有機化学にっき

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JACS ASAP

2005-07-06 14:41:25 | 新着論文
Exploiting the Pd- and Ru- catalyzed cycloisomerizations: Enantioelective Total Synthesis of (+)-Allocyathin B2

Trostのグループです。開発したen-yneのcycloisomerizationを用い、天然物不斉全合成を達成しました。ターゲットは5、6、7員環が連続し、橋頭位に不斉四級炭素、もう一方はトリエンで構成されています。
シクロペンタノン誘導体から出発しPd-catalyzed AAAにて初めの四級炭素を構築。根岸カップリングによってオレフィンを導入し、Ru触媒によるcycloisomerizationによって6員環と四級炭素を構築。hydroxylative Knoevenagel reactionにより立体選択的に水酸基を導入して、分子内アルドールにより7員環を巻いて不斉全合成を達成しました。2-Me-cyclopentanoneから17step。

鍵反応であるcycloisomerization、かなり検討しています。3置換オレフィンは反応性が悪いのに加え、不斉4級炭素をつくらなくてはいけません。Pd触媒での最適化ではo-CF3BzOHをプロトンソースとすることを見い出しています。求める立体を得るまでオレフィンの異性体にも苦労したみたいです。結局Ru触媒を用いる系に移っていますが、途中の立体の考察など面白かったです。
hycroxylative Knoevenagel反応を知らなかったのでスキームを追っている時誤植と勘違いしてしまいました。脱水の脱プロトンが不利な方向に起っている気がして、反応機構を書いてみるまで?でした。
不飽和ニトリルの1,4-還元が進行せず、Pd/Cという少し強い水添で二重結合を還元していますが理由がわかりませんでした。(筆者達もsurprisingly,と言っています)
retroでは上フラグメント、下フラグメントを分けて、6員環を作るのが効率的に思いました。cycloisomerizationを鍵反応として使っているため合成経路がlinearになっています。しかしながら、生じた官能基を非常にうまく利用していますので全体として短段階となっています。
鍵反応はatom economyを唱えていますが、収率が中程度です。置換基や立体で多置換オレフィンでも効率が上がるような工夫が必要かなと思いました。