有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS 2006, 128, 2885.

2006-03-31 19:35:33 | 新着論文
Total Synthesis and Evaluation of [ψ[CH2NH]Tpg4]Vancomycin Aglycon: Reengineering Vancomycin for Dual D-Ala-D-Ala and D-Ala-D-Lac Binding

ローンペアの反発を考慮して、アミドカルボニル一箇所をメチレンに変えたvancomycinアグリコンの全合成。D-Ala-D-Ala, D-Ala-D-Lacへのaffinityを制御。高い抗菌作用を示した。

Bogerのグループ。芳香族側鎖を有するペプチドの異性化しやすさに相当苦労しているようです。脱保護の順番を変えたり、縮合の条件検討など大変そうでした。
目的のカルボニルをメチレンに変える段階は、還元的アミノ化を用いていますが、温度を上げると選択性が悪く、下げすぎると反応が完結しないと、反応条件の検討に苦労しています。
フルオライドトラップにCaCO3を用いているのは(↓CaF2)勉強になりました。
構造決定の部分は読み飛ばしてしまいました。
レトロはフェニルグリシン誘導体単位に切断。構築は過去のノウハウによる異性体の熱力学的安定性を考えてと、妥当な経路。

バインディングを上げるのに水素結合を増やすのではなくて減らすというアィデアが非常に面白かったです。
謝辞でRebekがディスカッション相手に入っているのことに、なんとなく納得。

JACS 2006, 128, 2770.

2006-03-29 09:16:17 | 新着論文
Catalytic, Efficient, and syn-Selective Construction of Deoxypolypropionates and Other Chiral Compounds via Zr-Catalyzed Asymmetric Carboalumination of Allyl Alcohol

allylalcoholのオレフィンのメチルアルミ化。all-synのDeoxypolypropionate骨格の調整法。

根岸先生のグループ。アリルアルコールの不斉カルボメタル化によるTBS-protected (R)- or(S)- 3-iodo-2-Me-1-propanolの調整と、そのヨードのカップリングによる変換反応。この手法を繰り返すことにより、all-syn 1,3でMeの生えた直鎖構造の合成。利用し、tetramethyldecanoic acidの調整。とfullの方がよいのではと思える盛りだくさんの内容。これだけつるつるの直鎖構造を高い立体選択性で調整できるのはすごいです。
根岸先生の仕事をしっかり追いかけていないので、これ前に読んだ気がするのだけれどと、どこが新しいのかわかりづらかったです。
1,4-ペンタジエンで環状構造を経てスクランブリングがおきて0% eeはコミュニケーションでは蛇足かなと思いました。

Org. Lett. 2006, 8, 585.

2006-03-29 07:56:35 | 新着論文
Self-Assembling of n-Type Semiconductor Tri(phenanthrolino)hexaazatriphenylenes with a Large Aromatic Core

標題のTri(phenanthrolino)hexaazatriphenylenes骨格を有する分子の合成。一次元に配列するn型半導体としての性質を示した。

hexaazatriphenyleneの自己集合する性質に着目し、フェナントレン骨格を導入。分子設計と芳香環の縮合を用いた拡大が面白かったです。

自己集合するパイ系分子の示す性質がちょっとわかりました。分子構造と物性は少しずつ慣れてきたのですが、分子配列と物性に関してイメージがなかなかわきません。

中古マイクロピペット3本セットを先着1名様に

2006-03-25 15:09:26 | Weblog
今年は春年会にもいけずに引越しの片付けをどたばたしておりましたところ
マイクロピペットの処分に困っております。

研究室で買ってくれないから、3年ほど前に自腹で購入したのですが、研究室に寄贈するのももったいないと持ってきたのです、が、使うあてがしばらくない。買ったときはそれなりによい値段で捨てるに捨てがたい。まぁ今後も使うといえば使うのでしょうが、しばらく有機合成はオヤスミだし、会社にあるだろうしということで埃をかぶせておくのもアホらしい。

そこで日頃の感謝を込めまして(?)、プレゼントの名を冠した廃品処分いたします。
早い者勝ちで、先着順1名様のみです!

モノは"Transferpette"3年程度の中古品。スケールは100-1000, 10-100, 0.5-10μl
小スケールのオープン反応、TLC展開溶媒調整、小スケールの液体試料測定などかなりの便利グッズです。1mlのサイズは少し薬品やけあり。チップは処分してしまったのでありません。

「ピペット貰ってやる!」と標題に書いて送付先を明記の上、下記アドレスに
送ってくださいませ。引越しのため、申し込みは3月27日(月)の12時までとさせていただきます。


JACS 2006, 128, 2784

2006-03-25 12:18:40 | 新着論文
Synthesis, Molecular Structure, and Reactivity of the Isolable Silylenoid with a Tricoordinate Silicon

carbenoid R2C(M)(X)のケイ素類縁体silylenoid、R2Si(Li)(F)と初めてのFをもつ単離可能なsilylenoidの報告。結晶構造は驚くことに3配位ケイ素、このような構造を有するカルベノイドは未知。

DFT計算による議論で[R2Si-F]-・Li+ の極限構造。Si-Fbondはイオン性の高い結合との事。

狙いはシリレノイドのF置換だったようですが、そこから面白い構造がとれてきたようです。系統的に理解ができないところが面白い。