太陽光発電の現状

再エネ固定価格買取制度(FIT)の開始以降、産業用(非住宅用)太陽光発電の導入が進んでいます。原発事故後の電力不足の解消に、グリーンで環境にやさしいエネルギーなどもてはやされていましたが、現在では太陽光の大量導入による弊害の方が目立ってきました。

種類別・FIT再エネの累積導入量の推移

http://www.news.enestudy.com/2015/08/fit20154.html

FIT開始後の種類別再エネ導入量を見ると非住宅用太陽光が急速に導入拡大していることが分かります。FITは国民など電力使用者が費用を負担することで再生可能エネルギーの普及を促進しようとする制度です。予想を超えた急拡大は負担の増加を意味し、負担を抑えるために急ブレーキをかけることで市場自体を崩壊させることにもなりかねません。

さらに、太陽光発電ではFIT導入に先駆けて建築基準法や工場立地法の適用除外といった規制緩和が行われました。

国土交通省:太陽光発電設備等に係る建築基準法の取扱いについて(平成23年3月)
http://www.mlit.go.jp/common/000138954.pdf
経済産業省:工場立地法施行規則等の一部を改正し公布・施行します(平成24年6月)
http://www.meti.go.jp/press/2012/06/20120615002/20120615002-1.pdf

山林の斜面に設置した太陽光での地崩れ、農地転用による太陽光、ずさんな工事、台風で吹き飛ばされる設備、山や堤防を削っての設置、景観や反射光など問題が噴出しています。太陽光発電設備の建築物としての安全性や環境に対する影響が懸念される事態になっている一因にはこれらの規制緩和があるのではないでしょうか。

このブログでは幾度となく風力発電の問題点について取り上げてきました。

風力発電について思うこと
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/414599775f9fe0826f0c4286f3ae5fe7

風力発電では設備費への補助金支給により乱開発が行われ、各地で住民らによる反対運動が起きました。設備費に対する定率の補助金は発電量などの結果に関わらず支給され、風況の良くない場所に設置された「回らない風車」も生まれました。バードアタックや自然破壊、騒音などの問題も表面化し、結果として風力発電は環境アセスの対象となり規制強化が行われました。

現状を見ると、以前の風力発電と同じことを太陽光でも繰り返されているように思います。太陽光でもこれから制度の抜本的見直しや規制強化が行われることになるでしょう。バブルは長続きはしません。今後の太陽光発電の健全な発展のためには問題点を早急に是正し、適切な規制をかけることが必要だと感じています。


関連記事
経産省、再エネ買い取り制度の見直し着手
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS11H5V_R10C15A9PP8000/

伊勢崎市で300kWの太陽光発電設備が突風で倒壊、単管パイプ架台が崩壊
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20150617/423600/?rt=nocnt
鬼怒川の氾濫で太陽光設備が浸水、建設時の工事に問題視も
http://www.nikkeibp.co.jp/atcl/news/1509/091300999/?rt=nocnt
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http://mainichi.jp/select/news/20150910k0000m040106000c.html
土佐清水市でメガソーラーを規制する条例の可能性を探る勉強会
http://www.kochinews.co.jp/?&nwSrl=343258&nwIW=1&nwVt=knd


当ブログ内
再エネ固定価格買取制度の現状
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/2dff0d4360b53bd594f460d45c5144bc
固定価格買取制度の問題点
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/3062e408d2846f0ce80029bc9eb654bf
風力発電見直し要望へ 全国80の団体・個人 国に『健康被害』訴え
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/f7d1c2eab5abab9bb2d384a0f9ea461d/1
<風力発電>施設近くの住宅内で低周波音 初の調査で確認
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/f7d1c2eab5abab9bb2d384a0f9ea461d/1
クローズアップ現代・風車特集 エコで赤字!? ~特別会計の実態~
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/f7d1c2eab5abab9bb2d384a0f9ea461d
日本風力開発 決算の謎
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/04f65e34ca83bde201508849ebb4ae8a
つくば市回らない風車
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/3812224161e14fa66a9247e394f11102
伊方町・風力発電所騒音問題
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/c/bc830ac206a7acd06896df7fc155d5a2


2015年9月15日更新
この記事を書くにあたり以前の記事を読み返していました。9年以上もこのブログをやっていることに驚きです。
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再エネ固定価格買取制度の現状

久しぶりの更新になります。


以前、固定価格買取制度の問題点として6回シリーズで書きました。それから1年以上が過ぎ、非住宅用太陽光の大量導入、接続保留、賦課金上昇とFITの問題点や課題が明らかになり、対策も取られてきています。今回は2015年4月時点での固定価格買取制度(FIT)の現状に基づいて情報更新します。

シリーズのうち、その2の価格決定時期と着工期限については、設備と土地を認定から270日以内(2015年3月までは180日以内)に確保するという規定が設けられ、買取価格決定時期も今年度(2015年度)から認定時から電力会社との契約時に変更になりました。また、出力や設備の変更時にも変更時点の買取価格が適用されることになりました。

その1の情報公開の不足についても、情報公開用ウェブサイトとして、市町村別認定・導入状況、買取電力量・買取金額が公開されるようになりました。

固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト
http://www.fit.go.jp/statistics/public_sp.html

しかし、この情報公開は任意で行っているもので、公開期日や頻度などの規定はなく、公開日もまちまちとなっています。2014年12月末日の導入状況は「2015年3月中に公表予定」とされていましたが、「4月中の公表になる見込みです」と書き換えられています。


情報公開用ウェブサイト 2015年4月1日時点


問題は最新の認定・導入状況を公開しないままに次年度の買取価格を決めていること。多年度に渡る賦課金の予測も公開されていません。また、2013年度、2014年度と2年続けて賦課金の不足が発生していますが、制度の決算も公表されていません。FITを使った設備の導入費用、運転費用、発電状況などは調達価格等算定委員会で一部示されていますが、これも限定的なものになっています。FITは電力使用者の負担で成り立っている制度であり、情報公開は必須だと考えています。

その3 木質バイオマスの持続可能性については、2015年度から2000kW未満の小型木質バイオマスの区分が新設され、買取価格を税抜き40円と高く設定し優遇することになりました。しかし、その4の輸入バイオマス燃料については何も対策が取られていません。経済産業省の資料によると、すでに認定を受けている「一般木材・農作物残さ」のバイオマス発電では「輸入燃料であるPKSや輸入チップを利用するものがほとんど」であり、「エネルギーセキュリティの観点からは、PKSや輸入チップの調達に関する将来的な安定性に留意して導入見通しを決定する必要がある」とされています。

再生可能エネルギー各電源の導入の動向について
P26 導入見込量(一般木材・農作物残さ)
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/mitoshi/004/pdf/004_06.pdf

間伐材を用いたバイオマス発電でも、パームヤシ殻などの輸入燃料や石炭を混焼する大型計画が多くなっています。これらの輸入バイオマス燃料を使った発電を国民などの負担によるFITで支援する意義があるのか疑問です。

その5 目標値が不明については現状も変わっていません。再エネの導入目標値が決まらないままに制度の運用が続いており、これが非住宅用太陽光の導入偏重という結果を招いた一因になっていると思います。今後のエネルギーミックスについて話し合う「長期エネルギー需給見通し小委員会」も続いていますが結論が出るのはまだ先になりそうです。

資源エネルギー庁 長期エネルギー需給見通し小委員会
http://www.enecho.meti.go.jp/committee/council/basic_policy_subcommittee/#mitoshi

その6 まとめで書いたとおり、FITは劇薬だと思っています。普及を急激に促進することができる一方、副作用もまた大きい。現状では少しずつ改善されてはいるものの、まだ問題・課題が多くあります。問題点は迅速に修正し、納得して負担できる制度になることを望んでいます。


関連ページ
資源エネルギー庁 なっとく!再生可能エネルギー
http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/index.html
固定価格買取制度 情報公開用ウェブサイト
http://www.fit.go.jp/statistics/public_sp.html


当ブログ内 再エネ固定価格買取制度の問題点
その1 情報公開の不足
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/1ea26eb188f60d59b75ac9225c6a0299
その2 価格決定時期と着工期限
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/7294c5195bc6c19a2ac989ac70e1df0d
その3 木質バイオマスの持続可能性
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/4992cbd7255d659a6169a99c144e70f8
その4 輸入バイオマス燃料
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/97b89923033802e078f711222e802f6b
その5 目標値が不明
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/791bfb6fb915a9471fe5a50d8c7b8447
その6 まとめ
http://blog.goo.ne.jp/fun_energy/e/68c8d92a44b9fc45fdc8e7e3fd637467


2015/4/1 更新
今日から2015年度の開始です。ぼちぼちブログも更新再開する予定です。
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