再生可能エネルギー固定価格買取制度:2012年11月末までの認定・運転開始状況

再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)が7月に開始され約5ヶ月が経過。資源エネルギー庁からは毎月の設備認定・運転開始状況が公開されている。

再エネ設備認定状況(件数、出力)
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/index.html
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/dl/setsubi/201211setsubi.pdf


(画像クリックで大きく見られます。これ以降の画像も同様)

平成24年4月から11月末までに運転開始した再生可能エネルギー発電設備の発電出力は144.3万kW。このうち、太陽光発電設備が139.8万kWと9割以上。また、認定を受けた設備容量は全体で364.8万kWで、太陽光で約9割(住宅用72.7万kW、非住宅用 253.5万kw)。

資源エネルギー庁の年度末までの導入予測では再生可能エネルギー全体で250万kwであり、認定容量ではすでに大きく上回っている。これに対して、注釈で

固定価格買取制度開始以後、経済産業大臣による設備の認定を受けた新規設備は11月末時点で364.8万kWですが、この中には今年度中に売電開始に至らないものも多く含まれており、今年度末までの導入予測(約250万kW)と単純に比較することは妥当ではありません。

としている。

これだけ見ても分かるとおり、現在までのところ、再生可能エネルギーの導入・認定状況は太陽光発電に大きく偏っている。特に非住宅用は年度末までの導入予測が50万kwなのに対し、すでに運転開始が37.1万kw。予測を大幅に超えることは確実。さらにこれまでの推移を見るために資源エネルギー庁の資料からグラフを作成してみた。
*8月以前の運転開始状況は4~6月、4~8月のみの値の公開なのでこの期間で等分している。このため8月まで参考値です。


運転開始設備容量(累積)


運転開始した設備では、住宅用太陽光がほぼ一定の割合で増加しており一位。次に非住宅用太陽光となっている。住宅用太陽光の余剰買取制度は昨年から引き続き実施されていたのに対し、全量買取となる非住宅用は7月から制度が開始されたことに留意。その他の風力、水力、バイオマスなどの運転開始はほとんどなし。これらは計画から設備の導入までに時間がかかるため、制度が開始されてもすぐには増えない。

運転開始設備容量(単月)


単月の運転開始容量で見ると、非住宅用太陽光は固定価格買取制度が開始後の7月以降に大きく増えていることがわかる。来月(12月末時点)では住宅用太陽光を越える見込み。

認定設備容量(累積)


認定を受けた設備容量では、非住宅用太陽光が住宅用を引き離して大きく伸びている。また、風力発電も少しずつ増えている。

認定設備容量(単月)


単月で見ると、住宅用太陽光が毎月ほぼ一定量なのに対し、非住宅用では月を追うごとに増えている。11月の1ヶ月間では90.8万kWの増加。12月には100万kwを超えるのは確実。

このように、非住宅用太陽光の運転開始、認定が突出して多くなっている。これはひとえに非住宅用太陽光の買取価格が高く、利益率が高いためだろう。

また今の固定価格買取制度では、認定を受けるとこの時点の買取価格が確定する。大規模なメガソーラーなど運転開始が数年後になったとしてもこの価格(非住宅用太陽光は税込み42円/kwh)が維持される。このため、着工・運転開始が先になったとしても42円/kwhを確保しようと、駆け込み認定も増えている。

始めに記載したとおり、資源エネルギー庁では、認定を受けていても「今年度中に売電開始に至らないものも多く含まれており、今年度末までの導入予測(約250万kW)と単純に比較することは妥当ではありません」としているが、今年の買取価格は維持されるため、この分の負担が電気使用者にかかってくることには替わりない。また、認定を受ける際には運転開始時期を明記しなければならないため、年度内にどのくらいの設備が運転開始するかはすでに把握しているはず。

資源エネルギー庁では当初の導入予測にこだわっているようだが、この予測の誤りは明らか(特に非住宅用太陽光では予測を大きく超えている)。現時点でいつどのくらいの導入が見込まれるのか、そのための負担はどのくらいになるのか。また、今までの発電電力量はいったいどのくらいなのか(発電量については一度も公表されていない)。正しいデータ・予測の公開が急務。



*来年度(2013年度4月から)の買取価格は今年度同様に調達価格等算定委員会を開き、パブリックコメントを経て決定する予定。まだ算定委員会の日程すら決められていない。混乱を避けるためにできるだけ早く開催するべき。



2012/12/24 更新
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再生可能エネルギー固定価格買取制度、H24年度の賦課金減免状況

前回、固定価格買取制度の賦課金減免事業所について、個人的に集計した結果を掲載しましたが、資源エネルギー庁の資料でH24年度の賦課金減免状況が公開されました。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度についてH24年10月(pdf,P44)
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/dl/2012setsumeikai.pdf

減免対象は以下の通り

 855事業者、1430事業所。
 減免対象電力量 476億kWh(製造業419億kWh、非製造業57億kWh)

賦課金が免除される金額は
 
 476億kwh x 0.22円/kwh x 80% = 約84億円

となります。

 
私の集計では減免認定の電気使用量は約450億kwhでしたので、約26億kwhの集計漏れがあったようです。訂正いたします。(事業者、事業所数は合っていた)

業種別・賦課金減免状況

(クリックで大きく見られます)

業種別の減免対象電力量では製造業が9割を占め、鉄鋼(154億kWh)、化学(93億kWh)、非鉄金属(46億kWh)、電子部品(46億kwh)など。
また、非製造業では、水道(27億kWh)、熱供給(10億kWh)、冷蔵倉庫(9億kWh)などとなっています。

減免対象の電力量が476億kwhということは、日本の年間発電量約1兆kwhの5%以下。前回も書いたとおり賦課金減免はそれほど多くない印象です。これは電気事業者から購入した電気が対象で、自家発電を使っている大手企業が対象にならないためかと思います。また、減免認定されると企業名、電気使用量等が公表されるのでこれを嫌って認定を受けなかった企業もあるかもしれません。

この賦課金減免制度では、規模がある程度大きく、かつ、売り上げに対する電力使用量が大きくなければ減免を受けることはできません。すでに節電の取り組みをおこなっている事業所は減免を受けられないという可能性も。また、水道業などは国際競争力に配慮するという減免の趣旨に当てはまるのかも疑問あり。

再生可能エネルギーの固定価格買取制度は、電気使用者が負担することで再生可能エネルギーの普及を進めようという制度。納得して賦課金を払い続けることができるか。どこまで負担できるか。不公平感をどうなくすか。こういった詳細設計が固定価格買取制度の鍵になると考えています。


関連ページ
再生エネ賦課金の減免求めるドイツ企業3倍に (2012/8/30)
http://jrri.jp/info-201208.html
ドイツの賦課金減免制度が来年から緩和されることで、減免される電力量は850億kWhから1070億kWhへと増えると。

電気代高騰が総選挙争点に=脱原発のドイツ-国民に不満、不公平感も
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201210/2012102000168&g=pol
賦課金引き上げ、8割が反対=電気代高騰に反発-独調査
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201210/2012102700092
企業の減免が拡大される一方、家庭用の賦課金は大幅に上昇。国民の不満、不公平感が高まっていると。

欧州におけるFIT制度と 産業界の費用負担及び軽減措置等に関する動向 ~ ドイツを中心として ~
http://www.jisf.or.jp/news/topics/documents/Ito_1129_JPN.pdf
ドイツの賦課金減免制度の詳細説明あり。

日本エネルギー経済研究所 賦課金の減免措置の運用細則が明らかに
http://eneken.ieej.or.jp/data/4358.pdf

再生可能エネルギー固定価格制度、賦課金減免について
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/30d8bdd66d3dbee77467bbe7f2d4fcb0
前回記事。賦課金減免の制度内容についてはこちらをご覧ください。

2012/11/18 更新
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再生可能エネルギー固定価格制度、賦課金減免について

2012/11/17 更新:資源エネルギー庁の資料でH24年度の賦課金減免状況が公表されました。以下の記事の集計とは若干数字が異なっています。正確な数字等は次の記事をご覧ください。
------------------------


再生可能エネルギーの固定価格制度が開始されて約3ヶ月が経ちました。この制度では、再生可能エネルギー由来の電力を通常よりも高い一定の価格で電力会社が買い取り、高値分を電気使用者が賦課金として負担します。国民全体で負担することで、再生可能エネルギーを増やそうという趣旨。

ただしこの負担には例外規定があり、一定の基準を満たした電力多消費企業は賦課金が減免されます。産業保護、電気代が高くなることで国際競争力が落ちることを防ぐという意図のようです。また、今年度は東日本大震災により著しい被害を受けた電気の使用者に対する減免もあります。

資源エネルギー庁:なっとく!再生可能エネルギー 減免認定について
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/nintei_genmei.html#nav-kaitori-detail

減免特例の対象になる事業所は、大まかには下記の通り。(詳細規定は上記リンク参照)

 事業所ごとの対象事業に対する電気使用量が100万kWh以上
 対象事業の原単位:売上高千円当たりの電力使用量(kWh)が、5.6(kwh/千円)以上

減免対象に認定された事業所への賦課金は一律80%引き(20%の支払い)になります。また、ここでの年間電気使用量は電気事業者(一般、特定規模、特定電気事業者)からの購入分に限られていて、自家発電等による電気は対象になりません。
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/dl/sinsei_faq.pdf#page=9


例えば年間100万kwhの電気を使用する減免認定事業所の場合、今年度の賦課金は0.22円/kwhなので、

 100万kwh x 0.22円/kwh x 80% = 176,000円

が減額されることになります。

この平成24年度の賦課金減免の認定を受けた事業者はすでに公開されています。

資源エネルギー庁:平成24年度減免措置の認定を受けた事業者に係る情報の公表(PDF)
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/dl/2012genmei_kouhyo.pdf

減免認定された事業所名、電気使用量、原単位などが記載されています。今回、このPDFファイルを変換して集計してみましたが、自動変換なので洩れや誤変換があるかもしれません。もし、誤りなど見つけられた際はご一報ください。


さて、平成24年度の減免措置を受けた事業所の集計結果は下記の通り。

 事業者数885
 事業所数1430
 減免認定された電気使用量 44,861,497,449kwh(約450億kwh)
 減額される賦課金 7,895,623,551円(約79億円)

*2012/11/18 追記:正しくは、減免認定の電気使用量 476億kwh、減免される賦課金 約84億円でした。

日本の1年間の総需要電力量は約1兆kwhで、今回減免された電気使用量はこの約4.5%で思ったよりも少ない。

同一事業者の事業所を集計して、電気使用量のトップ10の事業者を出してみました。


電気を多く消費するとされる製鋼業が多いですが、新日本製鐵、神戸製鋼、住友金属工業などは認定事業所には入っていません。全体的に大企業は少ない印象です。これは自家発電が含まれないことが要因だと思いますが、公表されるのを嫌った企業が認定を求めなかったというのもあるかもしれません。

この認定事業者の中でもうひとつ気になったのは、自治体等の水道事業が多く含まれているということ。

水道事業者 電気使用量トップ10


減免認定された水道事業は44事業者、210事業所。減免された電気使用量は約27億kwh。水道事業での減免認定は国際競争力を保つという減免理由からは水道事業は外れているように思います。

また、水道事業に対する認定に限らず、減免措置は年間100万kwh以上の電気を使用する事業が対象なので規模が小さい事業所は対象にならない。それに、売り上げに対する電気使用量の原単位が一定以上(5.6kwh/千円)でなければならないので、すでに省エネ対策を行っている事業所は対象にならないということにも。

賦課金免除についてはあまり注目されていませんが、再生可能エネルギーの普及を国全体で支えるという趣旨と国内の事業保護とをどうバランスを取っていくかも制度を考える上で重要なポイント。今年度はまだ賦課金が低く、減免対象の事業所・金額も少なくなっていますが、今後、賦課金が上がるとともに問題は大きくなりそうです。


関連リンク
再生エネ賦課金の減免求めるドイツ企業3倍に (2012/8/30)
http://jrri.jp/info-201208.html
日本エネルギー経済研究所 賦課金の減免措置の運用細則が明らかに
http://eneken.ieej.or.jp/data/4358.pdf

*本文中にも書きましたが、元資料のPDFファイルを自動変換で集計しています。もし、洩れや誤変換がありましたらご一報ください。


2012/10/22 更新
いつも思うのですが、国や自治体の資料はPDFではなく、xls、CSVなどのデータ形式で公開してほしい。今回の資料も単純な表なのにデータ変換に無駄に時間がかかりました。誰でも集計・分析できるよう情報公開の方法も見直しを。
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再生可能エネルギー固定価格買い取り制度の買い取り価格(案)

再生可能エネルギー固定価格買い取り制度案がまとまり、6/1までの間、パブリックコメントを募集しています。

電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法の施行に向けた主要論点に対する意見募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620112023&Mode=0

この制度は、再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス)で発電された電気を、一定期間、固定価格で電気事業者が買い取ることを義務付けるもの。費用は電気の使用者が電気使用量の一部として負担することになっています。7月1日からスタートするのに、まだ価格も決まっていないという状態で、見切り発車の印象は拭えませんが、よりよい制度にするために、一般からの意見も重要。

さて、この買い取り期間・価格案は、下記のようになっています。

太陽光、風力、地熱、中小水力

バイオマス(下水汚泥、家畜糞尿、未利用木材、一般木材、リサイクル木材、一般廃棄物)

(クリックで大きく見られます)

それぞれ、計算の根拠となった費用(建設費、運転維持費)、IRR、買い取り価格、期間(案)があります。期間は住宅用太陽光が10年、地熱が15年の他は全て20年。費用は今までの実績を業界団体にヒアリングして決めていますが、ここで問題なのは今まで再生可能エネルギーの設備には補助金が支給されていたということ。

例えば「エネルギー導入促進事業」として地方公共団体、非営利団体には建設費用の1/2、民間企業には1/3の定率の補助金が支給されていました。(事業仕分けで廃止)

平成21年度新エネルギー等事業者支援対策事業の公募について
http://www.nepc.or.jp/topics/2009/0420_2.html
平成21年度 第一次補助決定事業者
http://www.nepc.or.jp/topics/pdf/090731_3.pdf

初期費用の定率の補助金のため建設費が高く見積もられていた可能性があり、このために風力等、無理な乱開発も行われ、計画通りに発電していない設備が多くあると考えています。建設だけが目的化し、実際の発電量は問われなかった。

この買い取り価格案が発表されて以降、再生可能エネルギーの導入計画が次々に公表されていますが、そのほとんどが買い取り価格の根拠となった建設費よりも安くなっています。

さて、この固定価格買い取り制度では、新規導入設備のみで、既存の設備は対象外とされていました。既存は上記のように初期の補助金が支給されているため、今まで通りRPS法で対応と。この価格を決める「調達価格等算定委員会」でもそのように説明されており、既存設備についての具体的な議論はありませんでした。

経済産業省・調達価格等算定委員会
http://www.meti.go.jp/committee/gizi_0000015.html

ところが、今回のパブリックコメント対象資料には既存設備の買い取り案が含まれています。

意見募集対象資料(既存設備についてはp63)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000088273
正誤表(既存設備の計算方法に修正あり)
http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000088274

計算方法はまとめると下記の通り

 新規買取価格 - 補助金金額/(調達期間x標準的な年間発電量)

補助金金額を調達期間(20年?)と標準的な年間発電量で割った額を通常の買い取り価格から差し引くというもの。これを残余期間(調達期間から今までの経過期間を引いたもの)続ける。もらった補助金が多いほど買い取り価格は低くなります。(予定通り発電している設備も、失敗例も補助金が同じであれば同じ買い取り価格)

既存設備については全く議論がされておらず、今までの補助金の額、発電量等のデータも示されていない段階での固定価格への移行は拙速だと私は考えています。まずは既存設備の建設費、補助金の額、発電量、設備利用率、故障状況等、全てのデータが開示してから。それすらない状態で、議論も判断もできない。新規の建設ではなく、すでに設備がある状態なので、7月1日からの開始にこだわる必要もないはず。

再生可能エネルギーの発電量を増やすための重要な制度。一時のバブルではなく、今後長期間に渡って制度を維持していくためにも、適切な買い取り価格、運用を望みます。


関連ページ
総務省:バイオマスの利活用に関する政策評価<評価結果及び勧告>
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/39714.html
予算総額6兆5千億円で214事業を行ったが、CO2削減など効果が出ている事業を「皆無」と判定、決算額を把握できないケースも92事業。

当ブログ内
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bf415f6e04949ff167f11ac6a5398f9f
つくば市回らない風車
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/3812224161e14fa66a9247e394f11102
伊方町風力発電騒音問題
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bc830ac206a7acd06896df7fc155d5a2


2012/5/29 更新
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