有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

JACS ASAP

2005-07-08 21:07:17 | 新着論文
Total Synthesis of Ningalin D

ピロールを中心にビフェニルキノンメチドをもっており対称性が高いターゲットです。1,2,4,5-tetrazine-3,6-dicarboxylateとのinverse-electron-demand Diels-Alder反応から,3,4置換ピロールを合成。Dieckmann縮合でビフェニルを構築。鈴木カップリングの後、Curtius転移を利用してジカルボン酸をキノンメチドへと誘導。後半では、細胞毒性、多剤耐性を合成した中間体を含め評価しています。

Bogerのグループです。Inverse-electron-demand Diels-Alder反応によるピロール構築はClassics in Total Synthesis Ⅱにも取り上げられています。興味深かったのはCurtius転移から窒素原子を水と反応させキノンへ持っていっているところでした。反応機構を書いて納得いきましたが、スキームを追っていたときは、こんな簡単にsp2炭素ー窒素に付加するのか?と思いました。Dieckmann縮合により生じたフェノール性水酸基もそのままTf化してカップリングと官能基が非常に上手く使われています。Diverseも可能な合成経路なので面白いSARがでそうです。

JACS ASAP

2005-07-08 06:04:28 | 新着論文
The Selective Preparation of an Aluminum Oxide and Its Isomeric C-H-Activated Hydroxide

かさ高いジイミン配位子を用いて安定化された一価Alの酸化反応により得られた二量体の構造決定。またアジドとの反応により等電子体のヒドロキソ錯体も合成、単離。

ポリマー、酵素、無機化合物などの集合体の部分構造の解析、反応中心、構造物性相関など多くの研究が行われています。その目的で、かさ高い置換基は安定化や多量化を防ぐ観点から有用な方法であり、Powerのグループは4族の重合活性金属の研究から、terphenylによるかさ高いジイミン配位子を以前より用いています。
今回は後付だとは思いますがMAOの部分構造ということでAlを行っています。
論文そのものは、よく捕まえたなぁくらいの感想でした。興味を引かれたのはイントロでアルキルアルミニウム試薬は酸素と反応してインサーションがおきるのですね。Bの同属と考えればなんとなく納得いきますが、過酸でなくても反応するという点がAlの利点でしょうか。Alは後処理でお行儀が悪いことが多いのでメリットがあるのかどうかわかりませんがLewis酸以外のAl試薬の反応性に着目するのも面白いと思いました。根岸先生のcarbometal化、プロパルギルアルコールへのLAH, DIBAHの付加、東大の内山先生のアルミニウムアートによるベンザインの生じない芳香環のメタル化・・・ぱっと思いついたのはそのくらいでしょうか。有機アルミニウム試薬に関してほとんどしらないのだなと反省、調べてみようと思います。