点があるのか、化合物を扱う実験化学者のはしくれとして非常に面白く、ここ最近寝る前のナイトキャップ代わりになっている。

その中でグリッソムが読んでいた新聞の広告で
The road to ・・・
があった。

センスの無い身として、どのように作ろうとすればよいかという方向性が見えた気がした。

TL 2005, 46, 807-810

2005-04-21 22:55:38 | 新着論文
Novel method for catalyst immobilization using an ionic polymer: a case study using recyclable ytterbium trilate

ポリマーの構成成分をイオン性にすることで、金属固定化触媒を作ろうというお話。
ポリマーにはピリジンを構成成分としてアルキル化、それを用いて、Yb(OTf)3を固定化してMannich型の反応を行っています。
スクりぷすのJandaです。生物的な仕事はフォローしきれていませんが、ポリマーをいじる有機化学の方は、いまいち実用性にかけつつも面白い発想でペーパーを出してくるので好きです。珍しく実用性のある系になっています。
最終的には初めのスクリーニングのときに得られた知見を利用し、ピリジニウムポリマーとPEG鎖を使い固定化しています。10回の再利用に耐え活性を全く失っていませんでした。
TOFは20ほどで、反応はほぼ完結していますのでかなり実用的かと思います。
このアイデアを利用すればアンモニウムを用いるから、キニジン誘導体を用いたり、メタルを変えたり(条件検討はかなり面倒でしょうが)さまざまな応用が期待できると思います。
この手の系で必ずでる質問として、n回の試行に対して「n+1回目はどうなんですか?」というのがあるようですが・・・?