[日本風力開発 決算の謎2010] 監理銘柄解除、補助金決定

久しぶりの更新です。
日本風力開発が有価証券報告書の提出遅れから監理銘柄になって2ヶ月が過ぎました。主な内容はこちらをご覧下さい。

その後、何事もなかったかのように監理銘柄から解除され、さらに補助金の交付も決定されました。

平成22年度新エネルギー等導入加速化支援対策事業
〔新エネルギー等事業者支援対策事業〕の交付決定について
http://www.nepc.or.jp/topics/2010/0811_2.html
採択事業者一覧(pdf)
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/100811_2.pdf


反対運動のある銭函、補助金支給決定前の資材購入を自ら認めた松前、吹越台も補助金も決定。ここまで明確に疑惑があるのに、何のペナルティーもなく補助金を支給するということに強い違和感と憤りを感じています。
疑惑の「覚え書き」の相手と思われる大株主の前田建設工業がそのまま吹越台の建設工事を請け負う。このことに経済産業省、nepcは疑問を抱かなかったのでしょうか?

 外部有識者からなる採択審査委員会(委員長:財団法人地球環境産業技術研究機構 理事・研究所長 山地憲治氏)において厳正な評価および審査を実施し、494事業への補助を決定いたしました。

とありますが、採択審査委員会では問題にならなかったのでしょうか?一体どのような議論を経て交付が決定したのか議事録を公開して欲しいと思います。

日本風力開発は6月30日に元資源エネルギー庁長官の稲川氏を取締役副会長に迎えている。

代表取締役および役員の異動に関するお知らせ(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100517daihyoutorishimariyakuoyobiyakuinnoido.pdf

この天下り受け入れが補助金決定に功を奏したのかもしれない。

私は基本的には風力推進派ですが、現在の風力発電所開発の問題点、強引な建設手法、補助金のあり方について何度も書いてきました。住民の反発を招くような開発を続けては、日本の風力発電、自然エネルギーの普及、促進は不可能でしょう。
現状では、外部の企業が有無を言わさず開発を行い、住民にはほとんど利益はない。自然エネルギーを利用する際には、地域の住民との利害を整理し、お互いが納得できる関係を作り出すことが最も大事だと思います。

今回の日本風力開発の問題は、このまま何事もなかったかのように幕引きとなるのでしょうか?私はそう上手くは行かない。行かせてはならない。と思っています。
そして、こうして風力の問題が明らかになった機会に今後の自然エネルギーの利用方法、さらに日本のエネルギー戦略をどうするのか。利権にとらわれず、真剣に議論する時だと思います。


関連ページ
日本風力開発株式会社
http://www.jwd.co.jp/
一般社団法人新エネルギー導入促進協議会
http://www.nepc.or.jp/

日本風力開発 決算の謎2010
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/04f65e34ca83bde201508849ebb4ae8a
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f



2010/8/20 更新
猛暑が続いています。体調管理に十分お気をつけ下さい。
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[日本風力開発 決算の謎2010] 外部調査委員会調査報告書より

日本風力開発が有価証券報告書の提出遅れから監理銘柄になって約1ヶ月。
主な内容はこちらをご覧下さい。

日本風力開発の2010年3月期決算において、新日本監査法人は過年度決算の修正を主張。しかし、日本風力開発はこれを不服として、新日本監査法人を解任。有価証券報告書の提出が期限に間に合わなくなり、管理ポストへ移行された。

日本風力開発は、決算処理の適切性を検証するためとして外部調査委員会を設置。7/15に調査報告書が公表された。

外部調査委員会調査報告書受領ならびに過年度決算の訂正および平成22年3月期決算短信の訂正に関するお知らせ(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100715gaibutyousaiinkaikekka.pdf


この報告書で明らかになった事実関係を箇条書きで。

平成21年3月期決算において計上された風車93基分の斡旋手数料については、メーカー側は買掛処理しておらず、手数料収入も得ていない。(この斡旋手数料約29億円は平成22年2月~3月にかけてメーカーから日本風力開発に支払われた)
前にも書いた通り、この風車は受注残になっており、21年3月期においてはゼネコン側も支払いを行っていないはず。21年3月期での手数料の計上はおかしな気もするが、法的に問題ないと結論。この風車分に関しては過年度決算の修正は行わない。

平成20年、21年3月期にゼネコンが購入した蓄電池67MWに関して、平成22年3月期に日本風力開発は50MWを買い戻しした。ゼネコンが蓄電池を購入する際に、日本風力開発は斡旋手数料を得ていたが、このうち、平成21年度3月期の30MW分の手数料収入(約3億円)については、過年度修正を行う。(平成21年3月期決算での売上高が約3億円減少する)
この蓄電池買い戻しに関しては、もし利用先がなければ日本風力開発が買い戻すという「覚書き」が交わされていたが、この「覚書き」は法的に有効ではなく、買い戻し自体も覚書きに沿ったものではないとされている。

通常風力発電工事に関しては、3社程度から相見積もりを取り、特段の事情がない限り最も低い見積価格を提示した建設会社に工事を発注している。(入札等は行われていない?)

ゼネコンが購入した蓄電池67MWのうち、55MWについては日本風力開発が買い戻ししたが、残り12MWについては、青森県六ヶ所村の吹越台地での使用され、蓄電池を購入したゼネコン丙社が工事を請け負うことが決まっている。(どのようにして施工会社が決定されたかは不明)
連結子会社の風力発電工事案件に専用的に使用する資材としての風力発電機等を販売斡旋する、いわゆる「ひも付き」とまでは断定できない。
(この辺り、報告書では回りくどく、分かりにくい文章になっています。間違いなどありましたらお知らせ下さい)


さて、報告書に書かれている事実関係は上記の通り。ここで注目なのは、覚書きの相手方のゼネコンが吹越台地風力発電所工事の施工会社となったとしている点。吹越台地風力発電所の工事は前田建設工業が受注しているようだ。

前田建設工業株式会社 第65期株主通信(pdf)
http://www.maeda.co.jp/ir/report/b_reports_pdf/ir65_kabutsu.pdf#page=7

前田建設工業は日本風力開発の大株主でもある。

日本風力開発 企業概要
http://www.jwd.co.jp/company/about.html

資本関係のある建設会社に風力発電所等の資材の購入を依頼し、メーカーから斡旋手数料を得る。さらに風力発電所建設工事をこの会社に発注し、資材を使用する。風力発電所工事には補助金が支給されているが、建設会社決定に際して入札は行われていない。
調査報告書では会計処理についてのみの言及だが、最も重要なのはこの補助金についてだろう。

建設会社に風車等の資材を斡旋し、斡旋手数料を得る。資材を購入した建設会社が風力発電所建設工事を受注する。補助金が交付されているのに入札も行われていない。これでは建設費の正当性が疑われる。
建設会社と風力発電事業者に癒着がなかったか。補助金は適正に受給されたのか。これは日本風力開発だけの問題ではないかもしれない。今後の日本の風力発電のためにも実体を明らかにして欲しい。


関連ページ
日本風力開発
http://www.jwd.co.jp/
前田建設工業
http://www.jwd.co.jp/

日本風力開発 決算の謎2010
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/04f65e34ca83bde201508849ebb4ae8a
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f


2010年7月16日更新
現在発売中の週刊朝日7月23日号に「風力発電に夢をかけた男」としてエコパワー社創業者の小島剛氏の特集記事があります。日本で風力発電事業を初めて行った小島氏の栄枯衰退。大変面白い記事でした。興味のある方はぜひご覧になって下さい。
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[日本風力開発 決算の謎2010] 補助金について

日本風力開発が有価証券報告書の提出遅れから監理銘柄になって20日あまり。
主な内容はこちらをご覧下さい。

日本風力開発はH21年3月期に代理店収入を得た風車115機中93機とNAS蓄電池40MW、それに20年3月期の蓄電池27MWをゼネコンに購入依頼し、もしこれらの資材の納入先がなければ、日本風力開発が買い戻すという「覚書き」を交わした。そして「覚書き」通り、日本風力開発は蓄電池55MWをゼネコンから買い戻した。(実際は連結子会社の松前、銭函風力開発が直接ゼネコンから購入したと見られる)


これは、売り上げを増やすことで決算を良く見せようとしたということだろう。2009年3月23日という期末ぎりぎりになっての取引。なんとか黒字を確保したいという思惑が感じられる。もちろん、これだけでも粉飾決算が疑われるが、もっと大きな問題がある。それは、風力発電所建設には補助金が支給されているということ。

風力発電所に関しての補助金は主に「新エネルギー等事業者支援対策事業」として、建設費の約1/3が支給される。1件当たりの年間補助金上限額は10億円(相当の理由が有る場合は15億円)最大4年間で40億円となっている。ちなみに、この補助金は昨年の仕分けで「予算半減」となり、新規の補助採択は難しい状況。

事業仕分け 1.95兆円捻出し終了 449事業を検討
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/180978ce259d30879ad2b1a965c5fecc

この補助金は平成21年度から一般社団法人新エネルギー導入促進協議会(nepc)が窓口になっている。

平成21年度新エネルギー等事業者支援対策事業 公募要領(pdf)
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/090420_2.pdf

上記公募要領の冒頭(2ページ目)にはこう書かれている。

 当協議会から補助金の交付決定を通知する前において、発注等を完了させた設備等については、補助金の交付対象とはなりません。

日本風力開発がゼネコンに依頼して、蓄電池、風車を購入してもらったのがH21年3月。銭函、松前の補助金支給が決定したのはH21年7月。そして、日本風力開発が蓄電池を買い戻ししたのがH22年3月(実際には、銭函、松前風力開発が購入)。補助金交付決定前のH21年3月に蓄電池等を発注したと考えるのが、自然だと思う。

また、補助金が支給される以上、入札で決めるべき施工会社が、補助金交付決定前に決まっていることになる。これでは、風力事業者と建設会社の関係も不透明となり、工事代金等の妥当性も疑われる。

日本風力開発が風車等の機材をゼネコンに購入してもらうことによって斡旋手数料を得た。この手数料分は建設費が増え、その分、補助金も増えることになる。(実際は、ゼネコンを通す分さらに建設費は増えるはず)少なくともこの斡旋手数料にかかる補助金は水増しされたものと言えるだろう。

今回の最も大きな問題は、この補助金に関してだろう。さらにゼネコンと日本風力開発との関係、癒着がなかったか。これが今後の焦点だと思う。

本年度(平成22年度)の補助金の公募は6/21で締め切られた。銭函、松前も前年度からの継続事業として申し込みを済ませただろう。新エネルギー導入促進協議会が補助金の支給継続を認めるのだろうか?注視する必要がある。


関連リンク
日本風力開発
http://www.jwd.co.jp/
一般社団法人 新エネルギー導入促進協議会
http://www.nepc.or.jp/

行政刷新会議事業仕分け結果 
省・新エネルギー導入のための補助・事業者向け (pdf)
http://www.cao.go.jp/sasshin/oshirase/h-kekka/pdf/nov27kekka/2-68.pdf

日本風力開発 決算の謎2010
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/04f65e34ca83bde201508849ebb4ae8a
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f


2010/7/4 更新
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[日本風力開発 決算の謎2010] 風車、蓄電池の行方は?その2

日本風力開発が有価証券報告書の提出遅れから監理銘柄になって約2週間。
主な内容はこちらをご覧下さい。

日本風力開発はH21年3月期に代理店収入を得た風車115機中93機とNAS蓄電池40MW、それに20年3月期の蓄電池27MWをゼネコンに購入依頼し、もしこれらの資材の納入先がなければ、日本風力開発が買い戻すという「覚書き」を交わした。そして「覚書き」通り、日本風力開発は蓄電池55MWをゼネコンから買い戻した。(実際は連結子会社の松前、銭函風力開発が直接ゼネコンから購入したと見られる)

ゼネコン側にあった67MWの蓄電池のうち、55MWは日本風力開発が買い戻し。残り12MWについては、

 12MW分については、当該ゼネコンが受注した風力発電事業の資材として使用予定

となっている。

 会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ内
 外部調査委員会「調査報告要旨」より
 http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100614kaikeikansa.pdf#page=6


現在、補助金交付決定している案件で蓄電池併設型は銭函と松前。ということは、ここの受注業者が今回の「覚書き」の相手ということですね。業者決定の入札などを行っていないのは明らか。それにしても、この2カ所はすでにゼネコンから買い戻しした計55MWの蓄電池を保有しているはず。自己所有の蓄電池は使わず、さらにゼネコンから購入するのでしょうか?

蓄電池の使い道はともかくとして、蓄電池67MWのうち55MWを日本風力開発、12MWをゼネコンが現在持っている。では、同じく「覚書き」を交わしてゼネコンで購入した93機の風車はどうなっているのでしょうか?

日本風力開発は、日立製作所と日本製鋼所の風力発電機の代理店となっている。以前も書いたが、日立製作所の方は決算資料等に風力発電に関して特段の記述がなく、この93機は日本製鋼所の風車だと思われる。

日本製鋼所 平成21年06月29日 第83期報告書
http://www.jsw.co.jp/ir/pdf/jiho_83_f/jigyoho_83_all2.pdf#page=9

上記報告書によると、H21年3月末時点で受注残が100基を越えており、2009年度に100基、2010年度に150基に生産体制を構築するとなっている。

また、H22年3月期の決算説明資料によると、風力発電事業では、

 H21年3月期 売上高 18億円 受注高 217億円
 H22年3月期 売上高 188億円 

となっている。

日本製鋼所 10.3期決算・中期経営計画説明資料(PDF形式)
http://www.jsw.co.jp/ir/pdf/setumeikai/201003kessan.pdf

このためゼネコンが購入した93基の風車はH21年3月期には受注残となっており、H22年3月期に納品されたと見られる。日本製鋼所の生産能力、それに21年3月期の受注残が約100基ということから、売上高188億円のほとんどが日本風力開発から依頼されたゼネコンの購入だろう。ゼネコンはこの金額を風車購入のため支出しなければならなかったということになる。

ここからは私の想像なのですが、

H21年3月に日本風力開発の依頼で蓄電池の購入に約100億円を払ったゼネコン(この時点では風車は受注残)。H22年3月期には風車が出来上がり、納入されることとなり、風車の代金を支払わなければならなくなった。
政権交代で、風力発電に関する新規の補助金は事実上ストップ。いつ風力発電所の建設が始まるかも分からない。前期に100億支出していて、さらに200億近くの支出は厳しい。約束通り、蓄電池だけでも買い取れ!

と、日本風力開発に迫ったのかもしれない。

この93基の風車は日本風力開発では、決算書には目だった支出、固定資産の増加がなく、まだゼネコンが保有していると見られる。日本風力開発の現在、計画中の案件は 
 
 胎内 10基
 銭函 20基
 松前 20基
 吹越台 10基
 ------------
 合計 60基

H21年3月期には宇久島の50基も計画にあったが、H22年3月期の決算書には記載がなく計画断念したよう。全て計画通り建設できても30基以上余分となる。建設が遅れたり、余分となった風車はまたゼネコンから買い取るのでしょうか?

繰り返しになるが、補助金交付決定前の風車等の資材の手配は補助金給付対象外。風車、蓄電池を日本風力開発の依頼で購入したゼネコンがこれら全ての建設工事を受注することになれば、補助金の適正支出という点で非常に問題。建設費の妥当性も疑われる。

日本風力開発とゼネコンの関係。これも今後の焦点。


(このブログの内容に誤りがありましたらお知らせ下さい。反論、内部事情も歓迎です!)


関連リンク
日本風力開発
http://www.jwd.co.jp/
日本製鋼所
http://www.jsw.co.jp/

日鋼室蘭が2000kW発電用風車、年100基に増産へ
http://www.muromin.mnw.jp/murominn-web/back/2008/05/28/20080528m_01.html

北方ジャーナル 【小樽市銭函風力発電計画】札幌で初の住民説明会
http://hoppojournal.kitaguni.tv/e1682385.html

当ブログ内
[日本風力開発 決算の謎2010] 風車、蓄電池の行方は?
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/9d33cc7b22c3c151efd769ac9dc2c658
日本風力開発、有価証券報告書の提出遅れる
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/e25de1d467a0b3c6cd6c3326169ce037
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f



2010/6/26 更新 
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[日本風力開発 決算の謎2010] 風車、蓄電池の行方は?

日本風力開発が有価証券報告書の提出遅れから監理ポストに入って約1週間。
主な内容はこちらをご覧下さい。

問題となっているのは、H21年3月期に代理店収入を得た風車115機中93機とNAS蓄電池40MW、それに20年3月期の蓄電池27MWをゼネコンに購入依頼し、もし子会社のSPC(風力発電事業会社)が購入しなかった場合は、日本風力開発が購入するという「覚え書き」を交わした。というもの。実際、日本風力開発は蓄電池55MWをゼネコンから買い戻した。

これに関し、2010/5/14に特別損失の計上に関するお知らせというIRが発表されている。

特別損失の計上に関するお知らせ(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100514tokubetsusonshitsu.pdf

ゼネコンから買戻した55MWのNAS電池を販売する際に発生した手数料収入6億1600万円を固定資産評価損として22年3月期に計上した。という。
今回、有価証券報告書が提出期限に間に合わなかったのは、新日本監査法人が過年度決算の修正を求めたのに対し、日本風力開発が応じなかったためと報道されている。新日本監査法人はこの取引に対して、固定資産評価損ではなく21年3月期の決算の修正を求めたと思われる。

日本風力開発の22年3月期決算短信を見ると、確かに固定資産評価損として計上されている。

日本風力開発 平成22年3月期 決算短信(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100514h22kessanntanshin.pdf

メーカーから得たNAS蓄電池55MWの斡旋手数料は約6億だったとして、実際のNAS蓄電池の代金を日本風力開発はゼネコンに支払っているはず。この代金はどうなったのか?

日本風力開発の22年3月期決算短信を見てみると、資産の部の「商品及び製品」が前年と比べ、100億3698万円増えている。負債の部の「買掛金」では前年度は計上がなく、22年度は106億3170万円計上されている。ゼネコンから4億円のマージンを上乗せして蓄電池を買い戻したとされているので、約104億円が蓄電池の代金と思われる。(これはまだ支払いは済んでおらず買掛金となっている)

55MWの蓄電池に対して約100億円とすると、NAS電池の価格は1MW当たり約1.8億円。3/30に日本風力開発が公表した、マレーシアでのスマートグリッド蓄電制御システム受注に関するお知らせでは、NAS電池52MWのシステムで売上げ高200億円が見込まれるとしていた。

日本風力開発、マレーシアでスマートグリッド蓄電制御システムを受注
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100330-00000079-scn-biz

22年3月期決算短信の中では、このマレーシアでのスマートグリッドシステム販売で売上高13,689百万円(136億8900万円)、営業利益5,053百万円(50億5300万円)が計上される見込みとされている。(なぜ売上高200億が約136億になったかは不明)しかし、NAS電池の価格を1MW当たり約1.8億円とすると、55MWで約100億円。営業利益が50億は不可能。

このマレーシア案件については、雑誌FACTAの2010年5月号に記事がある。

日本風力開発また「眉唾の神風」
http://facta.co.jp/article/201005040.html

この記事が真実かどうかは分からないが、このマレーシア案件での会社が公表した営業利益は高く見積もられていると思う。

もう一つ、気になるのが21年3月期に同じゼネコンが購入したとされる風車93機の行方。これについてはまた次回。


(このブログの内容に誤りがありましたらお知らせ下さい。反論、内部事情も歓迎です!)


追伸:
以前も書きましたが、元はと言えば子会社の風力発電事業会社で最終的に使用される機材(風車等)をゼネコンがメーカーから購入する際、親会社の日本風力開発がメーカーから代理店収入を得るというこの構造に問題があると私は思います。日本風力開発だけの問題なのか、それとも日本の風力発電業界全体に関わる問題なのか。問題点は全て洗い出し、再出発して欲しいと思っています。


関連リンク
日本風力開発
http://www.jwd.co.jp/
日本風力開発 主要株主である筆頭株主の異動に関するお知らせ(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100621hittoukabunushikoutai.pdf

雑誌FACTA
日本風力開発「神風」決算の怪
http://facta.co.jp/article/200909059.html
日本風力開発また「眉唾の神風」
http://facta.co.jp/article/201005040.html

当ブログ内
日本風力開発、有価証券報告書の提出遅れる
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/e25de1d467a0b3c6cd6c3326169ce037
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f



2010/6/21 更新 今日は夏至です。
明日、22日に銭函風力発電所の建設に関し、日本風力開発による札幌市手稲区の住民説明会が開かれるそうです。
日本風力開発は現れるでしょうか?
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日本風力開発、有価証券報告書の提出遅れる

 日本風力開発は14日、2010年3月期の有価証券報告書を金融商品取引法が定めた期限の6月末までに提出できない見通しだと発表した。風力発電機など仲介取引において従業員が無断で取引先と不正な覚書を交わしていたという。
 日本風力開発は覚書が取引に影響を与えたと認められないとしたが、新日本監査法人は「疑義が払拭(ふっしょく)されたとは言い切れない」としたため解任した。後任の一時会計監査人にはやよい監査法人を選んだ。

日本経済新聞 2010/6/15
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C93819696E3E6E296868DE3E6E2E4E0E2E3E28698E2E2E2E2;at=ALL


風力発電事業大手の日本風力開発が管理ポストへ。決算に関し、新日本監査法人は疑義があるといい、このため、日本風力開発はこの監査法人を解任。有価証券報告書の提出が期限に間に合わなくなったという。

日本風力開発に関しては、雑誌FACTAの記事を元に、「日本風力開発 決算の謎」と題して3回に渡って書いた。これは2009年3月期の決算において、風力発電機115基+蓄電池の代理店収入36億円以上を経常したことに関するもの。今回問題となっている「不正な覚書」もこの2009年3月期の代理店収入に関係しているようだ。

日本風力開発のビジネスモデルは下記のようになっている。




(クリックで大きく見られます)

風力発電事業会社(原則連結子会社)が建設会社に工事を一括発注。
建設会社は風車や蓄電池をメーカーに直接発注し仕入れる。
日本風力開発はメーカーから販売手数料の支払いを受ける。

雑誌FACTAで指摘した点は、21年3月期の第4四半期に建設会社が購入した風車と蓄電池で日本風力開発が代理店収入を得たことに対し、水増しされたものではないか。というもの。これに対し、日本風力開発は建設会社が独自の判断で風車等の仕入れを行い、「はっきりしているのは、リスクは建設会社さんが負うこと」と述べたという。

日本風力発電のプレスリリース
会計監査人の異動及び一時会計監査人の選任に関するお知らせ(pdf)
http://www.jwd.co.jp/pdf/news/100614kaikeikansa.pdf

上記のプレスリリースによると、問題となっている覚書きでは、2009年3月23日に風力発電機93機、蓄電池合計57MW(このうち27MWは平成20年3月期分)の購入に関し、最終的に子会社の風力発電事業会社が購入しない場合、日本風力開発がゼネコンに対し、販売代金等を支払う旨の記載があるという。

つまり前回問題にした風力発電機115機のうち93機と蓄電池30MWに関しては、この覚書きに沿い、日本風力開発の依頼で建設会社が購入したと言える。覚書きの法的根拠云々以前に、明らかにこれは決算をよく見せようとした工作だろう。
さらに、風力発電所建設に関しては補助金が支給されるため、建設会社や資材購入先は入札で決めるべきだが、この場合、補助金支給が決定する前に必然的に工事を請け負う建設会社が決定することになる。建設会社もこれを狙って風車等の事前購入を了承したのだろう。建設会社にはリスクがあるので、もし、風力発電所建設が実現しなかった場合は、日本風力開発が買い取るという覚え書きを書かせたと思われる。

さて、その後、政権交代に伴い、風力発電所建設の補助金に関しても仕分けの対象となり、新規の建設に対する補助金は難しい情勢となった。日本風力開発は平成22年1月に約4億円のマージンを上乗せし、蓄電池55MWを建設会社から買い取った。日本風力開発のプレスリリースでは、これは覚書きとは関係がなく、海外展開で蓄電池が必要になったため。としている。しかし海外案件は延期となり、最終的に平成22年3月に子会社の銭函と松前風力発電所が購入した。

非常に分かりにくい、回りくどい経緯で正直に言ってこれをそのまま信じる人はあまりいないだろう。
日本風力開発は覚書きの通りに建設会社から蓄電池を買い取ったが、このままでは循環取引になるので前年度の販売手数料も取り消しとなり、平成21年度決算も修正しなければならなくなる。このため、どうしても平成22年3月までに蓄電池を販売しなければならなかった。私はこう解釈している。

新日本監査法人はこの経理操作に疑念を抱いたわけだが、日本風力開発はこれを押し通そうとしているようだ。これが事実であれば、経理上の問題だけではなく補助金に対する不正も疑われる。日本の風力発電にとってはさらに信頼性を失う自体になるかもしれないが、悪質な業者は撤退して欲しい。私は基本的に風力推進派だが、真剣にそう思っている。



関連ページ
日本風力開発株式会社
http://www.jwd.co.jp/
雑誌FACTA 日本風力開発「神風」決算の怪
http://facta.co.jp/article/200909059.html

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日本風力開発「神風」決算の怪  雑誌FACTAより
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/742832b81e996bc76aa3064e0cc50c90
日本風力開発「神風」決算の怪 その2 風車の流れ
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/02b41ec4781d001cb34e280934495015
日本風力開発「神風」決算の怪  まとめ
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/36976d40e2ccf897939ffaf0c6a00dc0


2010/6/15更新 
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