有機化学にっき

気になった有機化学の論文や記事を紹介。

Org. Lett. ASAP

2005-10-31 19:48:35 | 新着論文
General Synthesis of Thiophene and Selenophene-Based Heteroacenes

オルトブロモジアセチレンからヘテロアセンの合成。
diacetyleneのオルト位アニオンを発生させ、Ch(S or Se)を導入、5-endo-digで環化。生じたアニオンが再度Chをトラップ。酸化的に結合生成。Cu存在下脱カルコゲンにてヘテロアセンが得られる。

山口先生のグループ。最近この5-endo-digを利用してヘテロサイクルを合成していますが、今回は出発原料をジアセチレンにすることで、ワンポット短段階でヘテロアセンを合成しています。

予想されるように溶解性がかなり悪いようですが、一部のX線結晶構造解析を行っており、パッキング構造がペンタセンに近いとの事です。思ったよりもパイスタッキングの相互作用がなさそうなのが不思議でした。成形性などを考慮してかTMS置換誘導体も報告しています。
ジアセチレンでも6-exoなどが起きずに5でまいたのは距離的な問題なのでしょうか。本当に5-endo-digを上手くつかっているなと思いました。オルトメタル化を利用すると誘導化やバリエーションを増やせるかなぁと思います。

JACS ASAP

2005-10-30 18:16:37 | 新着論文
Total Synthesis of (-)-Crambidine and Definition of the Relative Configuration of Its Unique Tetracyclic Guanidinium Core

Crambidineの全合成と絶対構造の決定。以前報告した合成中間体から、2-アミノピリジニウム部位の選択的な脱水素が鍵反応。


Overmanのguanidiumを持つ天然物の合成。中心のグアニジウムからの構築で反応条件を見出すまでかなり苦労したようです。構造決定や単離作業でも工夫しているようでした。検討中の合成中間体でcrabbidine環構造の溶媒の極性により異性化するという面白い現象を見出しています。THPが巻いたり巻かなかったり、極性で変わるというのがどのような効果が支配的なのかわかりませんでした。

イントロを見て、crambesidin 816の脱水でできるかなと思ったのですが、最後で検討しており進行しないようです。

「新領域研究グループ」制度の発足について

2005-10-30 16:28:14 | 新着論文
http://www.chemistry.or.jp/kaimu/branch/shinryouiki/

近年、科学研究の急激な発展は各専門分野において研究の細分化を招くとともに、異なる分野間の横断的研究や境界領域の研究を一層促進しています。化学関連分野においても研究領域が急速に深化・拡大し、複数の研究領域にまたがる萌芽的研究領域が出現しています。萌芽期にある研究は、なかなか認知されにくいが、その中から将来大きな研究分野に成長するものが現われる可能性があります。現在本会には研究を支援する制度として「部会」「研究会」制度が設置されていますが、これらはある程度確立した分野が対象です。そこで今般「新領域研究グループ」制度を発足することと致しました。本制度は、ごく少数の研究者による主体的・独創的な萌芽的研究領域での活動に対し、学会が支援を行うことにより化学関連分野の新しい研究領域を切り開くことが目的であり、本会の学術研究の活性化に繋がるものと期待されます。

■設置基準
 設置基準は以下の通りです。
  1)分野がいくつかの研究領域にまたがり、一つの既存領域ではカバー出来ない萌芽的新領域であること。
  2)申請者は本会会員であること。
  3)当初のメンバーは10名以内の少人数であること。

■活動の支援
  1)設置が認められたものは「日本化学会新領域研究グループ:○○○○○」として本会の名称を冠して活動ができます。
  2) 金銭的な支援はありませんが、本会の会議室やWebサーバーを無償で利用できます。
  3)春季年会で特別企画を企画できます。

日本化学会HPより

境界領域は測定機器やディスカッションなどで人脈、情報が重要であり、化学会よいことを提案したと思います。様々な分野の研究者が共同で成果、新領域を開発していくというのは、理研やScrippsなどが成功例だと思います。新しい研究領域が出て欲しいもの。
しかし、ちょっとやりたい人に放り出しってのが気にかかる。この制度を活かせるだけの行動力と時間のある人ってなかなかいないのではないでしょうか

Angew. Chem., Int. Ed. 2005, 44, 6348-6354.

2005-10-29 11:24:57 | 新着論文
Pushing the Synthetic Limit: Polyphenylene Dendrimers with Exploded Branching Units - 22-nm-Diameter, Monodisperse, Stiff Macromolecules

polyphenyleneデンドリマーの、各世代ににスペーサーとしてterphenylを導入。ステップワイズに5世代目、22nmのデンドリマーを合成。(画像は第二世代)

Mullenのグループ。デンドリマーは世代があがるにつれ、反応点の増加、立体障害や溶解性などによる反応性の低下があり、合成が困難になっていきます。反応性が高く信頼性の高い反応を選択する、スペーサーを入れるコロンブスの卵といえる発想で、炭素数10113という第五世代のデンドリマーを合成しています。

MALDI、TEMで観測しており、筆者らによると20nmを超える分子を、ステップワイズにかつ制御した分子を作ったのは初めてとのこと。

今後スペーサーの設計で効率的な分子設計ができるようになると思います。M+ = 134162はタンパクでもないのにすごい数字です。

母さん、僕のあの書類、どうしたでせね…

2005-10-28 07:53:38 | 日々の研究
そろそろ学振の結果の来る季節でございます。
今年は出していないので関係ないのですが、あれは通るものなのかという意見と
毎年必ず採用される研究室の違いが見えてきます。

で、通った人の話を聞くと申請書の書き方が全く違う。
自分の所属している研究室では、余白を許さず、びっしり書いたり、先の希望を書かされます。
で、通った人の話を聞くと、全く逆。審査員は何百部の申請書を見るから、パッと見でわかるように、研究室のまだ芽をだしたような実験結果、あるいはすでに行っている実験結果を組み合わせ面白くなるように書くそうです。
論文の数と質と言う話も聞くけれど、それも関係なく通った人も知っているし。


「こんな書き方で通るわけねぇよなぁ、面白いと思ってるの本人だけで説得力ないよなぁ」と思うような直しに従ってるのもよくないのかもしれないが、爺さんを説得するのは大変。
うちの研究室でも過去に通っていた人は毎年のようにいたので、書式の問題だけではないと思うですが、通らなくなってきたあたりで考えなくてはいけないと思ったり。

どこで拾った言葉だか忘れましたが
「変化に柔軟に対応できるのがプロフェッショナル」